以前、長男と観に行った映画で、ヌーが新たな草原を求め何十万匹単位でサバンナを移動するシーンが印象的であった。途中、どうしても川を渡らねば成らず、何匹かの仲間は、待ち構える鰐の餌食と成るのである。
関西人である私は、ふと考えてしまった。幸い流浪の果てに、草原に辿り着き目出度し、目出度しは良いが、仮に何時まで経っても荒地の連続ならば、ヌーは一体どうするつもりなのだろうかと。
天下のNTTを、ヌーと一緒にして誠に申し訳無いのであるが、NTTの現状は草原無き荒野を彷徨う、ヌーそのものでは無いか。
メタルありきの、従来の電話商売に見切りを付け、代って将来の商売は光として「フレッツ」の拡販に此処10年程注力してきた訳である。
残念ではあるが、10年経っても緑の草原には出くわせ無かった、と言う所では無いか。いや、寧ろ、点在していた草原すら消え去り、赤茶けた荒地に変わってしまったのでは無いか。
此の辺りは、NTTで実際に「フレッツ」の拡販に当る人間が実感として体験している筈である。兎に角、加入促進を担当する、代理店やクロージングの場を提供する家電量販店への、1件当たりのインセンテイブが尋常ではない。此れは、取も直さず市場が無く相当無理して契約を取っている事を、意味している筈だ。
それでは、一体何が「フレッツ」を陳腐化した、ニッチな商品にしてしまったのであろう。
何時でも、何処でも使える、無線通信の台頭と今回のCESでも明らかと成った、多彩なDeviceの出現である。
NTT経営幹部が、理解出来て居ないのは、此れからは先ず「アプリ」ありきと言う事実である。別の言葉で言えば、Webへの繋がりは先ず「アプリ」立ち上げありきと言う事なのだ。
NTTのホームページ観れば、彼らの勘違いが良く判る。先ず以て、住所を聞いてくる。次にISPの選択である。こんな事聞く事自体がどうかしてると言う事、NTTは本当に理解して居ないのだろうか?余りにプロダクトアウトの発想である。
端末の、利用シーンを想定してみれば良い。スマホの利点はお手軽さである。唯、当たり前の話であるが、何時も持っていなければ成らない。だから、テーブルの上で、仕事したい時はタブレットPCの出番と成る。若い人は、こんな事考える以前にシームレスに、そして自在に使い熟しているに違いない。
昨年末、GoogleとYahoo,Japanに拠る検索エンジンの提携が話題と成ったが、「Bing」等は直ぐに死語と成る筈である。
スマホメインの若者が利用シーンの中でタブレットPCに流れるであろうが、此れは取も直さず、OSがアンドロイドの無線PCに過ぎない。Windowも2年もすれば駆逐され、若い人に取っては「窓」がどうしたと言う話に成るだろう。仄聞する所、多くのMS幹部が辞めて居るらしい。沈む船に見切りを付けたのであろう。
そして、Googleも又、新たに登場したSocialの旗手、Face Bookに拠り、牙城を一つ、又一つと切り崩されている。
こう言った、ダイナミズムを前に、未だに「県域」と言う意味不明の組織を温存し、ホームページで、住所は?、ISPは?と10年変わらず聞いて来る、NTTとは一体何なんであろう。
少なくとも、経営者がスマホやタブレットPCを使い熟しているとは思えない。Socialに就いても同様である。
独占企業の、成れの果てとはこんな物かも知れない。既存インフラの維持、管理は別軸で考えるとして、NTTは店仕舞いすべきではなかろうか。
山口 巌
ファーイーストコンサルティングファーム 代表取締役
コメント
NTTに勿論草原はあります。しかし、その為には惰性で物事を進めるのではなく、「肉を切らせて骨を切る」積極策が不可欠です。私なら下記を断行します。
1)コストに期待利益を上乗せして料金を決める長い間の慣行をやめて、値下げを先行させ、それによってボリュームを稼いで設備投資効率を上げ、長期的に利益が滲み出てくるようにする。
2)家でスマートフォンやタブレットを使うことによって発生するトラフィックは3Gモバイルでこなすことは全く無理ゆえ、「フレッツ+WiFiならこれだけ快適に使える」という販売を積極的に行う。その為にKDDI系やソフトバンク系を含む全事業者と協業する。
3)家庭のTV受像機をインターネット端末化するのに必要な安価なアダプター類を用意する一方、大量のオンデマンド用映像ソフトの供給体制を整え、これらと結びつけてフレッツの販売を行う。(アップルTV等の例に倣う。)
但し、上記(特に第3項)を行うためには、「独占に近い強大な力を持った現在のNTT」のままでは、競合する全ての通信会社と放送会社(地方局や地方の中小ケーブルTV会社を含む)が大反対します。従って、自ら組織を分割して、ドミナントプレイヤーに対する「縛り」を外して貰うぐらいの決断が必要です。
(普通の会社になるのを恐れるあまりに、「縛り」を甘受し、それによって「通信と放送の完全融合」等の新しい動きに後れを取るとしたら、それはNTTの悲劇たるにとどまらず、日本の悲劇になるでしょう。)
松本徹三様
丁重なコメント頂戴し恐縮でございます。異存は無いのですが、NTTに取って「光」は所詮宝の持ち腐れでは無いでしょうか?貴社の如きセンスのある企業がtake-overすべきと思います。Device,contents,socila(無論全て無線通信ありきですが)複合により最終リッチコンテンツのリビングでの視聴のシナリオ明日考えてエントリー予定です。明日は訪問先多く、午後になるかも知れません。暫しお待ちください。
山口 巌
人間の行動を動物の行動の一端にたとえ、メッセージを伝えることは非常に有効だと思います。ただ人間は、他人の意見を一つの提案として取り込み、自分の愚かな行動に気付くという、動物とは比較にならない能力を持っています。
生まれてから身の周りのほとんどすべての人が他人の目を気にして他人の行動に合わせるという、(人の形をした)ヌーの群れの中で生きていると、自分がヌーの一匹であることに気付くには、並大抵の事ではなさそうです。たとえ直接ヌーと呼ばれても、見た目体は人間の形をしているので、見た目だけでしか物事を評価ができない自分のことだと気づくのは難しのかもしれませんね。
批判だけなら誰でもできます。
固定インフラサービスでユーザーの住所を第一に確認しないで何を確認すればよいのでしょうか?批判だけではなく、ではどうすべきであるのか?この点について持論を一切書かれていない時点で話になりません。
ちなみにソフトバンクのような企業はあくまでもベンチャーゆえに品質など切り捨てることができますが、責任ある立場のNTTが同じことをすればどうなるのか?想像することは簡単だと思います。
shuuさんのコメントには、私のコメントの論点との接点がどこにもない様に思います。(住所の問題も、品質の問題も、私の論点とは全く関係がありません。)
私は、このコメントで、別にNTTを批判しているわけではなく、「自分がNTTの社員ならこういうことを提言するのだがなあ」ということを申し上げただけです。ソフトバンクの人からは、「要らぬことを言うな」と怒られるかもしれませんが…。
松本さん
誤解をさせてしまったようで申し訳ありません。
4のコメントは記事に対してのコメントです。
松本さんのコメントは私と意見は異なりますが、きちんとNTTの問題に対してどうすべきか論じており議論に値する内容だと思います。(松本さんにはNTTに転職していただき、すこしは中からNTTを変えていただきたいくらいです)
今回私が指摘したのはあくまでも山口さんの記事内容の稚拙さに対してです。
> ホームページで、住所は?、ISPは?と10年変わらず聞いて来る、NTTとは一体
持株、ドコモ、東、西、Com、・・・のどの会社のことをさしているのでしょうか?
何をおっしゃりたいのか、よく分かりませんが。
スマホが使いたい人は、ドコモと契約すると思います。それで良いのでは?