60年代、ニューヨークのマディソン・アヴェニュー界隈を闊歩する広告マンたちを描いたアメリカの人気テレビシリーズ、「マッド・メン(Mad Men)」(*1)の第4シリーズ放映を記念して、今回は広告ネタでいきます。
オールド・スパイスといえば、私の父も利用していたアフターシェーブでした。あの自家製火炎瓶を作るのにお手頃そうなボトルが、実家の洗面台にあった情景を覚えています。
そのオールドスパイス(1990年よりプロクター・アンド・ギャンブル社の傘下ブランド)が、今年の7月から打った広告キャンペーンが、YouTubeなどで大ヒット。
これがそのコマーシャルです。
ムリを承知で意訳すれば。
「ハロー・レイディーズ。あなたのご主人も女性用のソープなどを使わず、私のように『オトコ』の化粧品を使えば、こんなになる...とは、かぎりませんが、私のような香りがするようになります。」
というストーリー。
私的には、ツボにはまりまくりました。
大爆笑させていただいた後に、この話題を香港のラグビーを通じての友人、以前は英系広告代理店大手のサーチ・アンド・サーチの香港代表だった人物に振ったところ、
「ユタカ、あの広告は確かに面白いけれど、ジョーク以上に広告的に巧妙なのさ...」
彼のご託宣は以下の通り。
以前は男性用化粧品のコマーシャルは、男性向けに作成されていた。例えばオールドスパイスのライバル商品であるAXE(もしくはLynx:ユニリーバ社傘下)のコマーシャルをみると、
「これでキミももてるようになる!」
という、単純ながら男性本能にダイレクトに訴える内容になっている。
しかし、オールドスパイスは、
「女性にもてたい!」
という、世代的、かつ人口的に限定された20代から30代の独身男性をターゲットとせず、
「もうどうでもいいや...」
と、化粧品などにお金をつかうことをしなくなってしまった30代以上の既婚者層をねらった。
しかも、「将を射んとすればまず馬を射よ」というわけで、メッセージを彼らの奥さん層向けに、「あなたのご主人を改造します」と設定。ここには、実際に彼らの身の回り品を買っているのは、主婦であるという冷徹な分析もある。(その善し悪しは別として。)
かくして誕生した大ヒット・コマーシャル。
発想の転換。常識への挑戦。ルーティンからの脱出。
つまりは「イノヴェーション」ということに関して、大いなる示唆に富んでいるとは思いませんか。
*1
オマケ
グローヴァー!(@myikegamiさん、感謝)
コメント
Mad Men 面白いですね。妻と一緒に毎週欠かさず見ています。アメリカ近代史を垣間見るような気もします。
ところで HBO の The Pacific はご覧になりました?いわゆる実話もの。実写あり、実在の人がベースで実際に語りで出演している、戦争ものとしてはかなり完成度の高いTVシリーズだと思っています。
特に、Part 7: Peleliu と Part 9: Okinawa は圧巻。古き良き南部のお坊ちゃん(Eugene Sledge)が、時の経過と共に、戦争の鬼に変身していく。彼の心理の葛藤を思うと興味深い。人間とはああも変われるものかと。反面、Civilian に対しては、心優しい、お育ちの良い南部のお坊ちゃんに戻る。
日本の戦争物は綺麗過ぎて、、、戦争の悲惨さ、残酷さが見えないけど、The Pacific は、、、アメリカの視点で実写をベースに作られているので、、、見てのお楽しみ!
元日本人
natgeolakeforestさん
コメントありがとうございます。
What do you want me to say?
The universe is indifferent.
大した意味はありません。失礼しました。
I just wanted some people who I thought might like it to know it. That’s all. Never mind.
natgeolakeforestさん
いえいえ...”What do you want me to say?”と”The universe is indifferent.”はドン・ドレイパーの決めゼリフですよ!
The Pacificはまだ観ていませんが、最近のJohn Adamsと同じく、トム・ハンクスのプロダクションのようですね。たしかにSaving Private Ryan以来、アメリカの戦争映画はリアル路線になっているようです。みる機会があれば観てみたいですが...ないような気がします...。残念。