アナログ放送は止められるのか

池田 信夫

私のところにアナログ放送停止の延期を求める署名が来るが、これまでは応じてこなかった。今年7月24日の段階で数百万世帯が取り残されることは確実だが、これによって可能になる電波の有効利用の価値のほうが高いからだ。

しかし震災で状況が変わった。災害で頼りになるのは、NHKの災害放送だ。昔は災害のときはラジオだといわれたが、今どきラジオをもっている人はほとんどいない。テレビも停電したらだめだが、停電をまぬがれた地域では重要な情報源だ。それをわざわざ見えなくする必要があるのだろうか。


UHF帯は700MHz帯などの次世代携帯などともからむので停波の延期は無理だが、首都圏と近畿圏などの主要なチャンネルであるVHF帯は、採算性の疑わしい携帯マルチメディア放送と用途の不明な「公共マルチメディア」に使われるだけだ。特に後者は「災害現場の映像を伝送する」ということになっているが、災害のライフラインであるアナログ放送を止めて役所の災害連絡に使うというのはグロテスクである。

ケーブルテレビでは移行措置として5年延長するのだから、それに合わせてVHF帯だけでも停波を延長したほうがいい。電波の用途も考え直して、災害で活躍した無線インターネットに使えるようにしてはどうだろうか。

コメント

  1. yamaguchiiwao より:

    被災者の方には政府が廉価版のデジタルテレビ端末を無償供与し(必要ならアンテナ付で)、空いたVHF帯域はご指摘の通り無線通信用に配分しては如何でしょうか?帯域の配分がオークションなら更に良いと思いますが。。。
    山口 巌

  2. katsumi_shimizu より:

    首都圏の、東京タワーからスカイツリーへの電波塔の移動を無視しての議論には、正直辟易している。

    今のタイミングで東京タワーより放送されている、地デジ放送受信用にアンテナを調整しても、来年3月からのスカイツリーからの放送開始時には、アンテナの方向を調整しなおさないといけない家庭が一体どれだけ有る事か・・・。

    地デジに反対する気は毛頭無いが、地デジ完全移行のタイミングと、電波塔の移動タイミングに整合性が無い事、整合性が無い事について議論されていない事の方が気になる。

    果たして、どれだけの家庭が電波塔の移動に伴って影響を受けるのか、確認出来ているのか?(影響を受けるのは1割程度の家庭との想定が有ったが、明らかな嘘では無いか)

  3. worldcomw より:

    ワンセグも含めて ここまで普及してしまえば、災害放送もデジタルを頼りにして
    良いんじゃないかと思います。
    今回は全く活用されていないように思いますが、6局×(SD3画面+ワンセグ)=24種類もの
    情報を送ることが出来ます。(データ放送を入れると更に増えます)
    これだけあれば、県別の被災者情報、計画停電情報だけを表示、なんてことも出来ます。
    アナログ放送は、さっさと切り捨てる方が良いでしょう。

    但し、携帯マルチメディアや災害マルチメディアを阻止する方便としてVHFアナログを
    継続するのなら、大賛成です。
    是非やって欲しいです。

  4. のぶちゃん より:

    首都圏や近畿圏だけアナログ停波延長というのは「暴論」のような気がする。地震があったからといってコロコロ意見が変ってしまうというのはいただけない。「今どきラジオを持っている人はほとんどいない」これも「暴論」でしょう。被災地ではラジオも貴重な情報源になっていたはずです。テレビのようにAC電源を必要としない、AMのポケットラジオは乾電池で長時間使用できるありがたいものですし、地元地方局が受けられる事で東京からの番組が中心のテレビとは違い、地元密着の緊急報道も行なっています。あまりに「ラジオ」について軽く見ていないでしょうか。

    ワンセグ放送もエリアが限られていて実際には地方の山奥のような取り残されるようなところでは全く意味のないものになってしまう。少なくともそうした奥地までラジオの電波は届いているわけであまり馬鹿にするような目線で見て欲しくない。私もラジオを持っています。