
years/iStock
「PDCAを回しましょう」。
この言葉を聞かない日がないくらい日本では当たり前に使われている。
しかし、この言葉を使う人に、一つ問いたい。
なぜPの次がDoで、CまたはSの次がActionなのか、説明できるのか?と。
おそらくほとんどの人が答えられない。
「計画して、実行して、確認して、改善する」という4段階の暗記で止まっている。
しかしこの4つの言葉の意味を正確に理解していなければ、PDCAは目標達成のサイクルではなく、単なるお題目だ。
DoとActionは、なぜ別の言葉なのか
まずDoとActionの違いを考えてみよう。
日本語では両方「行動する」と訳されることが多い。だからこそ混乱が生まれる。しかしこの2つは、根本的に異なる意味を持っている。
Do(実行)とは、Planに沿って動くことだ。計画があるから、Doが定義できる。「何をするか」がPlanで決まっているから、それに従って実行するのがDoだ。計画のないDoは、単なる思いつきの行動であり、PDCAのDoではない。
だからこそ、PDCAではPが先にくる。Planなくして、Doは存在しない。
では、CまたはS(Check/Study)の後のActionとは何か。
Action(改善)とは、ふるまいの変化ではない。
目的に対しての行動だ。Check/Studyで学んだ新たな知見を受けて、目的達成に向けて次の一手を打つことだ。気分で動くのではない。前回の結果から学んだ上で、目的に向かって意図的に動く——それがActionだ。
だからActionはDoと違い、次のPlanを更新する役割を持つ。ActionがあってこそPlanが深まる。
映画監督はなぜ「アクション!」と叫ぶのか
映画の撮影現場で監督が「アクション!」と叫ぶのはなぜか?
それは決して「何か動いてください」という意味ではない。台本がある。監督の演出意図がある。カメラの位置が決まっている。照明が整った。全ての準備が整った上で、監督は「アクション!」と言う。つまりこの一言は「今から、目的に向かって意図的に動け」という合図だ。
これがActionの本質だ。ふるまい(behavior)ではなく、目的に向けた意図的行動(action)だ。
翻って問いたい。社長を含めた従業員は、毎日の仕事の中で本当にActionをしているだろうか。台本(計画)はあるか。監督(目的)はいるか。それとも「とりあえず動く」というbehaviorを繰り返しているだけではないか。
PDCAのActionが機能しない組織では、ほぼ例外なくこの問題が起きている。Check/Studyの後に「何かしなければ」という衝動で動く。それはActionではなく、behaviorだ。目的から切り離された行動は、どれだけ懸命であっても、組織を正しい方向へは連れていかない。
このサイクルの構造を正確に理解すると見えてくること
PDCAの構造を正確に理解すると、それぞれの言葉が持つ意味の連鎖が見えてくる。
Planがあるから、Doができる。Doがあるから、Check/Studyができる。Check/Studyがあるから、Actionができる。Actionがあるから、次のPlanが更新される。
一つでも欠ければ、サイクルは回らない。
最もよく起きる失敗は二つある。
一つは、Planなしに動き始めることだ。これはDoではなく、単なるbehaviorだ。PlanがないDoは、目的地のない走行だ。何を確認すれば良いかも分からないから、Check/Studyができない。
もう一つは、Check/StudyをActionと混同することだ。「数字を見たから、すぐに動く」——これはActionではなく、衝動だ。Check/Studyで学んだことを受けて、目的に照らして「次に何をすべきか」を考える。その意図的な次の一手がActionだ。
なぜPDCAは機能しないのか——構造的理由
ここで前回述べた現状把握から始めるサイクル、CAP-Doの論点と接続する。
PDCAの最初のPに、そもそも無理がある。
なぜなら、現状認識なしにPlanを立てることはできないからだ。
しかしPDCAを字義通りに解釈すると、最初にPlanを立てることになっている。
この矛盾の結果として何が起きるか。「とりあえず計画を書く」という作業が始まる。現状から切り離された数字の羅列が計画書と呼ばれるようになる。
これが世に出回っている99%以上の事業計画書といわれるものである。
そのような計画に沿ったDoは意味を持たず、Checkでは計画との乖離しか見えず、Actionは場当たり的な対処になる。
PDCAを「回している」つもりが、実際には一周も回っていない。
これが世間で言われる事業計画は絵に描いた餅といわれる理由である。
言葉の意味を知ることが、経営の精度を上げる
デミングが晩年にCheckをStudyに変えたのも、この問題を深く理解していたからだ。Checkという言葉は「計画通りかどうかを確認する」という意味に収束しやすい。
しかしStudyは「学ぶ」ことだ。計画通りだったかどうかではなく、この結果から何を学べるかを問うことだ。
Checkが「照合」なら、Studyは「学習」だ。
照合は計画ありきの作業だが、学習は現実から意味を引き出す作業だ。
この違いが、次のActionの質を根本から変える。
「PDCAを回せ」という言葉の前に問うべきことがある。
あなたのPは現状認識の上に立っているか。あなたのDoはPlanに沿っているか。あなたのCheck/Studyは照合か学習か。あなたのActionは衝動か、目的に向けた意図的な一手か。
この4つの問いに答えられる社長だけが、事業計画を「回す」ことができる。そして初めて、銀行が求める「蓋然性」が計画に宿る。







コメント