リベラル寄りで知られるMSNBCの政治トーク番組「レイチェル・マドウ・ショー」が14日、トランプ米大統領の確定申告書をリークしました。トランプ氏の2005年の収入は約1億5,274万ドルで、納税額は約3,844万ドルで、実効税率は約25%。本来の税率39%を大きく下回ります。クリントン元米国務長官の34.2%を下回るものの、ミット・ロムニー前米大統領候補の14%を超えていました、ロムニー氏より税率が高い一因は、控除代替ミニマム税(税控除などの適用で低く算出された納税額に対し、26~28%を税率とした試算値との差を追加で支払うシステム、高所得者層が過度な)にあり、約3,126万ドル支払っていました。代替ミニマム税の廃止を求めるはずです。
こちらの試算では、2016年において年収50万ドルの高所得者層の実効税率・平均値は27%でした。50万~100万ドルで25.8%、100万~1000万ドルで29%ですが、1,000万ドル以上になると26.1%へ低下するのがポイントですね。トランプ米大統の実効税率と、さほど変わりません。
(出所:The Motley Fool)
同番組の司会者で同性愛者としてカミングアウトした初の女性司会者であるレイチェル・マドウ氏によると、ザ・デイリー・ビーストのコラムニストでピュリッツァー賞受賞のジャーナリストであるデビッド・ケイ・ジョンストン氏が入手したもの。ジョンストン氏いわく、今回の所得税申告に使う1044フォームは「匿名で投函してきた」といい、確定申告書には「クライアント・コピー」との文字が確認できます。内国歳入庁(IRS)職員ではなく仮に職員が公表すれば違法行為にあたるため、民間人であるトランプ氏側近が情報を提供したのでしょう。
気になる所得を紐解くと賃金は約99万ドルにすぎないものの金利収入は946万ドル、ビジネス所得は約4,240万ドル、不動産賃貸・特許使用料などで約6,740万ドルを稼ぎ上げました。しかし、約1億320万ドルもの損失を計上した影響で税額控除され税率を引き下げられたとみられます。1995年にもホテル破綻などを背景に約9億1,600万ドルの巨額損失を申告、18年に及び1年当たり5,000万ドルもの税額控除を受けました。
そもそも大統領候補が確定申告を公表するようになった背景として、ニクソン元大統領の事例が挙げられます。1973年11月、当時のニクソン米大統領は米国民に向けたTV演説で「私はペテン師ではない(I am not a crook.)」と語りかけました。ウォーターゲート事件に関する言葉ではありません。当時、同大統領の所得額が過少だったとの疑惑が浮上、1973年12月には米大統領に就任した1969年に遡り、米上下院合同内国税制委員会(現在の米上下院合同税制委員会)に1972年分までの確定申告書を提出したのです。精査の結果、結果はクロ。委員会は問題を暴き47万6,431ドルの追徴課税を申し渡しました。
トランプ米大統領は今回のMSNBCの報道直前に2005年の確定申告を発表、声明で「トランプ氏は最も成功したビジネスマンであり、会社や家族、従業員が法的義務以上の税金を支払わないよう責任をもって対応してきた」と説明したといいます。その上で「確定申告を盗み、公表することは違法」と批判。トランプ米大統領が米国民に利する改革などに注力する一方、「不正直なメディア」は「視聴率獲得のために必死だ」と訴えていました。
今回は2005年のみが公表されました、続報が出てくるのか注目。ただ情報漏えいを徹底するでしょうから、リークへの障害は一段と上がってしまいました。
(カバー写真:401(K) 2012/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年3月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。