
ふるさと納税への風当たりが強い。
「返礼品競争が過熱している」「ポータルサイトに多額の手数料が流れている」「本来、自治体に残るべき税金が通販事業者の利益になっている」——そんな批判が多い。昨年10月には、ふるさと納税のポータルサイトによるポイント付与も禁止された。総務省としては、返礼品やポイントによる過度な競争を抑え、「ふるさとやお世話になった自治体への感謝や応援」という制度の趣旨に沿った姿にしたいようだ。言いたいことは分からなくもない。
だが、ふるさと納税を「官製通販」と批判する声を聞くたびに、私は首を傾げたくなる。
そもそも全国1700を超える自治体の中から、納税者自身に寄附先を選ばせる制度を作れば、競争になるのは当然ではないか。そして競争する以上、自分の町を知ってもらい、選んでもらうための費用もかかる。
ポータルサイトは無駄な経費なのか
総務省の調査によれば、2025年度のふるさと納税受入額は約1兆3,300億円。その97%超がポータルサイトを経由している。もはやポータルサイトは、制度に付随する便利なサービスというより、制度を実際に動かすインフラに近い。
そのポータルサイトへの手数料支払を、「本来自治体に残るはずだった税金の流出」と見る議論がある。
しかし、少し考えてみたい。行政が民間企業に業務を委託し、その対価を支払うこと自体は珍しくない。問題は、民間にいくら払ったかだけではなく、その対価として何を得たかである。
民間の商売なら、販売チャネルへの手数料率だけを見て高い、安いとは判断しない。そのチャネルによって、自力では届かなかった顧客にどれだけ届き、新たな売上を獲得したかを見る。
ふるさと納税も同じではないか。経費を削った結果、それ以上に寄附額が減るのであれば、経費率は改善しても、自治体に残る財源は減ってしまう。
私は白糠町を知らなかった
ふるさと納税のポータルサイトでイクラや鮭などの返礼品を探していると、白糠町という名前が目に入る。そこで初めて、「これはどこにある町なのだろう」と思う。2025年度には全国2位のふるさと納税受入額を記録した白糠町でさえ、私にとっては、ふるさと納税がなければ一生知らなかったかもしれない地名だ。
白糠町は2015年から返礼品の贈呈を本格化し、現在は、ふるさと納税を通じて町の魅力を知ってもらい、まちづくりを応援してもらうことを明確に掲げている。
ここに、この制度の大きな意味があるのではないか。有名な観光地や大都市は、全国の人々によく知られている。しかし、人口減少に苦しむ多くの地方自治体は、そもそも全国の人々の選択肢に入っていない。知られていなければ、選ばれない。
ポータルサイトと返礼品は、その壁を越えた。「白糠町を応援したいから寄附する」のではなく、「イクラを探していたら白糠町を知った」という逆の入口を作ったのである。
「通販化」は制度の失敗だったのか
もとより、ふるさと納税は、地方交付税のように財政力格差を体系的に調整するための制度ではない。
この制度の画期的なところは、人口や企業集積が乏しく、自前の税源を増やしにくい自治体にも、地域産品や情報発信を武器に、全国から新たな財源を獲得する道を開いたことにあったのではないか。
全ての自治体が、ふるさと納税に同じように力を入れる必要もない。地域産品を磨き、全国に売り込み、この制度から財源を獲得したい自治体はそうすればよい。それより有効な地域振興策を持つ自治体は、そちらに力を注げばよい。
必要なのは、競争そのものを問題視するのではなく、公正な競争が行われるようにすることだろう。返礼品の過大化や産地偽装、不透明な経費には規制が要る。しかし、ポータルサイトがマーケティング施策として自社の負担で行っていると説明するポイント付与まで一律に禁止するなど、競争手段を次々と制限することが、果たして地方の自治体にとって有益なのだろうか。
「官製通販」という批判は簡単である。しかし、返礼品を検索し、比較し、選べる仕組みがあったからこそ、知名度の低い自治体にも、全国の納税者に知られ、財源を獲得する機会が生まれた。
だとすれば、「通販化」は制度の失敗だったのだろうか。
むしろ「官製通販」と批判されるその仕組みこそ、無名の自治体を全国市場に参加させたのである。
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法島 正和
玉川大学教授。専門は組織行動論・経営学。航空・ホテル・旅行業界で約25年の実務経験を経て大学教員に。観光・ホスピタリティ分野の教育研究に携わる。







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