高円寺で実施されたデモから見える、新たな社会的対立軸とは

石川 貴善

著者も近場だったことから、4月10日に高円寺で開催された反原発デモを所用の前に見に行き、写真を撮ってきました。今までこうしたデモは、1950年代から60年代のイデオロギー左右対決の時代には活動が先鋭化した結果、次第に衰退していくのは各国でも共通していますが、いずれにせよ組織的な色合いが強いのが特徴でもありました。


今回は参加しても数百名程度だろうと事前に思っていましたが、実際に見てみますと主催者発表で1万5千人でしたが確実に4桁の参加であったものと思われます。主な特徴として、

1)親子連れの家族や若い女性など普通の方が多い。
2)遊び感覚でビール片手に練り歩いている。
3)デモの模様をスマートフォンで写真や動画を撮る、またはツィートしている。
といったことが印象的で、どちらかといえばこうしたイベントが初めてというニュアンスが強いのが印象的でした。

実際のそのときの持っていたプラカードや参加した方のツィートなどを見てみますと、反原発というよりも、下記のように明らかに対立軸が異なっているものと考えます。

1)東京電力に象徴される、既得権や日本的組織に対する反発
原発事故の内容や日常生活への影響に限らず、その会見をニュースで見ても内容がよくわからない/質問に答えないだけではなく、世界的にも高い電気料金や地域独占、さらにはインフラ企業で待遇や福利厚生が恵まれていることへの反発は否めないでしょう。

2)マスメディアは基本的に取材しないことから、報道のあり方への反発
今回のデモは一部のテレビ局で放送されましたが、基本的に放送されることは少ないです。本来メディアは「第四の権力」として、社会的な矛盾を告発するために大きな力が認められていますが、その機能を果たしていない、報道を自粛しているといったことへの反発があるでしょう。

3)環境汚染に関するアレルギー
基本的に若い世代ほど環境意識が高く、リサイクルやゴミの分別などで意識が高いですが、海洋への放射能汚染水の大量廃棄は、国際的な批判と共に国内でも批判的に受け止められました。こうした強い拒否反応が行動に駆り立てたのではないでしょうか。

4)震災のストレスや錯綜する情報から、恐怖から怒りへ転化
震災から1ヶ月以上経過し、地震/原発事故/節電/計画停電/買占めで日用品が買いにくいといったことのほかに、実際に仕事などでも影響を受けている方は少なくありません。特に今後の展開や方向性の見えない原発事故は、当初は強い恐怖に感じたのが、次第に怒りに変わってきているものと認識しています。

5)所属すべき集団を求めている動き
今回のデモは、日常生活においてネット比重が高い方が多い印象を受けました。今までは個人で仮想の世界だけか、何らかのイベントだけといった印象でしたが、「2ちゃんねる」から「はてな」に至り、「ニコニコ動画」やTwitterを通じて、次第にリアルへの居場所を求めているものと感じます。

日本では集会/結社の自由、思想信条や表現の自由など保証されていますが、戦後における社会活動の衰退の最大要因は、経済成長の中で企業戦士となることで、所属する集団と果実を受け取ることができたことにあります。今後の復興特需があるものの、すでに経済が成熟化していることを鑑みると、こうした流れは次第に広まっていくことは否めないでしょう。

石川 貴善(アゴラ執筆メンバー)
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