菅首相の弱い指導力に期待する!

北村 隆司

菅首相は「いよいよ本格的に課題を実行し、再スタートする気持ちで頑張りたい」と、その決意を語ったそうですが、余り張り切らないで欲しいものです。

私が菅首相に期待するのは、弱いリーダーシップです。下らぬ事に固執する鳩山前首相とは異なり、臨機応変と言うか場当たり的な性格で、情報操作も苦手な脆弱なリーダーシップが菅首相の持ち味で、情報操作が苦手なこの弱さが、色々な混乱を国民にさらけ出す効果があるからです。事実を知らされれば統治能力を発揮できる日本国民は、政治が透明化すれば政治意識を高め、自立の重要さに気が付く筈です。


維新以来、政府に面倒を見て貰って生きてきた日本国民は「自立」の経験を持ちません。ここで、小沢氏の如く強権的な指導者が登場すると、国民の官僚任せの悪癖が、小沢任せになるだけで、日本国民の自立と、政治の成熟には全く役立ちません。

1993年に小沢氏がその著「日本改造計画」で示した新自由主義の主張の多くは、自民党、公明党、みんなの党の考えと共通する部分も多く、菅首相が模索する「野党との部分連合」にもピッタリの政治方針です。この事は又、「野党に色目を使わす、国民新党と社民党との連携を重視せよ」と言う亀井国民新党代表の要望も無視できる効果もあります。

「日本改造計画」の主張とマニフェストを検証しながら、菅首相への期待を以下の様に整理してみました。

「子供手当て」と「戸別所得保障制度」は来年度から廃止!

「中央官僚支配の源泉、利権の温床となっている中央からの個別補助金は基本的に全廃し、地方交付税を含め、地方固有の財源として地方自治体に一括交付する。」と言う「日本改造計画」の主張からも「子供手当ては」廃止の対象となります。

「子供手当て」は、子育て制度の一元化で幼稚園、保育所など子育てに係わる制度の一環として考えるべき問題と、低所得者救済を混同して出来た新しい「無駄」に過ぎません。子育て制度の思い切った規制緩和と施設建設に必要な資金を直接地方に廻し、不足している子育て設備を充実させて母親を解放し、新施設の建設を通じて地方の経済を活性化させる事を期待します。

「戸別所得保障制度」も個別補助金の一種ですから「廃止」の対象とすべきです。

日本の農業は、農水省が推進して来た「土地原理主義農業政策」から脱皮し、民間の創意工夫を活用して、誰にも魅力的な産業にする事が農民保護の王道です。

労働者派遣法の見直し

「本来民間で行うべき事業に政府は口出しせず、民間の領域を拡大し、それらによって日本経済を持続的成長の軌道に乗せ、税収を増やすことで、財政の健全化を加速する事が雇用の増大と雇用条件の改善を生む」べきで、現行の労働者派遣法の修正は勿論、製造業への派遣禁止などは行うべきではありません。

規制の強化で雇用が増えたリ、格差が消滅した例は知りません。日本で必要なのは、派遣労働者の禁止ではなく、機会平等と同一労働,同一賃金の考えの促進です。強い規制は起業の妨げとなり、企業の成長を邪魔します。経営環境の悪化を生む規制の強化と円高は、日本から工場を追い出し、雇用を減らすだけです。

消費税率引き上げと目的税化

菅発言は、財政の悪化の救世主として消費税を取り上げ、税率論議に集中する過ち犯し、国民の批判を浴びました。小沢氏は社会保障制度の将来に不安を感じる国民の気持ちを推し量り、消費税を社会保障制度に使途を制限した、目的税化を主張し、税率も10%は必要であろうと論じています。この主張は菅首相とは比較にならない説得力のある論議です。私は菅首相が小沢理論を取り入れる事を期待します。

高速道路無料化 :大幅修正。

無責任な評論家の寝言を、集票の目玉になると思って飛びついた愚策の典型ですが、マニフェスト原理主義者の捕虜になって仕舞い、捨てられずに困っているのが現状でしょう。それに対し、私はこんな事を考えました。

緊急車両は全期間,全線に亘り無料。 営業用車両は平日は無料、休祭日は現行料金維持。一般車両は平日は現行料金維持、休祭日は一部大都市周辺を除き、その他の高速は一律千円とする。これにより、運賃を下げ,ながら交通渋滞も避け、環境にも配慮しながら休祭日を楽しめる体系を目標にする。

郵政改革法案 : 廃案。

国民新党の利益誘導法案に過ぎないこの法案は廃案とし、郵政分割は前倒し実施し、葉書を含む全ての郵便物を民間に解放して自由競争を強化する。但し、僻地を含むユニバーサルサービスの問題は、医療制度も含めた広域的立場から地方に住む国民の機会平等を担保する方策を別途考える。

制度改革の原則

個別補助金の廃止、権限・財源の委譲など実質的な地方分権を早期に実現し、分権実現による地域経済の活性化を図り、事業規制の撤廃、特殊法人、独立法人等、及びこれらに関わる特別会計は、原則廃止を前提に全てゼロベースで見直す。

国の役割

中央政府の役割を、外交、防衛、危機管理、治安から、食料、エネルギーを含む総合的な安全保障、教育・社会保障の最終責任、通貨、市場経済ルールの確立、国家的大規模プロジェクトなどに限定する。

以上、説得力のある主張を持ちながら、透明性と倫理観に問題のある小沢氏に代り、菅首相が小沢氏の主張を実行する事を期待したいものです。

コメント

  1. 松本徹三 より:

    現在の政権ではあまり出来そうにない事が多いのが問題ですが、私は、個人的には、北村さんの提言する政策のほぼ全てに賛成です。

    先の民主党の党首選挙で、実は私が最も懸念したのは、小沢さんが「マニフェスト遵守」を金看板の一つにしたことでした。

    財務的な破綻を回避しようとする限りは、衆院選の時に掲げたマニフェストが実現不可能なのは誰の目にも明らかなのですから、ここは国民に頭を下げて撤回させてもらうしかなく、鳩山さんの退陣によって折角それが可能になったのに、この機会を逸したらどうなるのかと、最後まで気をもんでいました。

    幸い私は民主党員ではなく、ハムレットにならないでよかったわけですが、何れにせよ菅政権が継続する事になったのですから、この一点だけは貫き通して欲しいものです。