「育児は男の子の方が大変」は逆が正しい

黒坂岳央です。

「男の子の育児は大変」。これは本当によく聞く話だ。

男の子は暴れて手に負えないとか物を壊し、体力が底なしといわれる。その一方で、少なくとも幼児期から小学生の育児について、「女の子の方が大変」という話はあまり聞かない。

だが本当にそうなのだろうか。

筆者は男女両方を育てているが、この意見に強い疑問を持っている。どちらかと言えば男の子の育児の方が断然楽に感じるからだ。

自分はお遊び程度に育児をしていると誤解されたくないので、最初に筆者の立場を書いておく。息子と娘がいて、1日の半分は仕事、半分は育児だ。

自分は朝昼晩の食事を作り、朝は一緒に食べて学校へ送り出す。帰宅後は勉強を見て、買い物に行き、習い事の送迎。週末は映画や公園に出かける。出産からずっと子どもと一緒に過ごす生活を続けている。

加えて、親戚の子供の面倒を見ることもよくある。自分の子だけでなく、多くの男の子と女の子を世話してきた。専業主婦に近いレベルの育児コミットメントをしている父親としての立場で持論を述べたい。

Peggy Cheung/iStock

異性の育児は難しい

世間で言われる通り、確かに男の子には男の子特有の大変さがある。男の子は活動量が多く、衝動的に動きやすいし怪我や事故も多い。うちの子も小さい頃からケガで病院にしょっちゅう連れて来たので肌感覚とも一致する。

だが、この一点だけで「男の子の育児は大変」という通説の大きさを説明できるだろうか。自分は見落とされている変数がもう一つあると考えていて、それが親と子の性別の組み合わせだ。端的にいえば「異性の育児は難しい」のではないだろうか。

育児の担い手は、昔から今もずっと圧倒的に母親だ。育児の悩みを発信するのも、ほとんどが母親。一般的な男性は、土日に面倒を見る止まりの人も多い。つまり「男の子は大変」という声の多くは、母親から見た男の子の話だということになる。

母親は同性の女の子が何を考え、どう動くかは、経験から感覚的に分かる。しかし男の子だった経験はない。なぜ家の中で乱暴に棒を振り回し、なぜ何度言っても同じことをするのか分からない。自分が経験したことがないのだから、分からなくて当然で対処の方法も分からない。

そして体力の問題もある。早い子なら小学校の高学年で、体格でも力でも母親に並んでくる。うちの長男はもはや母親では押さえられないほど力がある。

一方で父親の自分は逆の感覚がある。「難しい、分からない」と感じてきたのは圧倒的に女の子の方だ。自分の娘だけではない。娘のクラスメイトや親戚の女の子と接していても、どう扱えばいいのか分からない場面が何度もあった。急に機嫌が悪くなったり、何が気に障ったのかさっぱり分からなかった。理屈で言い換えしてくるが、こちらも共感したり理屈で対抗しても全然ダメで分からなかったりする。

つまり、親が感じる育児の大変さは、子供の性別だけで決まるのではなく、「異性の子供を理解する難しさ」が上乗せされているのではないかと考えている。育児をする親の多くが母親である以上、この現象は「男の子は大変」という形で社会に現れやすいと考えている。

男の子と女の子の動かし方

すでにデータで明らかになっていることを確認しておきたい。

発達心理学者のエレノア・マコービーは、男の子は大人数で上下関係のはっきりした集団を作りやすく、女の子は少人数で互いの合意を大切にする集団を作りやすいことを示した。また、子供の気質の性差を調べたメタ分析(Else-Quest 2006年)では、自分の行動を抑える力は、女の子の方がはっきり高いという結果が出ている。女の子の言語能力が早い時期から高いことも、よく知られている。

学術的なデータだけでなく、これは自分の感覚とも一致する。そして分からないと悩んでいた頃の自分は知識をつけて対応した。扱い方が分かれば、難しさはかなり下がる。

男の子には、ルールでの統制が驚くほどよく効く。納得していなくても、場の空気や決まりがあれば動く。「決まりだからこのとおりにして。変えたいならいって」で素直に従う。一人ひとりを説得してまわるより、仕組みで動かす方が早く、それでうまくいく場面が多かった。

一方で女の子はまったく違う。娘は言葉が達者で言語への関心が非常に強く、自分を抑える力もある。だからこそ、言われたことに対して「なぜ」を求めてくる。理由を聞き、反論し、交渉してくる。言葉が達者な分、このやり取りが長くなる。男の子のように「決まりだから」では動いてくれないことが多い。

そこでやったことは頭ごなしに言うのではなく、まず気持ちを聞く。気持ちに共感を示した上で理由を説明する。遠回りに見えても、これが一番確実で早い。本人が理由を受け入れれば、次からは自分で動いてくれる。

女の子の育児が「楽に見える」理由の一つは、この自分を抑える力にあるのだろう。だが、自分にとっては一人ひとり丁寧に共感し、説明してまわる手間の総量は合理的なルールのアプライより時間も手間もかかるという感覚があった。つまりは対応に時間がかかるということだ。

子育ては親育て

親は、子供が生まれた瞬間にいきなり親になる。昨日までは親ではなかったのだから、最初は間違いだらけだ。子育ては親育て、という言葉がある。これは本当にそのとおりで、自分も最初は全然親の実感も振る舞いも出来なかった。

息子で上手くいった方法を、そのまま娘に使ったことがある。娘が宿題を後回しにしたとき、息子にしてきたように「帰ってからすぐやると決めたよね」と伝えたが娘はへそを曲げて動かなかった。

作戦を変えて、先に「今日は何が嫌だったのか」を聞いたら、学校で友達とうまくいかないことがあったようで、その話に共感を示し、その上で話をすると娘は自分から机に向かった。

育児に理解のある親になるには、親も勉強が必要だ。なんせ何も分からないところから始まる。自分は一般的な親より時間に余裕がある。それでも迷った。

これが共働きで毎日忙しければ、異性の子供の扱い方を調べる時間などないのが普通だろう。だからこそ、傾向を知っておく価値は大きい。

育児は男女関係なく、親にとって「分からない子供」を育てることが大変なのだ。自分自身、息子と娘を同じように扱うことをやめてから、育児はかなり楽になった。育児は根性より攻略法である。


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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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