「光の道」とNTTの構造分離問題(続き) - 松本徹三

松本 徹三

「光の道」とは何でしょうか? それは、原口総務大臣が提唱する「全国民をブロードバンドで結ぶプロジェクト」です。何故この時期にそれが提唱されているかと言えば、私の見るところでは、二つの理由からでしょう。一つは、民主党に欠けているとされてきた「成長戦略」の目玉となり得るからであり、もう一つは、民主党の看板である「地域格差の是正」や「コンクリートから人へ」といった政策の具体案となり得るからだと思います。

私は必ずしも民主党を全面的に支持している人間ではありませんが、政権党には、国民のエネルギーを結集するに足るような「確固たる国家政策」を持って欲しいし、特に国民が閉塞感に苛まれている現時点では、そういうものが必要だと思っています。


一方では、前回のブログでも申し上げた通り、私は、「自分に残された僅かな時間を、日本に『理想的な情報通信システムのグランドデザイン』を導入する事に役立たせたい」と強く念願している人間です。

そういう人間にとっては、自分がこれまで考えてきたのに近いことを、政権党が「国家政策」の一つとして取り上げようとしてくれている現在の状況は、思ってもみなかったような有り難いことです。ですから、原口大臣の「光の道」構想を私が熱烈に支持し、その実現の為に微力を尽くしたいと考えるのは、当然過ぎるほど当然の事なのです。

私のFTTH(各家庭まで光回線を引き込むこと)に対する確信は、「デジタル衛星放送の立ち上げ」に奔走していた1990年代半ばの伊藤忠時代に既に始まっており、「携帯通信網の高度化」に賭けていた2000年代初頭のクアルコム時代にも、変わることはありませんでした。そういうわけですから、今から1年以上も前の2009年2月16日、及び2月23日のアゴラにも、「国策としての光通信網の全国展開」を訴えるコラムを投稿しています。

しかし、今日久しぶりに自分の書いた古いコラムを読んでみると、基本的な考えこそ変わっていませんが、今から見ると随分遠慮した論調であるように思えます。(「放送と通信の融合」を必須条件のように書いているところは、今回の小池さんの論調と若干似ています。)その理由は二つあって、一つは、この様な自分の主張とソフトバンクの利益との整合性に、その頃は未だあまり自信がなかった故であり、もう一つは、YouTubeやUStreamのようなインターネットの新しいアプリケーションの持つ起爆力に対する認識も、その頃は未だ乏しかった故でしょう。

前置きはこのぐらいにして、本題に入ります。

今や、ソフトバンクの孫社長が、「光の道」構想の最も重要な賛同者になっており、その実現の為の詳細にわたる「具体案」を提唱していることは、周知の事実です。

3年半前にふらりとソフトバンクにやってきた私などとは異なり、創業者の孫社長は「ソフトバンクそのもの」と言ってもよい存在ですから、いくら「国の将来に対する思い入れ故の行動だ」と言っても、ソフトバンクの社益と合致しないような事を、彼がする訳はありません。ですから、多くの人達が、「その行動の裏にはどのような策謀が潜んでいるのか」と、想像を逞しくするのも無理からぬことです。

しかし、その背景は、実は、あれこれ想像を巡らせることもない程に、単純明快です。私とて直接本人に確かめた訳ではありませんが、孫社長が考えている「社益との一致点」は、概ね下記のようなものでしょう。

1)通信インフラがしっかりしていれば、その上に多くの情報サービスが百花放斉する。そうなると「デジタル情報革命によって人々のライフスタイルを変える」ことを社是としているソフトバンクの活躍の場は、確実に広がる。

2)NTTが圧倒的な支配力を持っている現状では、「公正競争環境の実現」は百年河清を待つに等しく、新規参入者のソフトバンクとしても、現実にこれまで多くの失望を重ねてきた。しかし、国家政策が絡めば、この点でも大きな進展が期待出来る。

多くの人達は、それでもこのような単純明快な背景を素直に理解しようとせず、色々と悪口を言います。その典型的な例が、「ソフトバンクは、自分では汗をかいて通信ネットワークを建設しようとせず、国にこれをやらせて、自分はタダ乗りしようとしている」という類のものです。しかし、これ程見当違いな批判はありません。

ある辺境の村では、自分の家は自分で建てる慣わしになっていたとしましょうか。そこに、或る人が、町の大工さんに自分の家を建ててもらったとします。村人は、「あいつはとんでもない奴だ。自分の家を人に建てさせて、平気な顔をして住んでいる」と悪口を言います。本当は、家はプロの大工さんに建ててもらって、自分は畑仕事に精を出すほうが合理的なのですが、慣習に縛られた人達にはそれが分からないのです。

こういう事を言う人達は、「トヨタ自動車はメーカーの風上にも置けない。本来なら自分で汗をかいて、一つ一つ心を込めて作るべき部品を、部品メーカーに作らせて買い叩いている」というようなことも言いかねない人達です。全てを「経済合理性」から考えるのではなく、根拠のない「べき論」から考える、頭の固い人達なのです。

こういうことを言う人達を、私は海外ではあまり見たことがありません。インド最強の携帯通信会社Bhati Airtel は、ネットワークインフラは全てエリクソンに作らせて、その保守運営まで任せ、自分達は顧客向けのサービスの提供とマーケティングに専念しています。そして、そこで生まれた余力で国外に進出し、最近はアフリカ最大のZainを買収しました。

欧州では、既に大手携帯通信事業者の間で、「次世代のLTEは各社がばらばらにシステム構築をすることはやめ、相乗りでつくったネットワークを共用しよう」という合意が出来ています。この背景には、「経済合理性」の追求だけでなく、「環境への配慮」もあるのです。

そもそも、ソフトバンクは、「税金を投入して国がネットワークを作り、それを我々にタダで使わせろ」等という荒唐無稽なことは、ただの一度も言っていません。ソフトバンクが言っているのは、

1)かくかくしかじかのやり方をすれば、最新鋭の光伝送路が全ての国民に格安に提供できる。
2)この伝送路を構築し、保守する会社は、ユーザーに直接それを提供してもよいし、各通信会社(ソフトバンクはその中の一社にすぎない)に公正無差別に貸与してもよい。(勿論有償であり、タダではない!)
3)各通信会社は、それを使った通信サービスをまとめてユーザーに提供してもよいし、伝送路を提供する会社の「回線貸与契約」とパッケージにして、「付加価値」だけをユーザーに提供してもよい。

ということなのです。それなのに、どうして「タダ乗り」なのでしょうか?

しかし、何はともあれ、このような背景の中から、孫社長の「国の為に何か大きな仕事をしたい」いう強い意欲が生まれ、それが次第に大きくなってきたのだと、私は考えています。孫社長のやり方をあまり好きでない人達も多いことは、私もよく承知していますが、少なくとも彼の「日本に対する思い入れ」と「世の中を変えるような大事業に対する意欲」を認めない人はいないでしょう。「光の道」構想は、その両方に火をつけました。

孫社長のやり方は、常に出来るだけ大きな構想を描き、出来るだけ高い目標を設定することです。そして、関係者に極限まで考えさせることです。そうしなければ、人間の智恵は小さく固まってしまい、みんなが安易な妥協に走ってしまうからです。従って、この件についても、孫社長は、始めから、「税金は一銭も使わない」「より高度なサービスが求められない限りは、利用者の負担は一銭も増やさない」ということを「絶対条件」としました。

この様なやり方に慣れていない人達にとっては、こういう目標の設定自身が、始めから非現実的な事のように見え、ついつい「そんなことが出来る筈がない」とか、「根拠のない大ボラだ」と言いたくなってしまうのでしょう。しかし、現実には、何事によらず、確固とした目標を持ち、徹底的に智恵を絞れば、思いもかけぬ突破口が見えてくるものです。

本件についての「突破口」は、「光回線とメタル回線の二重構造の解消」であり、その一点に絞られます。この事こそが、まさに「不可能を可能にするウルトラC」なのです。しかし、普通の人達にとっては、そういった考え自体も、「固定観念」によって瞬時に否定されてしまうのが常です。

「二つのシステムを並行して運用・保守することが如何に高くつくか」ということについては、実際に通信システムの運用・保守を行ったことのある人なら、誰でも骨身に浸みて分かっている筈です。しかし、「それなら一方をやめてしまえばいいじゃあないか」と言われると、「全ての利用者が納得するわけはないから、そんなことは出来ない」と反論するばかりで、「どうすれば全ての利用者を納得させられるか」と必死で考えるところまで、自分を追い詰めることはないのです。

考えてみれば、「全ての利用者を納得させること」は意外に簡単です。利用者にメリットだけを与え、デメリットを一切なくせばよいからです。

例えば、今、各家庭に行き渡っている水道管を、新しい素材のものに変えようとしたとしましょう。「このままでは、これから水漏れが頻発するかもしれませんよ」と脅かしてみても、もし「素材の取替えには1000円必要だ」と言えば、「今のままでいいから変えないで欲しい」と言う人が数多く出てくるでしょう。しかし、「費用は一切かかりません」と言えば、誰も嫌がりはしないでしょう。

「メタル回線を一挙に光に張り替えて、二重保守構造を解消すれば、全体で大幅なコストダウンが可能となり、新しい光回線の建設費も軽く賄える筈」という発想は、現場からの発想ですが、慧眼な池田先生も、最近のブログで、既に同じようなことを指摘しておられます。(尤も、池田先生の議論は「無駄なコストがかかっている」というところで止まっており、「それをどう変えればどういう事が出来るか」というところまでは論じておられませんが…。)

池田先生が言っておられるのは、「NTTは、雇用を守るために、既に償却済みのメタル回線に不必要な保守コストを上積みして、高い回線料金を課し、光回線がこれに比べて格安に見えるようにしている」ということなのですが、ADSLサービスを運用する為に毎年高額のメタル回線利用料金をNTTに払っている我々も、ずっと同じような感触を持ってきました。

「メタル回線の利用者が減っているので、一回線あたり値段はの高くなります」という事で、今年度は昨年度より高い請求書が出されてきていますが、銀座のクラブの勘定書きと一緒で、詳細は明示されておらず、お願いしてもなかなか開示してくれません。(特に最大のコストファクターになっている保守費というものの実態は、今なおよく分かりません。)

そもそも、世の中の殆どのものは、年を経るに従って値段がどんどん下がっていくのが当然なのに、ここだけは全くの別世界のようなのです。「雇用を守らなければならない」というNTTの苦労は分かりますが、だからと言って、安易にその「つけ」を回わされるのでは、利用者はたまったものではありません。NTTにも、是非とも極限まで知恵を絞って欲しいのです。

しかし、一般の利用者とは異なり、NTTの回線に接続する我々通信事業者には、「NTT回線の運営・保守コスト」の総額だけは知らされますから、「それでは、これを全部やめてしまったら?」という発想が出てきたわけです。これが、今回の「光アクセス回線会社」の事業計画(試案)の策定に結びつきました。

かく言う私も、実際にソフトバンクの事業部門による分析作業に参画するまでは、こんな「ウルトラC」の可能性があるとは思ってもいませんでした。私とて、これまで48年間も実業の世界に身をおいて、「当初の思惑通りに進まなかった事業」で何度も辛酸を舐めてきたわけですから、最初は疑うことから始めました。この事業計画には、どこかに大きな「見落とし」がある筈だと思ったのです。しかし、現時点では、大きな「見落とし」は未だ見つかってはいません。

考えてみると、我々がやっているのは、実に奇妙な仕事です。他の会社の懐に手を突っ込んで、「こうしてみたら」「ああしてみたら」と、色々思いあぐねているのですから、とても変なことをしているわけです。

そもそも、本件については、所轄の大臣が、「どうしたら全国に『光の道』を行きわたらせることが出来るか」と、総務省や業界、それに各界の有識者に問いかけているのです。本来なら、現状を一番よく理解しているNTT自身が、真っ先に色々と考えて、アイデアを出すのが当然でしょう。しかし、そういうことは起りそうにありませんでした。ですから、多少とも通信事業の運営に経験のあるソフトバンクが、苦労して「たたき台」を作ったのです。

しかし、ここまで来たからには、今後はNTTにも積極的に関与して貰って、この「たたき台」に「見落とし」や「誤り」がないかを検証して頂きたいものです。もはや抽象論を闘わしている時間の余裕はありません。これからは、具体論の段階であり、幾通りもの案を一つ一つ検証していくべきです。

ソフトバンクがつくって、孫社長がタスクフォースの会合で発表した「アクセス回線会社」の事業計画の詳細は、総務省のホームページ上で既に公表されています(5月14日の第11回会合にソフトバンクから提出した資料が一番分かりやすいと思います)ので、私はここで数字面の説明を繰り返すことは差し控えますが、一言で言うなら、「メタル回線」を全部「光回線」に敷き替えた段階で、毎年6000億円程度のコスト削減が出来るという計算が基本になっています。

これには、「メタル回線の保守費の削減」だけでなく、「光回線の保守費の増加」、「営業費の削減」なども、まとめて含まれていますが、ポイントは、「メタル回線を一切残さないこと」と「営業費を一切かけないこと」です。つまり、新生の「アクセス回線会社」は、完全にガラス張りの経営で、光回線のみを保有し、営業活動によってではなく、あらかじめ決められたルールに基づいて、一定の価格でこれを貸与するだけの会社です。

通常なら、我々のように現在ADSL回線サービスを行っている会社は、「メタル回線の撤去」にはムシロ旗を立ててでも「絶対反対」を貫きます。メタル回線が撤去されたその日からADSLサービスが出来なくなるからです。本来なら、古いものをやめることに反対するのは、進歩を拒否することを意味するので、やりたくはないのですが、会社を守り、顧客を守るためにはやむを得ません。

しかし、メタルに代わる光回線を使って、顧客に一切の迷惑をかけることなく、我々のような事業者がこれまで通り仕事が出来るなら、反対する理由は全くありません。むしろ大歓迎であり、その上で快適に動くソフトバンク版のNGNの構築に全力を挙げるでしょう。

我々の懸念はただ一つ。現在の体制では、我々に伝送路を提供するNTTの回線卸売り部門と、我々の競争相手であるNTTの回線小売部門が、同じ会社に属していることです。これでは、公正な競争が保証されることは全く期待できないからです。

NTTが、前述したような新しいアクセス回線事業を、「現在の組織を構造分離せずとも、問題なく(誰にも不安を与えることなく)運営していける」と言うのなら話は別ですが、このような事業形態は「普通の営利会社」の有り姿とはあまりに異なるので、やはりきちんと構造分離をして、全く別の会社として運営する方が自然でしょう。

現実には、組織は分離されても、新しい「アクセス回線会社」の株主は、少なくとも発足当初は、今の株主そのままであり、経営者や従業員も、基本的には現在この分野の仕事をしている人がそのまま残るのが当然です。ですから、NTTが「これまで営々としてやってきた仕事をとられる」と言っているのは、単なる勘違いに基づくものだと言ってよいでしょう。

最後に、これも既に公表されていることですが、この「アクセス回線会社」が新規に建設する光回線の建設費についても、念の為、おさらいをしておきたいと思います。

(A)局舎社内設備 1,698億円
(B)局舎と「き線点」を結ぶ地中埋設区間(未整備分10%)1,629億円
(C)「き線点」から各戸までの架空配線区間(未整備分 推定20%)5,289億円
(D)各戸への引込み線 (未整備分 推定68%)4,198億円
(E)宅内光回線・機器 (未整備分 推定68%)6,717億円
(F)離島・その他 5,514億円

以上の合計、約2兆5,000億円というのが、我々の想定する建設費です。これについても、誰よりもよく分かっているのはNTT自身なのですから、是非とも検証して頂きたいところです。

(なお、月曜日に掲載された私のコラムに対して、「伝送路部分とは具体的に何をさすのか?」という質問をTwitterで頂いておりますので、上記をもって回答に代えさせていただきたいと思います。)

以上でご理解頂けたと思いますが、本件の成否は、「大規模に」「一気に」「例外なく」メタルから光への転換を行うことにかかっています。これは普通の常識とは反することなので、一般の方には何となく飲み込みにくいかもしれませんが、「例外を作れば、却って高いものにつく」というのが、現実の世界での経験則です。

「日本中に洩れなく『光の道』を開通させる」などと言えば、とんでもない大事業のように思われるかもしれませんが、先人達は、既に、全国にくまなく「電力線」と「電話線(メタル回線)」を敷設しているのです。この「敷設済みのメタル回線」を「光回線」に敷き替えることは、「既に全国に行きわたっている未舗装の道路を舗装する」ようなもので、それ程びっくりするようなことではありません。

世の中には、未だに、「何で舗装しなければならないの? そんなに車が走るわけでもないのに、舗装なんて贅沢だよ」と言っている人が多いのですが、やがて車の数が驚くほど多くなるのは間違いなく、「いつかはやらなければならない舗装工事」を先送りにするのは、殆ど意味のない事だと言わざるを得ません。

民主党政権は、米国同様、「チェンジ」をキーワードとして発足しました。従って、これから遂行される国策の多くは、基本的に「これまでの流れを大きく変える」ものでなければなりません。「これまでの流れを変える」には、常に強い意志が必要ですが、今回はせっかく原口大臣が強い「変革」への意志を示してくれたのですから、業界が旧態依然たるやり方でこれを押さえ込むようなことだけは、あってはならないと思っています。

コメント

  1. hiroshi166 より:

    1)2)
    →ここで不利益を被る業者(自前の設備を持った業者)がいるということが大きな見落としではないでしょうか?多くの業者は、サービス部分で設けたお金を、アクセス部分に再投資していると考えられます(現在のNTT、電力系)。アクセス部分の設備投資競争が起こらないのは問題ないのでしょうか?

    あと、トヨタやエリクソンの議論は同じものとして扱っていいのでしょうか?トヨタ系列の部品会社がトヨタやホンダ、日産など別の会社にも完全に平等に部品を作っているとは考え難いです。部品会社が一社しかなく、完成車メーカのみになるのは技術競争の観点からも望ましくないでしょう。通信の土壌で考えた場合も同様ではないのでしょうか?部品会社でも競争は起こるべきだと思います。
    そしてトヨタの儲けから作られた部品会社(NTT光アクセス回線)があった場合、トヨタ(NTT)が優遇されるのは当然だと思います。
    現在の通信業界は、メタル時代(完成車のみで競争)とは異なり、部品会社に関しても地域ごとには競争が起きています。ほぼ独占に近いような部品会社があらわれる事で競争の阻害が考えれます。

  2. otg010085089 より:

    松本氏は「突破口」は「光回線とメタル回線の二重構造の解消」といわれるが、あまり意味がないのではないか。
    問題点は、現在NTTは旧式電話交換機を抱えていることで、それをIP化してルータに置き換えることで、デジタル回線の一元化をはかることで大幅なコスト低減をはかる事ができる。光回線とメタル回線の二重構造はさして問題にならない。もちろん、光回線のほうが多重通信には適しているが、メタル回線でもDSLで十分に対処できる。メタル回線の光化は経済的な見知からゆっくりやればよく、政治による無理な光化はコスト点からも社会基盤の点からも全く意味がない。

  3. 松本徹三 より:

    hiroshi166さんへ

    電力系やCATVの利益をどう守るかについては別途議論が必要です。(これについては、別途論じますが、この両方を傘下におさめているKDDIからの提言も期待しています。

    「全てが統合されているから伝送路への投資が出来るのだ」という議論は根拠がありません。NTT内部でもきっちりした会計分離をしていれば明確になるのですが、伝送路部門は、長期的に採算が取れるように、正当な価格でその機能を通信サービス部門(あらゆる外部の通信会社を含む)に売ればよいのです。

    最後にトヨタの話は「たとえ話」で、XX自動車とか、XX機械とかいったの方がよかったのかもしれません。要するに、「何でも自社で開発し、自社で作れ」と言いたいかごときの人達がいるので、その人達に対する反論として、「そんなことを言うのは、メーカーに全ての部品を自分で作れというのと同じですよ」と申し上げたのです。通信の話とは何の関係もありません。

  4. 松本徹三 より:

    otgさんへ、

    効果があるかどうかは、数字で語らなければ意味がないのではないですか? 「経済的な見地」と言われる限りは、その根拠を数字で示さなければ議論になりません。

    電話を古い交換網からのIP網に替えるというのは、将来的には当然の方向ですが、これは交換機の償却が終わった段階でやるということでいいでしょう。要するに内部合理化の話に過ぎません。ユーザーにとっては、交換網だろうと、VoIPだろうと、電話は電話であり、同じことです。

    問題は電話ではなく、これから桁違いの発展を遂げるだろうブロードバンドのデータサービスなのです。失礼ながら、otgさんは未だに電話のことだけが気になる方で、将来の爆発的なデータ通信革命についての想像力が欠如しているのでは? 

    ADSLや無線ブロードバンドでは全く歯の立たないような、高速、大容量のデータ通信のニーズがひたひたと押し寄せていることを、是非認識していただきたいと思います。このニーズが万人の目に見えてくるのには、5年もかからないと思いますよ。

  5. ssmile0521 より:

    原口総務大臣は、『「光の道」といっても、すべての家庭に光回線をつなぐ必要はありません。無線通信技術やケーブル回線なども使い、毎秒100Mビットクラスの高速接続が実現できればいいわけです。』とおっしゃられています。(2010年5月27日、日経新聞朝刊)

    いつから、光の道=FTTHとなったのでしょうか?
    将来を見据えた時に、超高速ブロードバンドインフラの必要性は誰も
    否定するところではないと思いますが、地域のニーズに合わせてインフラ(光かケーブルか、はたまた無線か、他にも?)を自由に選択して整備する方向性もあって良いように思います。

    ちなみに、私が居住するマンション(都心郊外、新築して5年目)は、CATVが各部屋まで来ており、その回線を使って、インターネットも映像配信(VOD)も利用していますが、ハイビジョン映像を十分楽しめています。無料で光に張り替えて頂くのは構わないのですが、なにか無駄なことをしてしまうような気がしてなりません。

  6. otg010085089 より:

    松本氏は「ADSLや無線ブロードバンドでは全く歯の立たないような、高速、大容量のデータ通信のニーズがひたひたと押し寄せている」と述べているが、実はその様なデータ通信のニーズが現在ハッキリしていないのではないか。その様な「データ通信のニーズ」を開発するほうが光の道構想議論より先なのではないか。
    またその「高速、大容量」がどのくらいかハッキリさせる必要がある。 現在のガラスを用いたステップインのコアークラッドの光回路では伝送速度はせいぜい100MBであり、無線やDSLでも技術的近い伝送速度が可能である。将来のブロードバンド回線を考えるにやみくもに100MB光回路を敷設するのは意味がなかろう。

  7. imadoki64 より:

    otgさん

    現在、ネットを利用しているユーザーは
    どのくらいいて、まだ利用していないユーザーはどの位居るか正確に御存じでしょうか?PCとモパイルの比率がどう変化して、モバイルでも通話のみ、通話とメールのみ、モバイルサイト閲覧、PCサイト閲覧、動画サイト閲覧ユーストリーム参加、
    これらの比率はどう変化していますか?

    手元に資料が無いので私は答えられませんが、大体の勘で答えると、ドンドンとユーザー数は増えており、使われ方はリッチになってきている。これは間違いの無いことでは無いでしょうか?

    私は、iPhoneを使い始めて仮にパケット従量制ならはいくら掛っただろうと言う計算、パケット定額値引き前の金額で300万円を越えた事があります。月に千円もパケットを消費しないユーザーと比較すれば既に3000倍の使用量です。

    現在の総トラフィックはバリバリ使う人も殆ど使わない人も含めての数値です。

    その総トラフィックは年々倍増しているのですよ。
    今後もそのトレンドは続きます。これ迄動画サイト閲覧なんて
    やってなかった人が、いきなりやり始めたら、それだけで物凄いトラフィックを消費します。

    わかりますよね?

  8. bobby2009 より:

    >otg010085089さん 実はその様なデータ通信のニーズが現在ハッキリしていないのではないか。

    >imadoki64さん やってなかった人が、いきなりやり始めたら、それだけで物凄いトラフィックを消費します。

    どちらも正しいと思います。iPhoneやアンドロイドやWM6の端末が増えれば、現在のHSDPA回線が遠からずパンクする可能性がありますが、通信帯域がWiMAXかそれ以上になれば、3MbpsのADSL回線で出来ている程度の事は十分可能になります。

    たとえば国内にあるネット上のサーバーとユーザー端末間で、実効で3Mbpsの速度があれば、いま「普及している」ネット上のサービスで、遅くて使えないものがあるでしょうか?ネット上のアプリは、ユーザー端末から最寄の局までの速度よりも、そこからサーバーまでがボトルネックになっている事が多いのではないかと考えます。

    高解像度の映像を自宅の40インチテレビでみれる速度が必要かといえば、マス市場で、そういうニーズがどれだけあるのが疑問です。eo光のようなサービスが都市部でどれだけ普及しているでしょうか?

    本当のキラーアプリが出現するまで、「光の道」が全国で活用される可能性は低いでしょう。

  9. henachoco_e より:

    松本さん
    >従って、この件についても、孫社長は、始めから、「税金は一銭も使わない」「より高度なサービスが求められない限りは、利用者の負担は一銭も増やさない」ということを「絶対条件」としました。

    とりあえず、”政府保証無しで資金調達できる”ということを証明してみては如何でしょうか?
    個別の金融機関でもシンジケートでも募って。
    そうすれば、孫さんや松本さんがおっしゃる、”タダでできる”という言葉にグッと信憑性が増すと思います。

  10. henachoco_e より:

    imadoki64さん

    >その総トラフィックは年々倍増しているのですよ。

    トラフィックが増えているのは事実ですが、じゃあFTTHが利用可能になったからといって、ユーザが固定、もしくは固定+WiFiにシフトするかどうかは不明です。例えそれが安価になったとしても。ソフトバンクの資料のように総務省のアンケートを根拠にするわけにはいきませんよね。
    ユニバーサルサービスとして必要なら、税金で基幹系まで引いて、必要な人に直接に通信費用を補助しても良いと思います。不公正な競争を行うぐらいなら。
    しかし個人的には、その場合でも通信費を固定(+WiFi)に使う人よりは携帯(移動体)に使う人の方が多いと思いますが。

  11. Qui より:

    imadoki64さん

     残念ながら、あなた一人の勘で答えても、それは客観的なデータではないので説得力はありませんね。

     私が見た総務省インターネット利用に関するデータ(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin01.html)から見たところ、利用動向に関して言えば、PCからのネット接続及びモバイル端末の接続ユーザーは2005年(平成17年)から頭打ちになっています。
     トラフィックに関して言いますと、トラフィック総数は増えているものの、一日当たりのピーク数及び平均トラフィックも2008年を境に横ばいになっており、国内主要ISPのデータ通信量も同じようになっています。
     そういった数値データからすると、私は松本氏がいうような『高速、大容量のデータ通信のニーズがひたひたと押し寄せている』とは全く思いません。

     YouTubeやニコニコ動画のようなニーズが生まれたとしても、ともにモバイル版で閲覧可能にもなっているので別段FTTHが必要であるとは思いません。

     そういった数値データも踏まえ、私はNTTの構造分離について懐疑的な立場です。

     理由として

    1)ニーズがない
     →数値データがない以上、論拠になりません。
     →電子カルテなどもADSLでやCATVでできない理由がわかりません。

    2)競争原理が働かない
     →国策のアクセス会社なんてものを作ったら、
      eoやCATVなど、自前で設備投資してきた会社はどうなるでしょう。
      また、競争原理が働かないところにサービスの向上はありません。
      au、ソフトバンクが携帯電話事業で価格競争をしていますが、
      一社になればその原理は働きません。

    3)FTTHでなければならない理由がない
     →無線が全く選択肢にならない理由がわかりません

     以上の点を踏まえて、田舎も都会も離島も踏まえたよりよきアイデアを期待する所存です。

  12. imadoki64 より:

    10.henachocoさん

    >トラフィックが増えているのは事実ですが、じゃあFTTHが利用可能になったからといって、ユーザが固定、もしくは固定+WiFiにシフトするかどうかは不明です。

    別のお題に、上記の件でコメントを書きましたが、ソフトバンクはケータイ端末がどんなシチュエーションで使われているかと言うデータを持ってます。そのデータによると、殆どが屋根の下(つまり屋内)で使われている事がわかったのです。

    ケータイユーザーにWi-Fiにシフトするなんて意識を持たせずに、自然にWi-Fiに(或いはフェムトセルに)バイパスしてたなんて形が理想なんだと思いますね。

    それからボトルネックの話ですが、伝送経路によって変わって来ますが、いずれにしてもサーバーそのものの負荷は常に増大方向に膨らみます。ただ、サーバー負荷分散の技術は進んでおります。サーバーそのものの性能向上も進んでいます。CDN利用とか、マルチキャスト伝送とか、配信側の工夫でボトルネックの解消に努めるでしょう。

    しかし、マクロセルの一局集中は、逃れられないボトルネックとなってしまいますから、マイクロセル、フェムトセル、Wi-Fiと、いろんな伝送経路に分散すれば、速度低下を極力避ける事が出来るのではないでしょうか?

  13. bobby2009 より:

    現在は局から家庭(あるいは端末)までの帯域の話が中心かと思います。ところで、家庭内(あるいは屋外の移動端末)で100Mbpsの帯域を使い切るようなリッチコンテンツサービスが全国で70-80%くらい普及したと仮定して、キャリアの基幹ネットワークはそれを支えられるほど強化できるのでしょうか。また、それは3年とか5年の範囲で実現可能なものなのでしょうか?

  14. imadoki64 より:

    11.Quiさん

    私はユーザーとしての実感を加味してます。
    個人的な勘が説得力無いのは仕方がありません。

    同じヘビーユーザーならこの勘に、なんとなくわかる感覚を
    持っていただけるものと思います。

    時間帯によらず安定して速度が出るなら、もっともっと
    激しく使うであろう自分が居ます。

    しかし、現時点でまだ速度に不満を持っており、リンクが途切れたり、
    動画が途中で止まったりを繰り返すと、空いている時に出直すかと思い、一旦諦めます。

    私一人だけでしょうか?ヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザー等の比率が一定ならば、既にヘビーユーザーはトラフィックの上限を感じています。アクセス制限がかかっているのかも。

    この現状を見て、総トラフィックが横ばいだからニーズが無いとは言い切れないのでは?

    ユーザーでは無い人が陥りやすい数字の罠の様な気がしますね。

    速度が上がれば、ネットワークに余裕が生まれれば、もっともっと総トラフィックは膨らむと、これは勘ですが、そう思うのです。

  15. bobby2009 より:

    >時間帯によらず安定して速度が出るなら

    この印象は、下記のどれが問題かを明示していません。
    1)最寄の局から家(=端末)までの速度
    2)最寄の局からサーバーのLANカードまでの速度
    3)サーバーのパフォーマンス

    端末とサーバー間で3Mbpsの実効速度が出れば、パソコン用画像アプリで遅いと感じる事はないと思います。私は日本の家にSlingboxを設置して、香港の自宅のテレビで「龍馬が行く」を見ていますが、安定して1Mbps出ている日は、そこそこきれいな画像で番組を楽しんでいます。

    私の(このコメントの一つ前の)コメントで指摘しましたが、1)の速度を100Mbpsにしても、そこからサービス提供するサーバーまでを100Mbps帯域保障しなければ、孫さんや松本さんが言っているようなすごく帯域を食うリッチコンテンツを全国で普及させる事はできません。ところで100Mbpsの家がたった千戸集まっただけで1Tbps(テラ)になりますが、インターネットというしくみで、全国の家庭で、End to Endで100Mbpsの帯域を安定して出すのは、現状では無理なのではないでしょうか?(技術的な勘違いがあればご指摘下さい)

  16. imadoki64 より:

    15.bobby2009さん

    総トラフィックの増大を妨げるボトルネックは一つではありませんから、安定して速度が出ないケースと一言で表現した場合、どれかそのボトルネックを一つに絞る事は出来ません。
    2008年を境に総トラフィックが横ばいと言う現象は、ユーザーの更なるネットワーク速度への欲求が頭打ちになったものではないと言いたかったまでです。

    サーバーの速度、バックボーン、IXの能力、etc.
    ボトルネックとなりそうなあらゆる要素がもっと能力向上すれば、確実に総トラフィックは増大するだろうと予測する訳です。

    それから、15.の投稿で、1000人が100Mbpsを保証されるには
    バックボーンは最低でも1Tbps必要では?との質問ですが、私は技術者では無いのでお答え出来ません。ただ、1T=1000Gである事を確認すればわかりますが、恐らく書き間違いですね。
    100M×1000=100G。その他のボトルネックを抜きにすれば、バックボーンは最低でも1Tbps必要ではなく、100Gbps必要で良いのでは?

  17. bobby2009 より:

    imadoki64さん

    >100M×1000=100G。

    一桁間違えてしまったようです。お恥ずかしい。
    では東京都区部と名古屋市の具体的な都市の戸数を元に、一つの都市における、あるキャリアのネットワーク最上部に集約されるトラフィック総量を単純計算すると、東京都区部で540G、新潟市でも35Gになります。このトラフィックは上位ルータへ接続される毎に更に集約されます。キャリアの最上位ルータでは、トラフィック総量はテラビットに達する可能性があります。その一方で、現在の物理的なネットワークの上限は10Gです。キャリアの最上位ルータから各都道府県をスター接続しても速度が足りません。

    前提条件は、下記の通り。
    1戸に要するトラフィックは60Mbps
    その都市におけるインターネット普及率30%
    仮想キャリアのその都市における市場占有率30%
    トラフィックはその都市の最上位のルーター経由でキャリアの上位ルーターへ流れるものとする

    東京都区部 100033戸 x 60Mbps x 30% x 30% = 540Gbps

    名古屋市 25993戸 x 60Mbps x 30% x 30% = 140Gbps

    新潟市 6473戸 x 60Mbps x 30% x 30% = 35Gbps

    【都市の総戸数(平成19年)】
    http://www.city.yokohama.jp/me/stat/daitoshi/new/h120402.html

  18. imadoki64 より:

    17.bobby2009さん

    よくわかりますよ。光と言えど、ベストエフォートで100Mを保証しても、実速度はそれ程出ない。現時点でそうですから、これから利活用が進めば益々渋滞する。基幹の拡幅工事をせずに、ランプばかりたくさん作って、車の流入量が自然増すれば、自然渋滞が起こるのは当たり前です。

    ニーズが設備投資の必然を呼び寄せますから、これは景気刺激になりますよ。いずれにしろ、基幹の速度向上は今後も必須作業だと思いますよ。

    それだけでは解決しません。あらゆるレイヤーで速度向上しなければ、「これまで出ていた速度が最近でないな」的現象が続出します。

  19. Qui より:

    imadoki64さん
     ご返答ありがとうございます。
     まず、私はヘビーユーザーではありません。ですので、あなたの持っている感覚とは少し違います。

     また、繰り返しいいますが、あなた一人の体験を一般論に置き換えて主張するなら、客観的データをください。
     私の出した数値に対して「私の勘です」「数字の罠な気がします」というのであれば、あなたのいう「トラフィックの増大」も、「あなたの気のせいでは?」で終わってしまいます。あなたがそう思うのならそうなのでしょう。それはあなたの中だけです。私はそう感じていません。

     以上を踏まえた上で反論しますと、ヘビーユーザーがトラフィックの上限を感じたところで、ヘビーユーザーが使用者の1%程度に満たないのなら、ネットワークの設備投資の必要性は感じません。
     また、アクセス制限についてですが、2008年5月23日に『帯域制御の運用基準に関するガイドライン』がでており、1%のP2Pユーザーがネットワークトラフィックの50%~60%を締めるデータが出ています。そういったユーザーに対して、すでにアクセス制限が実施されています。
     2008年からP2Pなどのヘビーユーサーに対してアクセス制限をかけたからこそ、国内ネットワークトラフィックが横ばいになっているということも言えるのではないでしょうか。

     確かにトラフィックは今後も増えるでしょう。しかし、税金を投入して全てをFTTHにするほどのニーズが示されていない以上、既存の設備投資のペースで問題があるとは思えません。

     参考までに、大和総研の分析結果もご覧ください。
     http://www.dir.co.jp/souken/itrd/it_time/100518.html

  20. bobby2009 より:

    全国の家庭へ光ファイバによる100Mbpsを通す事について、もう一つ問題提起します。香港では昨年から、1Gの光ファイバによるインターネットサービスが月額3500円程度で利用できるようになりました。

    【Hong Kong Broadband Fiberhome 1000】
    http://www.hkbn.net/2010/eng/en_service1_1a5.html

    また、無線WifiのIEEE802.11 vhtは60GHzの電波を使い、シングルリンクで500M、デュアルリンクで1Gの速度を実現する(各国で研究中)そうです。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/IEEE_802.11#IEEE_802.11n

    未来のインフラの為に、FTTH100Mという枯れた技術を国策として採用する事のは正しい選択でしょうか?