スタートアップから成熟したベンチャーへ - @ogawakazuhiro

世界最速で成長続けるソーシャルゲーム企業ジンガ創業者兼CEO マーク・ピンカスは「起業家はいつかは有能なCEOにならなきゃいけない。世界に衝撃を与えるビジネスを売り込めるのは、起業家ではなくて有能なCEOなんだ」と言っています。

つまり、起業家でございます、と言っていられるのはせいぜい10人から20人くらいの企業サイズまでであり、それを超えたら一気に月々のコストは増大するし管理しなければならないタスクも膨れ上がります。起業することと、それを経営して成長させるという能力やスキルには明らかに違いがあります。


起業家は創業者としての地位だけではなく、自身が経営者でいたい、自分の会社を自分で好きなように経営したいと思うものです。しかし、そのエゴを通すためには取締役会や社員から、経営者としての価値を認めてもらう必要があります。創業者になること自体は簡単ですが、経営者でいることは継続的かつ不断の努力が不可欠なのです。

ピンカスが言うように、起業家はスタートアップを興したら、今度は有能なCEOを目指さなければなりません。さもなければ、取締役会は経験豊かな”オトナ”をどこからか呼んできて、あなたの代役を務めさせようとするでしょう。そのうちには、あなたが作った会社にあなたの居場所がない、ということになるかもしれません。会社を作り、お金を集めることには長けていたとしても、それを運用し、アイデアを磨き、後進を育て、チームを成功に導く能力に欠けていたとしたら、ベンチャーはうまくいきません。

逆に、社員からしても、いつまでも社長が起業したての頃の気分でいられることは迷惑極まりません。会社を作る楽しみにしか関心がない起業家は、子づくりにだけ興味があって子育てに興味を持てないようなものです。恋人同士の二人が、子供ができたら両親となって、教育や良い家庭作りに勤しまなければならないように、起業家も会社を作り、人を雇い、顧客を得てしまったら、今度は彼ら(ステークホルダー)のために、優秀なCEOへと進化することを目指さなければならないのです。ただし、親になっても妻(夫)にとって魅力的な異性で居続けることが大切なように、起業家としての心構えを両立させていかねばなりませんが。

同じように、スタートアップも、文字通りの新興企業(創業後2-3年まで)というポジションから、徐々に中堅のベンチャー企業へと成長し、やがて自分たちの選択する出口戦略の実行へと会社を大きくしていく過程で、創業時の初心を忘れずにいながらも、その姿形を変えていかなくてはなりません。
創業してから30年以上経つApple、同じく10年以上のGoogleは、IPOを経た今でもベンチャー企業としての体裁とカルチャーを保ち続けています。彼らに憧れを持ち、見習うのであれば、起業家は自分たちが去った後でも(企業規模は関係なく)存続するような会社作りを目指さなければならないと思います。

ー 小川浩 ( @ogawawazuhiro )