朝日新聞がパートの厚生年金拡大に就いて報じている。
野田政権が検討するパート従業員らへの厚生年金の適用拡大案で、厚生労働省は、当面は100万人を新たに加入させる方向で検討に入った。適用条件を今の「労働時間が週30時間以上」から「週20時間以上」に引き下げたうえ、「従業員300人以上の企業で働く年収80万円以上の人」を対象にする。まず従業員300人以上の企業で働く年収80万円以上の人に適用を広げ、100万人を加入させる。その後、対象企業の従業員数を「100人以上」に引き下げ、さらに50万人を加入させる。最終的には従業員数や年収の条件をなくす。ただ、各段階の実施時期や学生を対象とするかは調整中だ。
最終的には「学生」も対象とするのだそうで、何とも恐れいった話である。
それでは問題の本質は一体何であろうか?
先ず第一に、名目的には保険料の半分は事業主によって負担される事になっているが、労務費の予算が一定である以上、現実的には事業主負担相当分はパート代金から差し引かれる事になる。
結局は全額をパートが負担する事になる訳で、体の良い詐欺みたいな話である。
次に、全くの掛け捨てになる確率の極めて高い保険であるという、残酷な事実である。早い話、実質破たんした年金の尻拭いの為にパートが犠牲になるといっても良いだろう。
俯瞰してみれば、これは「厚生年金」という看板をかけてはいるものの、実質的には「所得税」ではないか?
違いは、集めた金が国庫に納入されるのではなく、厚労省のポケットに収まる事である。そして、その大部分が彼らの天下り先の外郭団体の財源として消えて行く。
毀誉褒貶はあるものの、明治維新以降基本的には徴税権は大蔵省(財務省)の専管事項であり、一元管理されて来た。
考えてみればこれは当然である。国民が生活する為には一定の生活費が必要である。従って、収入から生活費を減額した所に納入税額が填まる様に、「税率」が設定されねばならず、その為には一元管理が必要条件となる。
今回の、厚労省による実質の所得課税の如き暴挙を、各官庁が我も我もとやり始めたら、国民生活が破綻するのは確実である。
それでは、何故厚労省はかかる暴挙に及んだのであろうか?
昨日、プロフィットセンターからコストセンターに転換する日本で説明した通り、今後日本は海外からの送金(移転収支)で食って行く国になる。
結果、法人税、所得税、住民税が減少する事は火を見るより明らかである。そして、結果各省庁の予算が削られるのも確実である。
これに対し、厚労省は座して死を待つよりもと、「厚生年金」を錦の御旗に独自財源の確立を目指し中央突破を図って居るのだと思う。目的は当然天下り団体の為の財源確保である。
財務省は消費税増税を強引に進め、厚労省は「厚生年金」という名の所得税増税を恥も外聞もなく進める。そして彼らの頭にあるのは、国民の生活ではなく「省益」のみである。
民主党は「国民の生活が第一」といって政権奪取に成功したが、実際は「官僚の生活が第一」である事がはっきりした。
近い将来行われる選挙では、正直に、「官僚の生活が第一」をスローガンに選挙活動を行って欲しいものである。
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役