地元優位主義の上海 - 小谷 まなぶ

小谷 まなぶ

 上海で仕事をしている日本人管理職の間で、こんな話がよくされている。『部下に使うなら、上海人にするか、それとも、上海人以外にするか?』


 実は、これは、上海でビジネスをする上で非常に重要な話である。国際都市上海、上海万博も7300万人近い入場者があり、歴史的な記録を更新して、世界的な交際都市として名を上げた上海であるが、そこに居る人の考え方には、まだまだ、国際都市として、やりきれていない部分がたくさんある。
 それは、地方出身者が上海に働きに来た際に、よくぼやく話がある。『上海に働きに来て、一番悩むのは、地方出身者は、上海ではなかなか認めてもらえない。』
 私も、上海で会社を経営しているが、地方出身者を雇用してビジネスをしていると困った問題があった。それは、例えば、地方出身者が、上海のある工場に出向いて、商談を行うとすると、工場の経営者が上海出身だとすると、なかなか話を聞いてもらえない現実があった。地方出身者の従業員の能力があるかないか、など関係なく、地方出身者というだけで、認めたくない風潮があるのである。最近は、表立って、そのことを話す人は少なくなったが、感情的には、『上海人は、地方出身者を認めたくない。』という感覚が強いことが言えるのである。
 地方出身者を、会社の管理職にすると部下が上海人だとすると、まずは、うまくいかないのである。上海人は、精神的に、地方出身者を、受け入れるのが難しいと感じている。
 特に、その感覚は、一般企業よりも、行政の担当官が強いように思う。中国でビジネスをしていると、行政との付き合いというのも必ず発生する。
『会社経営に関しては、工商管理局が会社の運営について管理している。また、税務に関しては、税務局が管理している。』
 中国で、会社運営をする上で、行政対応をうまくしなければ、行政からいろいろ細かい指導をすぐに受けてしまうのである。
企業は、総務担当者が、行政との会社の間に立ち、話をするのであるが、この担当者が、上海人であるとうまく通じる話でも、地方出身者では、なかなか伝わらないケースが多い。これは、言葉の問題でもあるが、上海語という方言が上海地域にはある。中国の標準語である北京語とは、外国語ほど違いがある方言がある。上海語が理解できない人は、上海では、話を聞いてもらえないという『暗黙の慣習』が存在する。地方から上海に就労に来るものは、中国人であっても、上海語を習得するために勉強している。上海で生き抜くには、上海語を理解して、そして、上海人とどれだけ仲間になれるかが、地方出身者として、この国際都市上海で行きぬくためのポイントになっている。
国際都市上海は、世界的に有名な都市であるが、上海にもともと住む人々は、『地元優位主義』を強くもっているのである。逆に考えれば、上海人は、その感覚を強く持つことで、『上海人の利権を守っている』とも言えるのである。いずれにしろ、上海は、世界的な国際都市になったことは違いない。しかし、この街でビジネスをするには、この街の人の感覚を理解して、ビジネスを行わなければ、すぐに問題にぶつかることになる。
 
 
■(ブログ)小谷まなぶの中国貿易ビジネス奮闘記

コメント

  1. bobby2009 より:

    >上海にもともと住む人々は、『地元優位主義』を強くもっているのである。

    外省人や我々外人が上海で事業をする場合、上海の地元企業との契約は特に気をつける必要があります。社内の法務部等で作成した契約書などは、紛争時に契約内容を争う場合に、上海の特殊事情によって負ける事が多いと聞きます。ゆえに大重要な契約は、上海人の経営する弁護士事務所と顧問契約して、契約書を作成すると良いと聞きました。

    >上海人は、地方出身者を認めたくない。

    広東省は、上海人のようではないが、やはり地元の名士は「広東語」で話すと親密感が増して仕事がしやすいそうです。