少子化は確かに問題だと思いますが、もう一つの問題として、グローバル経済による雇用不安があると思います。
組み立て業などの低付加価値産業が、IT化による世界レベルの効率化で、労働賃金の安い海外にどんどん移転している。国内の工場は閉鎖され、海外から加工済みの食品や、組み立て済みの家電製品が輸入されてくる。 それがデフレも引き起こしている。 国内の高コスト人件費が海外に移転することで、製品の価格は下がり、物価は下落している。
少子化問題に戻りますと、新卒の若者が(大企業に就職できないので)社会問題になっているようです。もし、少子化が進んでいなかったら、困窮する若者がさらに増えていたと言えるかもしれません。逆説的ですが、短期的には少子化の良い面かもしれません。(これは冗談です)
もちろん、長期的には少子化は国力を削ぎ、内需も減少していくでしょう。一方で、高齢化による福祉負担は増加するわけで、現役世代はダブルで高負担になって行きます。もし、若者の先行き不安が非婚や少子化を推し進めているとすれば、官にせよ民にせよ、日本としての成長戦略を見つけ出すことが、少子化を食い止める道だと思われます。
すでに、将来設計を見据えて子育てを開始している世代にさらに「子ども手当」を支給しても、むしろ少子化は改善せず、独身者や子育てを諦めている世帯を補助してこその少子化対策なのだろうと思います。若者世代の先行き不安を取り除くには、景気の浮揚・雇用の創出が必須でしょう。
例えば、ソフトバンクの孫社長は「日本はIT立国としてアップル社を目指せ」とおっしゃいますが、根回しやKYを重要視する島国育ちの日本人は、グローバル経済の中で、異文化と協調するための明文化・契約主義な駆け引きなどは苦手だろうと思います。
もちろん上手くなるにことにこしたことはないでしょうが、日本中に光ファイバーを引くことで駆け引き上手になるとは思えません。電子教科書を導入したとしても、異文化の中で、自分の規格を強引に相手に押し付ける技術は学べないでしょう。
そのためには、まず日本を多民族国家に変え、「KYが通じない世界」にしてしまう必要があると思います。残念ながら、それには数百年かかるのではないかと……。
話が脱線しますが、日本のアニメはアラブや欧州でも人気があるそうです。それは、日本製アニメは、無宗教で無国籍なので、様々な国の民族が「自国の話」と違和感なく思えてしまうらしいのです。ガラパゴスな日本コンテンツがグローバル性を持っているのは皮肉な感じがします。
成長戦略の話に戻りますが、最近では、日立の高速鉄道受注、
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101229/biz1012290201001-n1.htm
東芝のトルコでの原発受注、
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20101231-OYT1T00284.htm
シャープがApple社出資で液晶工場を新設、
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20101229-OYT1T00530.htm
といったように、重工業や材料開発の分野で規模の大きなニュースが多く報道されているのを目にします。
さらに、はやぶさ帰還やノーベル化学賞などを思い返してみても、日本が現在強いのは、システム化できない、デジタル化されていない、アナログな基礎研究部門ではないでしょうか?もし、日本がシステム化が不得意な国だとすれば、今後、外貨を稼ぐために注力すべきは、IT立国ではなく、歴史を逆戻りすることになるかもしれませんが、材料分野や医薬品、付加価値の高い重工業分野なのではないのかと思えるのです。
「設計」も「組み立て業」も無理なのであれば、「部品開発」こそが日本向きの道ではないでしょうか?日本が得意なアナログ産業を再発展させることが、少子化対策につながるのではないかと考えます。
(安武和宏 会社員)