BP、アブダビ陸上油田権益を24億ドルで入手

昨年4月末、国際石油開発帝石(INPEX)が5%を取得したADCO(Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations)権益の10%をBPが取得した。

1939年から75年間の契約により、アブダビの国営石油が60%、BP、シェル、トタールおよびエクソンモービルが各9.5%、赤線協定の裏の仕掛け人で「ミスター2%」と呼ばれたグルベンキャンが創設した会社パルテックスが2%保有していた。2014年に契約が終了した後、アブダビの国営石油が一時100%保有していたが、2015年1月、フランスのトタールが先陣を切って10%の権益を獲得した。続いて韓国のGSが3%、そしてINPEXが5%取得したのである。

FTが “BP takes $2.4bn stake in Abu Dhabi oilfields “ と題して報じている(Dec 17, 2016 around 20:30 Tokyo time)。なおサブタイトルは ”BP refocuses on renewal after shedding assets to cover Deepwater Horizon liabilities” となっている。

「石油枯渇の前に需要がピークを迎える」という「新オイルピーク論」が真剣に語られる今日、BPのこの動きは、コスト競争力のある埋蔵量を如何に押さえるか、という方策の一歩と言えるのではなかろうか。

以下にFT記事の要点を紹介しておこう。

・BPは、昨年のトタールに次ぎ、二番目の西側石油会社として権益を取得した。10%、期間40年間。現在の生産量は約166万BD。

・アブダビ政府は、2014年に従前の契約が終了した後、パートナーを探していたが、価格下落の中、苦しい状況だった。UAEを含むOPEC産油国が減産を合意したことにより50ドル以上にリバウンドしたので、石油業界にも自信が戻ってきたようだ。

・BPは先月、メキシコ湾のMad Dog鉱区の第二次開発90億ドルプロジェクトの投資決断をし、伊ENIよりエジプト沖のZohr大ガス田の10%権益を3.75億ドルで購入したばかりだ。

・Deepwater Horizon漏油事故の負債資金手当のため、2010年以降400億ドルの資産を売却してきたが、ここに来て将来の成長とポートフォリオの見直しに焦点を当て始めている。

・ボブ・ダドレー社長は、今回のアブダビとの契約は「我々が良く知っている重要かつ競争力のある資産へ長期的なアクセスをもたらすものだ」と発言した。

・BPは3億9,290株の新株を1株あたり4.47ポンドでアブダビ政府宛に発行する。評価額は17.6億ポンドとなるが、金曜日のBP株価4.90ポンドで計算すると19.2億ポンドとなる。

・ADCO傘下には有力な油田がたくさんあり、2054年の契約期間までに200~300億石油換算バレルが見込まれている。

・ADCOの経営最高責任者Sultan Ahmed al-Jaberは、BPとの契約は、技術、経験、財務能力等、ADCO資産を極大化するのに必要なものを確保するマイルストーンになる、と語った。

・すでに日本のINPEXに5%、韓国のGSに3%売却しており、政府は40%売却すると言っているので、残りは12%になる。

はてさて残りの12%はどこが取るのであろうか。
旧パートナーであるシェルか、またはエクソンか、あるいは両方が6%ずつか。

INPEXの権益取得には安倍首相も動いたと伝えられているが(「アブダビ巨大油田巡る資源外交の舞台裏」、『東洋経済Online』2015年5月16日)、トランプ「大統領」とテイラーソン「国務長官」は動くのだろうか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月17日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。