今週金曜に都議選がスタートするが、小池VS自民党の二項対立という政局劇が前面に立ち気味で、「東京大改革」の中身が本質的に問われる政策論争になるのか、大いに不安の残る展開になりそうだ。維新は東京での足場が脆弱な上に、小池VS自民の二項対立劇にあって埋没気味で苦戦が予想されているが、都議会で唯一、維新所属議員である著者は、小池都政が本当に“既得権益”に切り込むのか、8年の議員生活の経験から懐疑的な見方を示す。
一般会計で6兆円、特別会計などを合わせて13兆円という東京都庁の予算規模は、フィンランド(1,300億ドル)のような中堅国並みであることは知られているが、なまじっか一極集中の恩恵があるが故に、無駄遣いの懸念は絶えない。小池都政は「ワイズスペンディング」を標榜しているものの、著者は、歴代知事が就任当初こそ改革の志に燃えていても、どこかのタイミングで「都議会や都庁職員と馴れ合ってしまった」と振り返り、先行きを懸念する。
この視点はなかなか説得力がある。現時点では都議会自民党との戦いに血道をあげている小池知事だが、その矛先を都庁職員にも向け、維新でいうところの「身を切る改革」、たとえば、職員の外郭団体への天下りにメスを入れることができるのか。都庁職員も国の官僚と類似した構図はあるが、著者も指摘するように、決定的に違うのは、官僚は次官への出世レースを外れると、定年前に子どもの教育費などの生活の心配がある段階で、退職を勧奨され民間企業などに天下っていくのに対し、都庁職員の大半は定年を全うし満額の退職金を得た上で外郭団体や民間企業に天下っていくのだ。
そして、そうした主要な天下り先である外郭団体と都庁との間で交わされる特命随意契約の中には妥当性が疑問視され、無駄遣いの要因になっているとされるものもある。
そうした“癒着”や天下りの構図を引き合いに、著者は「『東京大改革』を唱えるなら、ここに手を付けないわけにはいかない」と、小池知事を“挑発”する。本書では、公開情報を整理し、過去5年間の都庁職員の天下り先のリストを並べているのも見応えがある。
都議選で過半数を握りつつある小池都政の改革が「まやかし」なのかどうか。渡瀬裕哉氏も指摘するように、都民ファーストの会が都議選に向けて、都の職員組合も入っている連合東京と政策協定を交わしたことで、小池知事の都庁職員の既得権益に対する矛先が鈍る恐れが強まっているものの、都庁記者クラブ発の都議選報道では、ほとんど報じられない。
「自民でもない、小池でもない」第三極を狙う維新としては、まさにここが攻め所だが、来たる首都決戦を生き残り、都議会に橋頭堡を築くことができるのか、注目したい。
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