皇室典範改正についての「10の誤解」を斬る

新刊『誤解だらけの皇位継承の真実』では、皇位継承問題を論じるに当たっての20の誤解への反論をしているが、昨日の「愛子天皇の可能性についての「10大誤解」を斬る」に続いて、今回は、「皇室典範改正についての「10の誤解」を斬る」である。

①皇室典範の改正は十分に議論されていない

皇室典範改正案は、「立法府の総意を踏まえ、皇族数の確保に向けた」ものである。「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議」に基づいて政府が設けた「有識者会議」の報告(2002年)をもとに、議論を重ねて衆参正副議長が議論を取りまとめた。内容は次の3点である。

  1. 今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れを揺るがせてはならないことを立法府として確認する。
  2. 女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することができる。夫や子は皇族にしない。
  3. 皇族が旧宮家の男子を養子とできる。

②皇太子は空席なのか? 秋篠宮は皇太子より格下か

秋篠宮皇嗣殿下は皇太子より格下だとか、皇太子は空席だとかいう誤った風説が拡散されている。皇室典範は、皇嗣が天皇の子であるときに皇太子と呼ぶとしている。つまり、皇嗣でなくては皇太子になれないのである。

秋篠宮文仁親王 宮内庁HP

江戸時代までは、立太子礼を行って初めて次期天皇となったが、明治以降は継承順位を決めているから、立太子礼がなくても皇太子である。

天皇に男子がない場合のことを想定した法律はなかったが、生前退位法で、陛下に新たな男子の誕生はないと判断して、いまの陛下の即位と同時に秋篠宮殿下を皇嗣殿下とし、立皇嗣礼を国事行為として行った。

立皇嗣礼では、伝統にのっとり、壺切御剣という、天皇即位のときの三種の神器にあたるレガリアが陛下から親授されたし、過去にこの親授ののちに廃された皇嗣の例はない。

さきごろのノルウェー国王の葬儀で、秋篠宮殿下が英国のウィリアム皇太子より上席を与えられたことが、国際的な正しい評価である。

③秋篠宮殿下を飛ばして天皇陛下から悠仁さまへの継承はあるのか

ヨーロッパの王室で、20世紀以降、国王に男子がなく弟が皇嗣であった前例は、ベルギーのボードワン国王時代に弟のアルベールが皇嗣だったケースのみである。アルベール殿下が短期でも即位するか、その子のフィリップに直接継承するかは、両方ありうるとの両にらみだったが、ボードワン国王が早く死んで、フィリップはまだ独身だったので、皇嗣であるアルベール2世が即位した。

陛下と秋篠宮さまは5歳差だが、皇嗣殿下が即位されるなら10年程度は在位されたほうがいい気はする。上皇陛下が生前退位されたのには、そのあたりの裁量の余地を確保する意図があったかもしれない。

悠仁親王 宮内庁HPより

④旧宮家はいまの皇室の赤の他人か

側室制度があったときは、天皇に多くの皇子がおり、姓を賜って臣下となったり、出家して門跡となったりした。また、万が一に備えて、江戸時代には4つの世襲宮家を創って徳川御三家のようにした。

したがって、徳川吉宗や慶喜が将軍になったのと同じで、そのときの天皇と親等が離れても問題はない。旧宮家は南北朝時代に分かれた伏見宮系だが、江戸時代にも明治になっても皇位継承候補として扱われていた。

それに加え、一部の宮家は昭和天皇や明治天皇の子孫だから、「親戚ともいえない赤の他人」というのはいかがかと思う。

⑤旧宮家以外に皇室の男系男子子孫はいないのか

男系男子は、戦国の争乱が収まったあとだけをみても、後陽成天皇の親王が近衛家と一条家に、東山天皇の流れを汲む閑院宮家から鷹司家に養子が出ていて、皇別摂家と呼ばれる。また、明治から昭和にかけて、宮家の次男以下の多くは、侯爵か伯爵にされ、賜姓華族と呼ばれている。

彼らは男系での親等ではむしろ旧宮家より現皇室に近いが、皇族を離れて時間がたつので、旧宮家のほうを優先すべきだと考えられている。

⑥どうして宮家復活でなく養子制度をとったのか

今回の改正で、旧宮家の男子を皇族の養子にできるようになったが、なぜ旧宮家の復活ではなかったのかといえば、公務の担い手とか皇位継承候補の確保という目的にそぐわなかったからである。

戦後、皇籍を離脱したのは11宮家だが、山階、梨本、閑院、東伏見の4家は男系男子がなく断絶している。伏見、北白川、朝香の各家も若年の男子がいない。一方、未婚の若い男子は、東久邇の6人、竹田と賀陽の2人、久邇の1人といわれている。

7家の当主を皇族に復帰させても、3家は断絶する可能性が大きいし、複数の男子がいる旧宮家の男子の居場所もない。また、資質とか品行、本人の希望も考慮する必要がある。

養子は、そういう選別を可能にするための知恵だが、「養子」という名称から違和感を持たれているのも事実で、猶子など別の言い方がよかったかもしれない。

また、条件を15歳以上としたのは、本人の意向確認をするほうが好ましいし、いちおうの資質の見極めもできるからである。その結果、対象となるのは、東久邇系の4人と賀陽家の2人だけである。ただし、制度発足に当たって、養子を同時に取る必要はなく、あとで15歳に達してから追加することは可能である。

⑦悠仁さまに男子がないときの2045年問題とは

悠仁さまに男子がない場合に皇位継承をどう考えるかは、皇族の養子や悠仁・愛子・佳子さまの家族構成も踏まえ、陛下が上皇陛下退位と同じ85歳になられる2045年頃に議論を始めるのが適切である。

悠仁さまは2045年に29歳。85歳になられるのは2092年なので、最終決定は2070年頃でも遅くないと思う。男系に限定するか女系も認めるかは、その時点の国民に委ねたらよいというのが今回の皇室典範改正の趣旨で、男系派と女系派のどちらにも配慮したものである。

旧宮家の復活でなく養子制にしたのは、すべての旧宮家男子を皇族にすると多すぎるので、現皇室との関係が良好で、年齢、資質、家族の状況などを総合的に考慮して選べるようにしたものである。趣旨からいって、悠仁さまと同世代の男子が養子になり、その子孫は生まれながらの皇族として皇位継承候補になる。

⑧2600年続いた万世一系とは嘘なのか

国民にとって大事なことは、日本が2000年近く独立と統一を維持し、しかも、同一家系の帝王が君臨する国であるということは、世界の人々が羨むことであって、外交的な力になっているということである。それを、史実でない可能性があるからといって嘘呼ばわりする必要がどこにあるのか不思議である。

『日本書紀』に書かれている皇室の歴史は、長すぎる古代の帝王の寿命を補正したら、とくに不自然なところはないし、中国など海外から異説が唱えられたこともない。

応神天皇は騎馬民族の征服王朝だとか、継体天皇はそれ以前の王朝を破って天皇になったとか、推古天皇以前は部族連合に過ぎなかったとか言う人もいるが、478年に中国の皇帝に提出された倭王武の上表文は、すでに半島南部も支配できる強力な統一国家であったことを示しているし、継体天皇が武力で新王朝を建てたのなら、英雄として描かれるはずだが、まったくその形跡がない。

⑨女性天皇と男系男子論は折り合えないのか

将来、悠仁さまに男子が生まれなかったら、旧宮家から入れた養子の子孫か、女性、あるいは女系の天皇か、いまから決める意思統一など無理な話である。

佳子さまや愛子さまの皇室残留と、旧宮家の何人かを皇族にすることで、どちらの可能性も平等に残したのである。

愛子内親王 宮内庁インスタグラムより

男系男子といっても女系での近さも重視するというのは、古代から採用してきた方法である。たとえば、東久邇家は昭和天皇の子孫だから、赤の他人とか言われる筋合いはないし、旧宮家の男子と内親王が結婚することもあるかもしれない。

また、終身でなく、在位期間を江戸時代以前のように10~20年くらいとして交代し、男系男子を原則としつつ、女性天皇を挟み込むとか、複数の天皇の共同統治だってありうる。内親王の男子を皇族の養子にするといった外孫継承も民間ではよくある。

いずれにせよ、悠仁さま、皇室に残留された場合の佳子さまや愛子さま、それに養子になった旧宮家にどのように子供ができるかで選択はかなり絞られるはずなので、いまからあらゆる可能性に備えて順位をつけるのは、はっきり言って馬鹿げていると思う。

⑩悠仁さまのお妃候補に望まれること

明治・大正・昭和の各皇后は、宮家と五摂家の年頃の女子数人のなかから相対的に好ましい女性を選んだだけだった。ところが、戦後、近親結婚を避けるためにも範囲を広げて旧華族全般を対象にしたのだが、名家も経済的に苦しく、適任者がいなかった。

そこで小泉信三氏が、旧華族ではないが、知力、美貌、精神力、健康など抜群の条件を備えた美智子さまを、旧華族にも同等の人はいないという説得力に期待して選んだ。また、今上陛下は国際交流重視で女性キャリア外交官を選ばれた。

しかし、私はそれほどの美人だとか抜群の学力とかにこだわるべきではないと思う。

ヨーロッパでも、評判の高いベルギーのマティルド妃もオランダのマキシマ妃も、そんな美女でもトップクラスの学歴でもない。キャサリン妃も健康的な美女ではあるが、所作も含めてダイアナ妃のような女優的な強烈なオーラを伴う魅力ではなく、安定感が人気の秘密だと思う。

悠仁さまは、跡継ぎで悩むことのないように早く結婚していただきたいが、体力とかメンタルの安定性などを重視するべきだと思う。


誤解だらけの皇位継承の真実(増補改定版)


系図でたどる日本の皇族


誤解だらけの沖縄と領土問題(増補改定版)

【関連記事】

 

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント