高校生も感じる就職難 - 村上たいき

アゴラ編集部

「不安に思うことはなんですか?」
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将来の就職(80%)
大学受験(69%)
将来のお金(65%)
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(出所:電通リサーチ)

「将来、どんな職業につきたい、または、どんな生き方をしたいですか?」
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公務員(20%)
大企業の正社員(19%)
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(出所:電通リサーチ)

どちらも高校生の回答だが、時代を反映している印象を受ける。2番目の質問は私には職業の質問にみえるが、高校生の回答は、どういう仕事(職種、職業)をやりたいかではなく、どういう立場になりたいかという回答だ。


つまり最近の高校生は「やりたいこと(内容)」より「生活」を優先事項として捉えている。それが良いか悪いかは置いておいて、このような高校生たちの望みをかなえるにはどうしたらよいか?大学に行くべきなのか?行くならどこの大学に行けばよいか?

国立より私立大学のほうが内定率は悪く、文系は理系より内定率が悪い (文科省調査[去年度以前]、朝日新聞[今年度])。また、最近の調査 (慶応大学&京都大学) によると理系のほうが収入が高いという報告がある。これを見る限り理系国立大学に進んだ方が良いことがわかる。逆に一番就職が厳しいのは私立文系。しかし、国立理系は誰でもいけるわけでない (だから意味があるんだけど)。いくら「やりたいこと」より「生活」を優先するとはいえ、数学や物理が苦手な高校生がむやみに理系に行き、苦手なもので勝負するべきでは無いと思う。また、このような統計を見て理系学科の大学を増やせという意見もあるが、理系も文系も定員割れしている大学が現在あるので、理系の定員だけ増やしても、理系卒が増えるようには思えない。

文系私立でも有名校ならまだいいほうだ。低偏差値の大学の内定率はそうとう厳しい。企業の採用は大学の偏差値を見る傾向がある。企業にとって優秀な人材を、効率的に採用することが正しいことである。人気企業では採用人数の100倍の応募があるらしいが、当然一人一人時間をかけて能力を見極めることは現実的ではない。そこで大学の偏差値という機械的なフィルターを用いる。これは大学入学偏差値と、仕事の能力には相関があるという認識からだ。あくまで相関なので、低偏差値でも最適な人材もいるし、高偏差値でもその職に適さない人材もいる。ただ高偏差値の最適な人間の割合が多いという認識だ。これからわかることは、たとえ良い人材であっても低偏差値大学では整理券すらもらえないということである。

現在、私立大学の4割が定員割れしている(地方文系私立が多いらしい)。これらの大学卒業生にはこの整理券がもらえないことが多いだろう。もし高校生がこのあたりの大学に進むつもりなら、高卒で就職するか、専門学校、もしくは他の選択を考えた方が「お得」だろう。さらに言えば高卒での就職するなら、普通科より、工業高校のほうが有利だ。そう考えると普通科高校に入るのは、それなりにリスクがあり覚悟を持ったほうが良いことがわかる。ここで覚悟と言ったのは高偏差値の大学にいくという決心のこと)。中学生にそんな判断をするのは難しいが、両親がなんだかの助言をしてあげたほうが良いかと思う。大卒内定率の影響が中学生に影響しているというのは不思議な感覚だ。

ただし高卒の場合、地元就職がメインで地域差がかなり大きい。東北地方など出生率が高いにも関わらず、産業が低下している地域では、高卒でも就職は厳しい。このような地域で大学に行かないのであれば専門学校に行ったほうが良い。この他、海外に出る、起業する、などなど意見もあるが、これは誰でもできることではない。よって誰にでも勧められないが、ガッツのある人 (これが一番大事かと思う)はぜひ挑戦してほしい。(ただ10年間倒産しなかった企業の創業者の9割が大卒、しかも有名大学が多数を占めている:president調査)

結局、やれることをやるしかないが、大学に進むことは決して本人のためになるとは限らないことだけは、言っておきたい。こんな得とか損とか考えないで、やりたいことをやってほしいと思うのが個人的な気持ち。しかし子供はそう思っているとは限らないし、思ったとしてもチャンスさえ与えられないこともあるのが現実のようだ。
(村上たいき)

コメント

  1. hiranarihashira より:

    いずれの意見も納得のできる物なのですが、これを子どもに伝えるとき、そのベストなタイミングは高校進学前の中学生の時ということになります。

    私が中学生の時このような意見を聞いたとしても理解できなかっただろうし、理解できる中学生は少数になるだろうと思います。
    ということはそのような日本の教育制度に根本的な欠陥があり、それを直していかなければいけないのかもしれません。

  2. ksmethod より:

    「やりたいこと(内容)」より「生活」を優先事項として捉えているのが最近の高校生に限った傾向かどうかを判断する材料は持ってませんが、高校生にもなれば「やりたいことで飯が食えるほど世の中甘くない」ということはわかるのでしょう。