プルデンシャル生命に業務停止命令へ:31億円詐取でも「免許取消し」にならないワケ

金融庁が、プルデンシャル生命保険に対し、保険業法に基づく一部業務停止命令を出す方向で最終調整していることが分かった。新規契約の販売や保険募集を数カ月程度停止させる見通しで、親会社のプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンにも業務改善命令を出すとみられる。

生命保険会社への業務停止命令は、2019年に不適切販売が問題となったかんぽ生命保険以来となる。免許取消しを除けば、金融機関に対する行政処分としては極めて重い部類に入る。

プルデンシャル生命HPより

107人が約500人から31億円を不正取得

今回の処分の背景にあるのは、長期間にわたって繰り返されていた社員らによる顧客からの不正な金銭取得だ。プルデンシャル生命の調査では、1991年から2025年までに社員や元社員107人が約500人の顧客から、投資や貸し付けなどの名目で総額約31億円を不正に受け取っていたことが判明した。

一部の社員による例外的な不祥事というには、人数も期間も金額も大きい。金融庁は、営業現場の管理や法令順守、経営陣の監督体制に重大な問題があったとみているもようだ。

なぜ免許取消しではないのか

インターネット上では「免許を取り消すべきだ」「全面的に営業を止めるべきだ」といった厳しい意見もみられる。一方、金融行政では、処分によって既存の契約者に不利益を与えないことも重要になる。

生命保険会社には多数の長期契約があり、契約者は死亡保険金や医療給付金などの支払いを将来にわたって受ける。会社の業務を全面停止したり免許を取り消したりすれば、保険金支払いや契約管理に混乱が生じ、問題に関係のない契約者まで影響を受けかねない。

このため、既存契約の管理や保険金の支払いは継続させる一方、新規の営業活動を停止し、経営管理体制の抜本的な改善を求めるというのが一般的な対応となる。今回も、契約者保護を優先しながら会社に大きな経営上の負担を課す処分になるとみられる。

フルコミッション型営業にも逆風

もっとも、新規販売の停止は生命保険会社にとって打撃が大きい。とりわけプルデンシャル生命は、営業担当者である「ライフプランナー」が高い成果報酬を得る営業モデルで知られる。新規契約を獲得できなければ、会社の収益だけでなく営業社員の報酬にも直接影響する。

今回の不祥事をきっかけに、こうしたフルコミッション型の営業体制にも厳しい目が向けられそうだ。営業担当者と顧客の強い信頼関係が武器になる一方、その関係が会社の監督を離れれば、不正な投資勧誘や金銭貸借に利用される危険もある。

問われる内部統制

近年は生命保険会社に限らず、銀行員による横領や窃盗など、顧客の資産を扱う立場にある人間による不祥事が相次いでいる。

金融機関にとって最大の商品は「信用」だ。長きにわたり多数の社員による不正を防げなかった事実は、個人の犯罪だけでは説明できない。金融庁の処分は、プルデンシャル生命の営業文化と内部統制そのものを問い直すものになりそうだ。

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