周波数オークション懇談会報告書(案)に意見を提出しました

山田 肇

3.9世代免許は比較審査方式で付与すると電波監理審議会が決定した。周波数オークション懇談会の報告書も、事務局案のままで、電波部が押し切ることになるだろう。そのような状況で、提出しても役に立たないことは承知の上で、下に掲げるような意見を提出した。

それは「提出された主な意見に対する総務省の考え方」という文書を総務省が公表する必要があるからだ。それを読めば総務省の考えがわかり、次に何を論点とすべきかが見えてくる。僕の意見は「提言型政策仕分けに従え」だが、総務省はどのように対応してくるだろうか。

山田肇 - 東洋大学経済学部

以下、提出した意見を掲載する。


行政刷新会議の提言型政策仕分けで次の提言が出ている。

 オークション制度の早期導入は、透明性・公平性・財源収入の観点から国民の理解は得られる、プラチナバンド、第3.9世代から即時導入すべき、現在の進行中の900MHzの割当方針は国民共有の財産を不当に低価で渡すことになる、オークションを入れない理由はなく早急に導入するため改正法案を通す努力をすべき、(財)移動無線センターを使っての裁量権行使を続けたいという執念しか感じられないといったオークション制度の早期導入を求める意見がほとんどであり、第3.9世代携帯電話からオークション制度を導入すべきということを当ワーキンググループの提言としたい。
 なお、電波監理については規制改革として検討すべき、総務省電波部・電波行政のあり方についても考えるべきといった意見もあった。
 また、導入した場合のオークション収入をどうするかについては、国民共有の財産である電波については国が責任を持つという意味で一般財源とした方がわかりやすい、オークション収入を特定財源にする理由がない、国家財政が厳しく一般財源とした方が国民の理解が得られやすいといった全員が一般財源とすべきだとの意見であり、オークション収入は一般財源とすべきということを当ワーキンググループの提言としたい。

懇談会報告書には上記提言を反映させるべきである。とりわけ、実施時期と財源の扱いについては、懇談会報告書(案)を修正すべきであり、以下、詳しく記述する。

「第4世代移動通信システム(IMT‐Advanced)に用いる周波数(3.4GHz~3.6GHz)の免許人選定から周波数オークションを実施することを念頭」は、オークション実施を骨抜きにするものである。

3.4GHz~3.6GHz帯について、本報告書(案)別紙「第4世代移動通信システムに用いる周波数に対するオークションの制度イメージ(案)」は「最大10ブロック(20MHz×10、計200MHz)の割当が可能」としている。現在の移動通信システム事業者(MNO)を鑑みると新規参入がない限り競争的な申請とはならず、オークションは実施されない可能性が高い。

懇談会報告(案)はオークションを、実質的に、あるいは永遠に実施しないことを表明しているものであり不適切である。提言型政策仕分けの提言を反映させる形で、「3.9世代からのオークション実施」に書き直すべきである。

需要の急増に応えるため3.9世代は比較審査によって早急に免許を交付するというのが総務省の意向である。しかし、900MHz帯ですぐに免許を交付し、新免許人が旧免許人の立ち退きに努力したとしても、総務省自身が推進する周波数再編アクションプランによって元の利用者の立ち退き期限が2018年に定められているために、旧免許人が居続ける恐れがある。その結果、新免許人は当面は免許を得た帯域の一部しか利用できない。このように、比較審査による早期免許交付と周波数アクションプランの立ち退き期限という矛盾する施策を進める理由について、総務省に説明を求める。

報告書(案)では「電波の有効利用に資するICTの振興に充てることより電波利用者に利益を還元するともに、国の財源として国民全体に還元することが適当である。」となっているが、オークション経費を除くすべてを一般財源とすべきである。

広く国民にブロードバンドが行き渡りつつある現在、ICT自体を振興する特別の理由はない。しかし、電子行政・遠隔医療・遠隔教育等にICTを利活用することについては、わが国は立ち遅れており、このICT利活用を振興するためにオークション収入を、オークション経費を除き、充てるべきである。

電子行政・遠隔医療・遠隔教育等の主管庁は必ずしも総務省ではないため、オークション経費を除きオークション収入は一般財源とし、利活用施策のそれぞれについて主管庁に委ねるのが適当である。

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