原発行政は既に破綻しているのでは?

山口 巌

日本の原発戦略の基本は、燃料となるウランが必要量供給されるとの前提の下、先ず今回事故の福島発電所の様な原発での発電があり、次いで六ヶ所村での使用済み核燃料の再処理、最後に高速増殖炉での再生燃料(プウトニューム)による発電と、これに併行した燃料となるプウトニューム製造と言う事であった筈である。

この循環により単にウランを燃やすだけの原発発電に比べ60倍の発電が可能との関係当局の説明であった。

2018年度には総発電量の40%を原発が賄うと言う計画も、この循環がある程度回り始めているとの仮説の下に立案されたと推測する。

従って、原発継続の得失を評価するには各段階毎の状況、課題そして課題克服の可能性を精査するのが早道と考える。

先ず原発である。

私を含め多くの国民が、今回の事故で初めて原子炉格納容器内に使用済み燃料棒が保管されている事実を知ったのではないだろうか?

これは、まるでマンションの部屋にゴミが積みっぱなしの状態であり、平時でも好ましいとはとても思えない。そして今回の様な震災となれば福島で経験した様に保管された使用済み燃料棒が牙を剥いて襲って来る。この背景には六ヶ所村の再処理工場の稼働が、度重なるトラブルにより遅延している事実があると思う。

六ヶ所村再処理工場、余り芳しい状況ではない様だ。
ウィキペディアは現状を下記の如く説明している。

日本全国の原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を集め、その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場である。最大処理能力はウラン800トン/年、使用済燃料貯蔵容量はウラン3,000トン。2010年の本格稼動を予定して、現在はアクティブ試験という試運転を行っている。試運転の終了は当初2009年2月を予定していた。しかし、相次ぐトラブルのため終了は2010年10月まで延期されることが発表されていたが、2010年9月になってから、さらに完成まで2年延期されることが発表された。完成までの延期はこれまでに18回にも及ぶ。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E3%83%B6%E6%89%80%E5%86%8D%E5%87%A6%E7%90%86%E5%B7%A5%E5%A0%B4

それでは、再処理工場の仕組みは一体どの様になっているのであろうか?

簡単に言ってしまえば、燃料となるウランとプルトニュームを分離し残りの燃えカスは核廃棄物として処理すると言うだけの事である。

今回調査して愕然としたのは、未だに下記の通り高放射能廃棄物の処理を具体的のどうするか何も決まっていないという事実である。

使用済み燃料の状況から推測して、原子炉本体の処分方法等も実は何も決まっていないのではないか?

しかしながら、処分方法が決まってないから原発が老朽化しても運転を継続すると言うのは、本末転倒であるだけでなく、実に危険な発想である。
http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/3_saisyori/saisyori.html

最後に高速増殖炉の実態である。

偏に、高速増殖炉もんじゅが巧く稼働するか否かにかかっている。しかしながら、昨年NHKが指摘した通り国際的に期待はあるものの問題山積である。

福島原発より危険との指摘もある位である。

中継装置の取り外しに失敗し、事故が起こる可能性がある
 もんじゅでは事故が起こってから、何度もこの中継装置の取り外しを試みていますが、今まで全く成功していません。詳しくは知りませんが、現在はいろいろなやり方を試そうとしているところみたいです。ただし、この作業は非常に難しいらしく、もしミスをしてナトリウム火災や原子炉の暴走が起こってしまったとき、今の福島原発が比べものにならないくらい甚大な被害が出る可能性があります。
 また、もし取り外しができないという状態になってしまったとき、プルトニウムの反応が完全に終わるまで維持し続けることが必要になります。これは大体50年以上かかるらしく、単純計算で500億×50=2.5兆円以上のお金がかかってしまうということです。しかも発電量は0です。

六ヶ所村再処理工場、高速増殖炉もんじゅ両者ではっきりしている事は、事業を継続する限り多額の費用を負担し続ける必要があるが、成功する可能性は余り期待出来ないと言う暗い事実である。

これでは、失敗を認めるのが嫌で、ずるずる継続していると思われても致し方ないのではないか?

今回の福島原発の事故をきっかけにして原発行政の見直しを急ぐべきと思う。

山口 巌

コメント

  1. heridesbeemer より:

    おおきく分けて、3つの路線があると思う。

    A)ウルトラ原子力(これまでの路線)
     すなわち、原発は増設をつづける。FBRと再処理を続行して、核燃料サイクルをめざす。国際核融合開発プロジェクトを続ける。
     この路線は、
    A1) FBR商業炉の見込みが50年先。もんじゅは、中継装置落下で、除去できず、フル運転は不可
    A2)FBRみこみないのに、再処理しても核武装以外の意味が薄い。
    A3)最終処理の問題がついていない。

     という問題がある。

    B)原発新設はやめて、現状は維持。寿命の来た炉の分は建設。使用済燃料の再処理はせず、ワンスルーで、深地層処理。

    C)原発から徐々に撤退。寿命のきた炉は廃止。置き換えもしない。その場合は、なんで発電するか?

     現実的なところは、Bくらいだと思う。問題は、リプレースでも、日本で原発をたてることができるかだが。

  2. ねこのまんさく より:

    >> 今回の事故で初めて原子炉格納容器内に使用済み燃料棒が保管されている事実を知ったのではないだろうか?

    原子炉格納容器内ではなく、原子炉建屋内かと。
    結局我々は、これだけ連日報道を聞かされても、構造も用語もあやふやなままです。

    知ったといえば、今回の事故で、原発の原子炉はつまるところ「蒸気機関」の「湯沸かし器」だと初めて知った人も多いようです。