日中関係の改善に向けた首脳会談も米国に促され、高市首相は沈黙

中村 仁

高市首相が伏せていたトランプ米大統領からの重要な伝言を読売新聞が報道してしまいました。先の米中首脳会談で習近平国家主席に「日中で直接対話するよう促した」ことを高市首相に電話会談で伝えていたというのです。

高市首相の「台湾有事は日本有事」発言が中国を刺激し、日中関係は一段と悪化しています。事実認識はそうであっても、首相が国会で発言することではない。高市氏は「懸案があるからこそ対話が必要で、そのドアは開かれている」といいつつ、口先だけで行動は伴わず、ドアは閉じたまま、水面下で日中関係の悪化を食い止めるための接触もしていないらしい。

中台関係ばかりか日中関係が悪化すれば、米国に跳ね返ってくる。それをトランプ氏は警戒しているため、習氏に「日中間で首脳が直接対話しては」と促したのです。対中敵視政策を取る高市首相はばつが悪いと思ったのか、メディアに明らかにしませんでした。

日米首脳会談での高市首相とトランプ大統領
ホワイトハウスXより 2026年9月

首相が嫌う情報を誰がリーク

首相が語りたくない情報を誰が流したのか。米側がリークしたのではなく、「日本側の関係者による」と読売新聞は書いています。米側は不満に思い、「それなら米側からリークするぞ」と脅され、日本側が慌ててリークしたのかもしれません。高市首相が私からは言えないから、リークしておいてと指示した可能性もあります。

悪化する一方の日中関係の改善は、日米同盟関係の維持と並ぶ最重要の外交課題です。高市首相はそうは思っていない。対米一本足外交の危うさについても、高市氏を懸念する指摘が国内からも絶えません。トランプ氏は「中国との関係も悪化させるな。米国も困るからな」と言いたいのです。トランプ氏にまでそう言われてしまうなんて、情けない。

高市政権の財政金融政策についてもそうでした。国内から高市氏の低金利政策、円安・インフレ抑制政策、財政拡張政策、リフレ政策に懸念の声が上がっていても、聞く耳を持たない。米国の市場に飛び火するのを心配して、ベッセント財務長官が「勧告」に近いことを言った。反応が鈍いから、さらに首脳会談でトランプ氏から「日本の円安を懸念している」と指摘され、軌道修正するような政権関係者の発言が続いています。まるで属国です。

自ら判断、決断できない政権

最重要な課題ほど、政権が自ら判断しない。その悪例が円安問題、そして日中関係の改善です。高市政権は目先の振る舞い、人気取りばかりに気を遣うのが政治だと錯覚しているとしか思えない。「恥ずかしくて見ていられない」という声には耳を塞いでいるようだ。

中国の報道局長が9月30日の記者会見で小泉防衛相の核開発、原潜保有に関する発言に関連し、その中で高市首相を「高市早苗」と呼び捨て、首相という呼称を使わなかったそうです(日経3日朝刊)。異例のことです。ちょっとした言葉遣いに重要な意味を持たせるのが中国外交の一つです。

高市政権の財政金融政策の問題についても、そうでした。国内から円安懸念、インフレ懸念、財政膨張策への懸念、ポピュリズム的な政治への懸念の声が上がっているのに聞く耳を持たない。ベッセント財務長官に強く批判され、さらに日米首脳会談でトランプ氏にまで指摘されるまで、動こうとしない。重要な課題ほど、自ら判断、決断しない、できない。情けない。

年末にかけてAPEC、G20首脳会議をどう乗り切る

国内の識者からは、「11月のAPEC首脳会議(中国深圳)、12月のG20首脳会議(米国マイアミ)と、年末にかけて重要な会議、首脳会談の場が設定される。高市外交の新たな正念場になる」との指摘が聞かれます。

田中均・元外務審議官は「日中間には4つの政治外交文書がある。歴代首相がそれを踏まえてやってきた。日中関係の改善、発展が必須の課題なのに、高市氏にはトランプ氏におもねることしか頭にない」と、痛烈です。

4文書とは、日中共同声明(1972年、国交正常化。台湾に関する中国の立場を理解、尊重する)、日中平和友好条約(1978年)、日中共同宣言(1998年、平和と発展のための友好協力)、日中共同声明(2008年、戦略的互恵関係の包括的推進)です。

田中氏は「高市氏は歴史、国際政治の構造には無関心だ。こんなことでは深圳でも習氏は高市氏には会うまい」と言います。

米国在住の国際政治学者の伊藤貫氏は「米国では、共和党、民主党がそれぞれ二分され、米国は四つの政治・経済・社会構造に分断されている。日米同盟に頼っていればいいというのはもう意味がない」、「いずれ日本も中国の勢力圏に入ろう」と判断する。目先のジェスチャーには懸命な高市氏の対米、対トランプ一本足の危うさに危機感を覚えている識者は少なくない。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年10月3日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

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