再度のレス記事を頂いた石田氏へ、再び感謝の言葉を述べます。私と石田氏の相違点は、福島第一原発への対応における政府首脳のリーダーシップの問題に絞られました。それでは本件について、一般論と菅首相の対応の2つに分けて、再度意見を述べさせて頂きます。
1)一般論
首相や大臣などの政府首脳は、専門知識を有しない者であっても、日頃から官僚や審議会など政府内外の専門家をアドバイザーとして、難しい「判断業務」を行っています。(少なくとも建前上はそうである筈です)故に、たとえ原発事故への対応であれ、その判断を行うのは政府首脳に求められる業務の範囲内であると考えます。
また、専門家に検討させる時間が無い緊急時であって、過去に経験の無い未知の事象へ対応する場合、「積み上げ式の知識」で判断を行うのが困難の場合もあります。それでも政府首脳は、判断を下さねばならない状況があります。このような場合、たとえ直感しか頼るものが無くても、結果責任を負う覚悟を持って判断するのが政府首脳に課せられた責任ではないでしょうか。
2)菅首相の対応
新しい情報を追加させて頂きますが、産経新聞(参考資料1)によれば、津波によって福島第一原発の炉内の冷却に問題が生じたとの報告が政府首脳へ届いた時に、菅首相は「勘」によって「まず、安全措置として10キロ圏内の住民らを避難させる。真水では足りないだろうから海水を使ってでも炉内を冷却させることだ」と指示したが、東電の「激しい抵抗」で却下されたそうです。これが事実であるとすれば、菅首相は福岡第一原発の問題を「政治主導」で解決しようとしたが、リーダーシップの欠如によってその機会を失い、東電本社に任せたところ結果が裏目に出たという事です。菅首相はさぞや悔しかったでしょうが、全ては後の祭りです。
朝日新聞(参考資料2)によれば、枝野長官は、政府は福島第一原発を「廃炉」にする権限を持っていると述べています。毎日新聞(参考資料3)によれば、菅首相は東電へ怒鳴り込んだ15日に、速攻で管首相を本部長とする統合本部を設立しました。その日の会見で枝野長官は「政府と東電が物理的にも一体化し、現地情報を受け止め、一体的に判断し指示していくことが事態の収束に重要だ」と述べて、政府主導を(私には不完全に見えますが)実現させています。これらの内容をまとめると、政府は福島第一原発の障害対応において、統合本部を設立して東電を対策組織へ取り込む権限、障害対策中の原子炉を廃炉にする権限を持っていた事は明白です。
上記の内容から、デスマーチの責任はやはり、東電の抵抗に屈し、自分の「判断」を通す事ができなかった菅首相にあると考えます。ちなみにデスマーチの範囲は、石田氏が想定しておられる「原子炉冷却及び放射性物質閉じ込めオペレーション」です。
参考資料
1)産経新聞:「東電のバカ野郎が!」官邸緊迫の7日間 貫けなかった首相の「勘」 またも政治主導取り違え(2011.3.18 00:15)
2)朝日新聞:枝野官房長官の会見全文〈20日午後4時半〉(2011年3月20日21時2分)
3)毎日新聞:東日本大震災:原発事故で統合本部 政府と東電(2011年3月15日 9時34分)
4)リーダーシップ(wiki)
(石水智尚 インターネット・ソリューションズ・リミテッド役員)
コメント
不覚にも、菅首相の名前を(菅と)間違えておりましたので、訂正させて頂きました。アゴラ編集部にもご迷惑をおかけ致しました。 石水