豊かな老後生活を目に見えるようにする投資信託

金融の最も重要な機能は、時間の調整である。つまり、人の生活においては、常に手元資金の過不足が生じていて、差し迫った使途に対して資金が不足するときには、資金調達の需要があり、逆に、差し迫った使途のない資金が滞留するときには、資金運用の需要があるわけであって、金融は、顧客の資金の過不足を時間軸上で平準化するために、ローンによって資金調達の需要に応え、投資信託によって資金運用の需要に応えているのである。

金融機能は目に見えないから、それを目に見えるようにする工夫が必要である。住宅ローンを目に見えるようにするのは、住宅であるが、投資信託においては、何が目に見えているのか。投資信託において、顧客の見るべきものが運用成績であるとすれば、その目的は投資収益を得ることになる。同様の論理をローンに当てはめれば、ローンの目的は利息を払うことになり、非常識な帰結を生じる。また、投資収益の利用目的もなく、端的に投資収益を得ようとすることは、投資ではなく投機である。投資信託が常識に適う投資であるためには、投資収益を得る目的が必要である。

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さて、金融庁は個人投資を資産形成と呼ぶのだが、投資信託は資産形成に使われる重要な道具である。ローンの目的は、利息を支払うことで、より早く消費することだが、資産形成の目的は、逆に、消費時期を遅らせることで、投資収益を得て、より豊かに消費することである。より豊かな消費とは、預金によっても購買力は保存できるが、投資信託を使えば、投資収益によって購買力を強化できるという意味である。

例えば、3年後に自動車を買い替えるために用意している資金を運用するとき、ある投資信託を使うと、最悪の場合には中古の軽自動車になり、最良の場合には高級車に化けると期待され、別の投資信託を用いると、最悪の場合にも今の車と同じ格のものが買え、最良の場合には一つ上の格になると期待される。投資信託の営業においては、このように、投資信託という金融機能の効用について、目に見える説明が必要なのである。

国民は、貧しい老後生活の絵のもとで、老後の不安のなかで、最低限の購買力保存手段として、預金を選好する。これは、経済合理的な行動であって、巷の自称専門家がいうように、金融知識の欠如によるものではない。投資信託の課題は、投資教育などでは決してなく、豊かな老後生活を描き、その実現手段として、利用されることである。

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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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