シャープが『ガラパゴス』からの撤退を発表した。新製品を発表した当時、僕は心配して「専用端末の愛称は『ガラパゴス』」という記事を書いたのだが、その通りになった。シャープにとってはKINに続く惨めな結果である。
これは経営戦略の明確な間違いである。ハードとソフトの相乗効果で成長する市場で、小さく囲い込んでいては、成功はあり得ない。そんなことは、利用者の立場に立てばすぐわかることだ。どんな電子書籍でも自由に購入できるし、一度購入したら自分の持っているどんな端末でも読むことができる、そして、端末の世代が変わってもその状況は変わらない、そんな市場を目指して他社と協調しつつ、競争する戦略を取らない限り、成功はないのだ。
シャープには、この際、電子書籍フォーマットXMDFからも撤退してほしいものだ。XMDFは、縦書き表示、ルビなどの日本語特有の表現に対応しているというが、すでに世界規模でデファクトのEPUBが、日本の関係者の努力のおかげで、縦書き表示などに対応するようになっている。我が国に独自のフォーマットに、いまさらこだわる理由はないのだ。
シャープの株を少し持っているが、市場の評価は低く、このところ値を下げるばかりである。立て直しを望みたい。
『ガラパゴス』からの撤退は、市場全体にとってはよいことである。散り散りバラバラな状況が少しは改善するからだ。これをきっかけに、市場全体が標準化の方向に動き出すことを期待したい。
追記:濱野稔重副社長は、9月16日に、「GALAPAGOSは決して撤退致しません。来年にも、更に新モデルを追加販売する予定です。今後もさらに魅力ある端末とコンテンツサービスの提供に努め、事業拡大を図って参ります」と語ったというが、残念なことだ。HD-DVDを掲げてBluRayと争っていた東芝が、市場立ち上げ期早々に、撤退を表明したが、これはディスクメディアの市場を成長させるために懸命な決断だった。シャープにも見習ってほしいものだ。