ネット選挙がやっと動き出した

山田 肇

読売新聞が「ネット選挙運動、第三者も含め全面解禁…自民案」と伝えている。長い間、ぼくはネット選挙の必要性を主張してきたが、やっと動き出したことを歓迎したい。

昨年末の衆議院選挙では、期間中に北朝鮮がミサイルを打ち上げた。しかし、これに対する候補者の見解はネットに掲載できなかった。国家的な事態に対して候補者がどう考えているかわからないで、どうして投票できるのだろうか。公職選挙法は国民の権利を阻害しており、改正するのが当然である。


ネット選挙の利点は、国民の参加機会を拡大することだ。実際にはほとんど利用されていない政見放送や選挙公報以外に、候補者の主張を知る機会が生まれる。今は動員された聴衆しかいないが、あらかじめスケジュールがわかれば駅頭で演説を聞くこともできる。候補者とコミュニケーションを取ることが、政策立案に結び付く可能性もある。

候補者一人一人のネット選挙運動どころではない。選挙管理委員会が選挙公報をネット公開することすら、わが国では認められていなかった。紙面では情報が取得できない国民の、参加機会が制限されていたわけだ。総務省がその方針を撤回したのは、昨年4月のことだ。なんとぐずぐず動いているのだろうか。

薬事法で明示的に禁止されていたわけではない、という理由で最高裁判所は医薬品のネット販売を認めた。ネット選挙運動も公職選挙法で明示的に禁止されていたわけではない。単に総務省の解釈で実現が阻まれていただけだ。そんな異常な状況はできる限り早く正そうではないか。

山田 肇 -東洋大学経済学部-