極端から極端へ振れる福岡県議会:必要なのは「根回し廃止」ではなく「線引き」だ

福岡県議会の9月定例会について、朝日新聞が「根回し廃止で一変」と報じています。

一連の問題を受けて、服部誠太郎知事が「議会との根回し廃止」を掲げました。その結果、6月議会とは打って変わって緊張感のある論戦になったそうです。

一方で、記事の見出しには県幹部の「議員も職員も疑心暗鬼に…」という声も出ています。

まず、なぜこうなったのかを確認しておきます。

福岡県では、蔵内勇夫前議長が議員辞職に至ったほか、議長と知事が二人三脚で進めてきた「ワンヘルス」施策の妥当性、高額な海外視察、県庁の互助会「部課長会」による政治資金パーティー券の組織的購入など、問題が続出しました。

議会と執行部が近すぎた。その反省から「根回しをやめる」という判断が出てきたのは、理解できます。

ちなみに6月議会の段階でこれらの問題を取り上げたのは、わずか2人。そのうちの1人は、1人会派「日本維新の会福岡」の塩生好紀議員でした。

福岡県議会議場 福岡県HPより

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実際、根回しをやめた効果は出ています。

9月議会では35人中10人以上がワンヘルスを取り上げ、独自調査に基づく追及も目立ったとのこと。6月議会で質問要旨にワンヘルスを含めたのは3人だけだったことを考えると、大きな変化です。

ショック療法としては、それなりに機能したと言えるでしょう。

ただ、ここで「事前の調整はすべて悪」という結論に行ってしまうのは、ちょっと待ってほしいと思います。

一口に「根回し」と言っても、中身はまったく別物が混ざっているからです。

・職員が議員の質問文そのものを書く
・議員が質問の意図や論点を事前に伝える
・執行部が答弁の方向性を議員に相談する

一つ目は論外です。議員がチェック機能を放棄して、行政に自分の質問を書かせているわけですから。

しかし二つ目、三つ目まで一緒くたに禁止するのは、さすがに振れ幅が大きすぎます。

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事前に質問意図を伝えないと、何が起きるか。

執行部側は「何を聞かれるかわからない」状態で本会議に臨むことになります。細かい数字や過去の経緯を問われても、その場では答えられない。

結果として「調査して後日お答えします」「検討してまいります」という答弁が増えます。

これで得をする人はいません。

議員は確認したかった事実を引き出せず、県民は中身のない答弁を聞かされるだけです。緊張感と実のある議論は、必ずしもイコールではありません。

ここで、私が経験してきた二つの議会を比べてみます。

当時の東京都議会の質問・答弁調整は、とにかくガチガチでした。質問も答弁も文書で一言一句確認するのが当たり前。本会議は、事前に決まった台本を読み合わせる場に近い状態でした。

一方、国会はそれに比べると緩くて柔軟です。質問通告で論点を伝え、役所から問取りを受けることはありますが、答弁の文言を議員側と一字一句すり合わせるようなことは基本的にありません。

再質問や追及で答弁が崩れることも普通にあります。

つまり、事前調整には「程度」があるということです。

都議会型のガチガチ調整は行き過ぎ。かといって福岡のように全廃してしまうと、今度は準備不足の答弁ばかりになりかねない。

目指すべきは、その中間です。

「何を聞くか」は共有する。「どう答えるか」の筋書きは一緒につくらない。

線引きとしては、これで十分ではないでしょうか。

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もう一つ大事なのは、問題の本質は「事前の接触」ではなく「不透明な接触」だという点です。

福岡の一連の問題も、議会と執行部が水面下で一体化し、外から何も見えなかったことが根っこにあります。

であれば、事前にやり取りした質問要旨はきちんと公開する。福岡県議会はすでに質問票をホームページで公表しているので、その延長で運用ルールを明文化するのは難しくないはずです。

見えるところでやる調整は、なれ合いではありません。

改革の熱が高まっているときほど、振り子は大きく振れがちです。

福岡県議会には、せっかく生まれた緊張感を保ちつつ、線引の環境・ルールづくりに進んでほしいと思います。


編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2026年9月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

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