悪いも良いもない。金利が上昇したという事実が残るだけだ。
そもそも金融商品の市場価格の変動に対して、様々なコメントや解説をして稼いでいる人々は多いが、それはあくまで解釈であって、真実というものはない。
あるとすれば金利が上昇した、という事実だけだ。
問題なのは、この事実の解釈ではなく、その事実が次にどのような事実をもたらすか、ということに対する予測なのだ。
さて、米国金利は急騰している。注意しなければならないのは、この金利とは短期か長期か、という点である。今回の場合の金利とは、長期金利のことで、そして長期金利とは、長期国債の利回りのことである。
この後段の部分が重要なところで、金利とは国債の価格のことなのである。
普通、長期金利は何で決まるか、あるいは長期金利が上昇した場合にその理由としてあげらるものは何かというと、それは以下の3つである。
① 景気回復
② インフレ期待の上昇
③ 財政悪化懸念
現在、米国長期金利が急騰しているのは、いわゆるブッシュ減税の延長をオバマ大統領が決定したことによる。その結果による、景気回復期待から金利が上昇しているといわれる。
ただし、この3つが同時に起きている、と考えることも可能で、景気回復期待からインフレ期待も同時に上昇しているということになっている。ただし、インフレ期待の上昇は観察できない上に(ここは前回のエントリーにも書いた)、その変化のルートは多数ある。
例えば、一つは上述の景気回復によるインフレ上昇を先回りして期待に織り込むというルートだ。これなら、景気回復による直接的な金利上昇と共に、いわゆる良い金利上昇として、みなはもてはやすだろう。
しかし、悪い金利上昇もあり得て、それは、ブッシュ減税の例で言えば、今後、財政赤字がさらに膨らみ、オバマがブッシュ減税を継続するなら、もともとの支持基盤に対しては、今後大盤振る舞いを強いられるから、財政赤字は歯止めが利かなくなり、その中で量的緩和が行われているから、これはインフレ課税という形をとるだろう、という予測(というよりストーリー)の下に金利が上昇するという解釈である。
これは、第三の財政悪化懸念と連動しており、その意味でも、3つの要素は区分しにくい。
この区分しにくいというのが曲者で、いわゆる市場の解釈というのは、同じ金利上昇を捉えて、先週までは良い金利上昇、来週からは悪い金利上昇と豹変する可能性が高いからだ。
これは市場においてはいつものことで驚くべきことではないが、今回は、米国の長期金利ということで影響は大きい。金融市場全体、世界的に影響が出てくるだろう。それも解釈の違いだけで。
このような環境の中で、真実を見抜くためには、解釈ではなく、現象そのものを観察することが大事で、その場合に、金利上昇とは、国債価格の下落であり、その原因は常に、売りの増加または買いの減少なのである。
したがって、理論的には、金利の上昇は、実質金利の上昇、期待インフレ率の上昇、リスクプレミアムの上昇、に分けられるので、この観点をフレームワークとして維持しながら、前述のような3つの要因に分けた解釈にはとらわれず(この理論と解釈は似ているが微妙に異なるので注意が必要だ)、現象を直接観察することで、次の動き、将来の変化を予測するしかない。
コメント
円ドルレートはどうなります?
TPPとか。。
かしこ
「大切なのは金利上昇の解釈でなく次に何をもたらすかその予測が問題」と冒頭に言われているので、てっきり小幡さんがその予測を述べられているのかと思ったら、「問題ではないはずの」金利上昇の解釈に始終し、最後に「次の動き、将来の変化を予測するしかない。」で終わってます。
経済の予測をするのはエコノミスト、証券アナリストの下司がする事で学者のする事ではないとお考えでしょうか?ハーバード大のケネフ ロゴス教授は米国の金融危機を予告してましたし、現在も日本国債の暴落を予測してます。経済学が理論のみに終始し、発生済みの現象の解釈だけで終わるなら世の中に全く役に立たない学問です。
現在の金利上昇が次に何をもたらすのか、気鋭の経済学者と自他ともに認める小幡教授に日頃の研究成果を披露していただきたい。アゴラの読者の皆さんが期待しています。