東電救済スキームの見直しを

池田 信夫

野田佳彦氏が民主党の新代表に選ばれ、あす首相に指名される運びだ。「小沢傀儡政権」が防げたのはひとまずめでたいが、菅政権で滞った国会運営や復興対策を正常化するのは容易ではない。


まず重要なのは組閣だが、「党内融和」と称して小沢・鳩山グループから派閥均衡で選ぶと、また菅内閣のように閣内不一致が頻発して混乱するので、重要閣僚は首相のコントロールできる人物を選ぶべきだ。

特に緊急の問題は、原発事故の処理が原子力損害賠償支援機構法によって賠償の全貌も不明なままスタートし、最終的に電力利用者や納税者に負担が転嫁されるおそれが強いことだ。これについては「公正な社会を考える民間フォーラム」が提言したように、東電の株主や債権者が責任を負うことなしに他の関係者に負担を求めることは資本主義社会では許されない。

当初の賠償スキームでは「東電を債務超過にしない」ことが前提になっていたが、法案を可決したときの与野党協議で「債務超過もありうる」ことが付帯決議に盛り込まれ、国の責任も明記された。最終的な負担を曖昧にしたまま東電がずるずると「仮払い」を続けるのではなく、会社更生法で整理して債務の所在を明確にすべきだ。

この問題について今回の代表選挙で唯一、「東電を法的整理すべきだ」という立場を明言していたのは馬淵澄夫氏である。原発担当補佐官の経験もある彼を経産相に起用して、東電を法的に破綻処理させることが望ましい。菅政権の場当たり的な震災対策に決別し、法の支配にもとづいて復興を行なうためにも、東電救済の見直しはモデルケースとなろう。