成功するとは思えない消費税増税

山口 巌

内閣改造と新たな閣僚布陣が発表された。しかしながら、私の回りで何かを期待するかの如き空気は全くない。発足してたった3ヶ月で支持率を半分に下げた脆弱極まりない内閣に、「政治改革」、「行政改革」、そして「社会保障と税の一体改革」と大風呂敷を広げられても、共鳴出来ないのは当然である。


「公正」と「深い洞察」を標榜するBBCは、今回の内閣改造を下記の通り伝えている。

Among the new appointees are former foreign minister Katsuya Okada as deputy PM to lead tax reforms.
Seen as a heavyweight, he will be tasked with building support for Mr Noda’s proposal to double sales tax – Japan’s equivalent of value added tax.This currently stands at 5% but Mr Noda says it must be raised to meet rising social security costs.

岡田前外相が副首相として閣内入りし、膨張する社会保障に対応する為、消費税を現行の5%から10%への増税を担当する。

記事のどこにも、「政治改革」や「行政改革」は出てこない。只々、消費税の増税である。

多くの国民同様、私が違和感を感じるのは、増税ではなく公務員改革を基軸とする行政改革で財源を確保するといっていた民主党の「変節」である。そして、変節に至った経緯を何一つ国民に説明していない点である。

それは、一部のポピュリストが好き勝手に国民向けに語っていたとでもいうのであろうか?

Blogosに面白い記事、スローガンは「天下り根絶なき巨大消費増税粉砕」を発見した。何と二年半前の野田首相御本人の発言である。

「天下り根絶無き巨大消費増税」は絶対に認められない。「私どもの調査によって、ことしの五月に、平成十九年度のお金の使い方でわかったことがあります。二万五千人の国家公務員OBが四千五百の法人に天下りをし、その四千五百法人に十二兆一千億円の血税が流れていることがわかりました。これだけの税金に、一言で言えば、シロアリが群がっている構図があるんです。そのシロアリを退治して、働きアリの政治を実現しなければならないのです。残念ながら、自民党・公明党政権には、この意欲が全くないと言わざるを得ないわけであります。

正にその通りではないか?何故、政権奪取後諦めてしまったのであろう?実に不思議である。今回の消費税増税での増収は机上の計算ですら、10兆円超と聞いている。それならば、シロアリ駆除を実行すれば十二兆一千億円の血税が浪費されず、結果増税は必要ないではないか?

そして、今回の増税一直線内閣の門出に際し、お願いしたいのは、まるで雪達磨の如く膨張を続ける国債残高のメカニズムと、国家予算の関係の説明である。

現在の国家債務は、普通国債656.5兆円・財投債(財政投融資特別会計国債)113.1兆円、借入金56兆円、政府短期証券128.8兆円、政府保証債務が43.8兆円、総合計は998.2兆円と聞いている。これは、負債総額として一旦善しとする。

問題は、政府や財務省がまるで国民が飲み食いで使った金の如く宣伝した為に、国債に対応する資産が何もないかの如く誤解されている点である。従って、国債に対応する資産を焙りだし、仮に毀損しているのであれば、原因と責任を明らかにする必要がある。増税はその後であるべきである。

財投債の113.1兆円は一応財投融資先の資産がある筈である。

内訳を開示すべきと思う。

仮に、半導体大手「エルピーダメモリ」の資本注入に使われているとしたら、責任の所在と、今後の対応等も説明すべきである。資産劣化の経緯をうやむやにして、消費税の増税で帳尻を合すのではなく、先ずこういう不始末に至った背景を明らかにして、責任者に責任を取らせろといっているのである。

エルピーダメモリ等は、監督官庁の高級官僚の破廉恥極まりないインサイダー取引を含め所詮氷山の一角に過ぎない。財投融資全貌の解明が必要である。

政府短期証券の128.8兆円は為替介入の為の短期国債と聞いている。従って、巨額の為替差損はあるにせよ、米国債、EFSF債券そして外貨準備金としての資産はある筈である。一体、幾らあってどれだけ損したのだ?

迷走の止まらぬ安住財務大臣で批判した通り、無謀な為替介入やEFSF債券の購入は為替差損を膨らます以外何の意味もない。かかる、愚行、暴挙を放置して消費税を増税しても焼け石に水である事は明らかである。

財務省の、上(大臣)から下(末端の職員)迄総取り替えしなければ、幾ら増税しても直ぐ無駄使いしてしまうのではないか?そもそも無駄使いしているという意識すらないのではないか?

普通国債のうち250兆円の建設国債は基幹インフラとして子孫に残されている筈である。従って、この償還を若い世代が引き継ぐのは特に問題ないと思うが。、仮に相当目減りしているとするなら、何故そういうものに予算を付けたかという根本問題になる。

考えられる可能性としては、「利益誘導」を生業とする国会議員の跳梁跋扈であるが、これは、地方の在り方も含め、「政治改革」で解決すべきものであり、消費税の増税でうやむやにすべきものではない。

残りの大部分は「社会保障費」として大部分は高齢者によって消費されたのだと推測する。一昨日の記事、今回の白川日銀総裁講演内容から日本再生のシナリオを考えてみるで提案した通り、この部分には大鉈を振るう必要がある。

昨年末に閣議決定された平成24年度予算案は、一般会計90.3兆円、税収42.3兆円、国債発行44.2兆円で、はっきりいって消費税の増税程度では焼け石に水である。寧ろ、多くの識者、論者が指摘する通り経済を疲弊させる可能性が高い。

野田首相の、「社会保障と税の一体改革」の連呼や財務省の、「国債残高がGDPの2倍」というプロパガンダは正直聞き飽きた。

政府は、今回参照したのBBC記事の冷やかさに少しは頭を冷やし、国民に対する説明責任を果たすべきと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役