これは「唐突」な感じがしました。何かといえば、中国が11月23日、尖閣諸島を含む東シナ海の広範囲に「防空識別圏」を設定したことです。同圏に隣接若しくは重複する日米韓は、中国の一方的な措置に対して無用の挑発だと激しく反発し、同空海域が一気にキナ臭くなってきました。尖閣諸島の空海域は現在、日本が実質的に支配しているんだが、中国の防空識別圏設定で軍事的な緊張が高まるのは必至です。
外国機の領空侵犯に対し、領空の外側で事前に備えるのが防空識別圏です。この空域へ入り込み、領空侵犯を冒す可能性のある外国機へ自国戦闘機がスクランブルをかけたりする。なので、中国も同防空識別圏へ入る航空機は事前に飛行計画を提出せよ、と言っています。不測の事態に対する安全のため、日本航空や全日空は計画の提出を始めていたんだが、日本政府は中国へ誤ったシグナルを送る可能性があるので提出をやめるよう求め、27日になって国内航空各社はそれを止めたようです。
一方、米国は26日午前、飛行計画の提出はもちろん事前の通告もなくグアムの空軍基地からB52爆撃機2機を同防空識別圏内へ飛行させた、と発表しました。これに対し、中国からは何のリアクションもなかったらしい。ただ、中国は防空識別圏の設定も飛行計画の事前提出要求も撤回していません。米軍機だったから挑発に乗らなかったのか、他の国の航空機ならスクランブルをかけるのか、まだちょっとわからない。予断を許さない状況が続いています。
表題ブログでは、今回の防空識別圏設定の背景には、直前に起きた青島(チンタオ)の爆発事故があるのでは、と書いています。爆発事故はガス管の工事で起きた、とされているんだが両者の関係は不明ながら、中国の今回の「唐突」な行動には、何か大きな理由があるんでしょうか。図でもわかるように日本の防空識別圏と今回設定された中国の防空識別圏は大きく重複します。これはかなり露骨な挑発です。この空域で両国の戦闘機がスクランブルをかけ合えば、一触即発の事態に陥りかねません。
中国がいったん設定した防空識別圏を引っ込めるのは難しいでしょう。尖閣諸島空域を含むため、日本も引くわけにはいきません。民間航空各社の飛行計画事前提出に関して日本政府の態度は二転三転して愚かさを露呈した。こんな対応をしていては相手を図に乗らせるばかりです。早い時期に同海域で日米合同演習を行ってみたり、いっそ日本の空自も米空軍にならって普段通りの訓練飛行をしてみて中国の出方をうかがう、というのも一考なのではないでしょうか。
※画像は「Chinese Military Review」による「中国と東シナ海上の日本のADIZ(防空識別圏)の重複領域(Overlapping area of Chinese and Japanese ADIZ (Air Defense Identification Zone) over East China Sea)」。
真実を探すブログ
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アゴラ編集部:石田 雅彦