簡単に論破できる電波オークション反対論 パート2

山田 肇

先日の記事「簡単に論破できる電波オークション反対論」にコメントをいただいたので補足説明したい。

第一は「オークションに反対するのは民放テレビではないか」というコメント。私はそうは思わない。

電波オークションの実施方法について誤解があるようだ。電波免許には有効期間があるから、すでに免許を得ている事業者(民放テレビ)が業務を継続するためには、免許の更新が必要である。この更新の際に一度免許を取り上げ、改めてオークションによって免許人を決めるというのは現実的だろうか。民放テレビは今まで蓄積した有形・無形の資産を無にする危険にさらされるので、いくら高くても落札しようとするだろう。しかし、これでは安定的に国民に情報を提供するという、放送の持つ本来の意義を損なう恐れがある。したがって、更新時にはオークションは不適切である。


更新時にはオークションを実施しないのであれば、オークションは民放テレビに影響を与えない。民放テレビは地上波、ワンセグ、BS、CSと、すでに多様な電波を保有しており、さらに追加して新規免許を得ようという必要は乏しいからだ。

移動通信事業者は状況が異なる。より高速のサービスを、より多くの利用者に提供していくには、まだまだ新たな電波が必要だからだ。したがって電波オークションの導入は移動通信事業者に影響を与える。美人投票制度を維持すれば順番にタダで免許が手に入るのに、オークションが導入されたら金を出さなければならない、と移動通信事業者が反対しているのである。だからワーキンググループの報告書にも、わざわざ移動通信事業者の挙げた反対理由が記されているのである。

第二は「違法無線を摘発するなどに使われる電波利用料制度は維持すべきである」というコメント。

前回書いたように「電波オークションによって新規に免許を得た事業者からは電波利用料は徴収しない」としても、既に免許を持っている事業者からの電波利用料徴収は継続すればよい。電波オークションに出される周波数は限られているから、当面、電波利用料収入額に大きな変化は出ない。

長期的に(超長期的に)電波オークションによって配分される周波数の方が多くなり電波利用料収入額が減り始めたら、減額分だけオークション収入から補てんすればよい。

なお総務省に設置された電波利用料制度に関する専門調査会に提出された資料によると、電波オークションが導入されている米国等でも電波利用料に相当する制度が併存しているという。電波の「定期借地権」を決めるオークションと、違法無線を「警察する」ための電波利用料とはまったく趣旨が違うので、併存してもおかしくはない。電波オークションと電波利用料をはかりにかけてはいけないのである。

山田肇 - 東洋大学経済学部