慰安婦像撤去は二の次、三の次でよい

中村 仁

韓国大統領選で最有力候補の文在寅氏で、日韓合意破棄の恐れも指摘されるが…(文氏公式Facebookより:編集部)

北朝鮮対策に重心を移せ

日本の駐韓大使と釜山総領事が3か月の一時帰国を経て、帰任することになりました。慰安婦問題をこじらせる韓国側への対抗措置のつもりでした。何をしでかすか分からない北朝鮮の動きを見ていますと、北対策が最重要、最優先の外交課題です。今朝の新聞には、早速「少女像撤去を要請へ」とあります。慰安婦像の撤去は二の次、三の次の扱いでいいのです。

誤解のないように申し上げますと、2015年12月の慰安婦問題に関する日韓合意は、両国政府が懸命な交渉の結果、たどり着いた努力の結果であり、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」との理解です。それなのに両国関係をこじらせているのは、韓国国民の反日感情、毅然とした措置をとらない韓国政府の側に責任があります。

ソウルの大使館前の慰安婦像の撤去について、「適切に解決される」という理解だったのに、そういう進展はありませんでした。それどころか釜山の総領事館前に新たな慰安婦像が設置され、それに抗議して駐韓日本大使の一時帰国という措置にでたのです。国際合意の重みをなんとも感じない国民感情、優柔不断な韓国政府には困り果てます。

対韓政策の優先順位を決めよう

ではどうしたらよいのか。残念ながら、慰安婦像、少女像の撤去は、対韓外交政策における優先順位を下げることです。撤去の要求はそのままにしておき、「慰安婦像を撤去しなければ、日本は一歩も退かないぞ」、という強硬姿勢はしばらく控えるのがいいのではないでしょうか。

日韓関係のトゲとして、慰安婦像問題がシンボル化しています。シンボルを巡って不毛の対立を続けています。そうさせたのは韓国側にあるにせよ、日本側の論調も、厳しい韓国批判が目立ち、それが韓国側に跳ね返って、国民感情がさらにこじれるということの繰り返しです。5月の大統領選挙では「共に民主党」の文在寅氏が優勢で、強硬な反日派、北朝鮮寄り(親北)とされます。日韓合意については、交渉を促していくと、訴えています。両国関係がこじれる可能性があります。

アジアに日本、韓国の二国しかなければ、日韓両国がずっとにらみ合っていても、構いません。北朝鮮の金正恩政権が暗殺や処刑、粛清を繰り返し、核ミサイルの開発・実験にまい進しています。とても正気とは思えない人物ですから、脅しだけのつもりで核ミサイルを開発していると、考えるのは甘いでしょう。いつ、どこで暴走するか分からない国です。暴発したら、最大の標的、被害者は恐らく日本でしょう。にらみ合うべきは日韓ではなく、北朝鮮に対してです。

批判ばかりでなく建設的な議論を

文氏が大統領になって、日韓合意が無効、再交渉という態度をとってきたらどうしますかね。たった2年前の国際合意を白紙にしようなんて無茶な話です。日本国内では「そんような要求に応じられない。はねつけるべきだ」という主張も高まるでしょう。日本も相手が韓国となると高飛車になり、「ひどい国で、日韓関係をまとめて行こうなんていう気持ちはない」との指摘が多く登場することでしょう。そんな分かり切った話はこれくらいにして、「どうしたら北朝鮮対策を協力して推進できるか」という議論をもっと聞きたいですね。

日米韓が北朝鮮対策を念頭においた協力の枠組みを構築し、韓国の反日感情が突出しないよう抑え込む。韓国だって経済不振、財閥の弊害除去など、経済面でやるべきことは多く、日本が協力する余地はあります。「健全な日韓関係の構築がいかに無理か」、「韓国はいかにだめな国か」という議論から卒業したいですね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。