ノマドワーカーのひとりごと:海外で暮らすということ

松岡 祐紀

今日、朝起きてつらつらと仕事をしていると朝9時半に一通のメールが自分のパソコンに届いた。いわく「13時半にうちのアパートを見ることになっていたと思うけど、それを今日の朝11時にしてくれないか?」というお願いのメールだった。待ち合わせまで一時間半しかなかったので、もちろん断ったが「ああ、外国に来たなあ」と思った瞬間だ。

ここブエノスアイレスに住み始めて、数ヶ月経ったが、そのような小さな苦労がたくさんある。

アルゼンチン人からよく「どうしてブエノスアイレスに来たのか?」と訊かれるが、彼らを喜ばせることが出来るような、ぱっと思いつくメリットは1つも思い浮かばない。毎日のようにスペイン語を勉強しているが動詞の活用が多すぎて使いこなすのにやたらと時間がかかりそうだし、「南米のパリ」と言われてはいるが道には犬の糞があふれている。

東京のようにバラエティに富んだ食材はなく、レストランのクオリティも東京のそれには到底およばない。人はよく海外生活の素晴らしさを吹聴するが、よくよく考えたらメリットなど何ひとつない。言葉は通じないし、レストランの店員の愛想はたいてい悪いし、インフラにいたっては日本以上に整っている国をほかに知らない。


若者の海外離れが叫ばれて久しい。それが今では海外どころか「東京離れ」も始まっているらしく、松永英明氏のこの記事によれば地方の若者にとってみれば

「東京がなんぼのもんや」ではなく、「別に東京までいかんでええやん」

ということらしい。

東京まで行くのが面倒だったら海外に行こうなどと思いもしないだろうし、ましては日本の反対側に位置するアルゼンチンの首都ブエノスアイレスまで来やしないだろう。


自分は19歳の時に留学を決意して、4年ほどイギリスに暮らした。それから10年以上日本で過ごして、また再びノマドとなり海外で暮らすことにした。別にメリット、デメリットなど関係なく、ただただ日本を出て世界を見たかった。

ひとつ断言出来ることは「海外で生活することには目に見えるメリットはない」ということだ。しかし、その得難い経験から学んだことをうまくアウトプット出来れば、日本では得ることが難しいメリットを享受できる。

「なんとなく居心地がイイからこのままがいい」という若年寄りばかりだとますます日本の閉塞感は強まるだろう。今ある生活はずっと保証されているわけではない。これから、とてつもないスピードで色々なことが起こる可能性もある。そして、何か重大な変化が起こった場合、取り残されてしまうのは変化についていけない、あるいはついていきたくない人たちであることは確かだ。

それを疑似体験する場としては海外生活は非常に役に立つし、インプットが多ければ多いほど、アウトプットする量を増やすことが出来る。アウトプット出来る量が増えるということは、その分成功のチャンスが広がる。1年でも2年でも海外生活を選択することは、その先の5年、10年を見据えた場合、それほど悪くはない選択肢だと思う。

松岡 祐紀
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