『船中(維新)八策』について

生島 勘富

私は大阪市民として橋下市長を応援しています。

応援している人間としてバイアスが掛かっていますが、大枠が示された『船中(維新)八策』について少し考えてみたい。


■憲法改正

『船中(維新)八策』は、参院廃止や首相公選制など憲法改正が必要なものがあり、特に参院廃止は難しい。参議院議員の職がなくなることに3分の2の人が、自ら賛同しなければ憲法改正はできません。諸刃の剣になっても、反対派を炙り出す作戦だろうと思います。

当たり前ですが、日本国憲法第96条の改正からスタートでしょう。それだけでも4年でできるかどうかというところ。自民党があれだけ長く掛かってもできなかったことで、もし、できれば大変な前進だと考えています。

一般市民には「参院廃止」に反対する人は「既得権を守ろうとしている」と映るため、反対すればするほど、支持率は維新の会に遷り、落としどころの「日本国憲法第96条の改正」がやり易くなる。

「参院を現在の形から首長が兼務する代表機関に改めることも盛り込む方針」という報道もありますから、首相公選制と合わせて実現すればアメリカに近い制度になるでしょう。

ただ、首相公選制は、首相・衆院・参院(地方代表)の三重のねじれになり兼ねないので、参院を廃止できればやらない方が良いと思う。

■統治機構の再構築

池田先生が仰るとおり、日本における真の権力者は霞ヶ関です。その権力を大幅に奪うのが地方分権で、

審議官以上の指定職はすべて政治任用にするぐらいのことをやらないと、何も変わらない。

というのはもっともです。同様の内容は橋下市長の発言にもあったし、その方向に進むのではないでしょうか。多数の官僚を辞めた方が橋下市長のブレーンをやっていますが、彼らかその部下が、将来その任につくことになるでしょう。

これはほぼ全面的に賛成です。

■行財政改革・社会保障制度改革

ベーシック・インカムを導入するとの話が出ている。これは私は当初反対していましたが、現在では賛成です。池田先生の解説によると、ベーシック・インカムと「負の所得税」は同じとのことで、私もその通りと思う。ベーシック・インカムに統一するのが良いのでは?

貯蓄課税という話も出ているが、これは前にも書いたとおり、消費税増税で当面は代替が可能です。ベーシック・インカムを導入するには、消費税率は20~25%は必要でしょう。毎年1%ずつであれば15~20年もの期間が必要で、その後、更に貯蓄に課税する必要があるかというのは、その頃考えたらいいのでは?

消費税増税は必要ですが、急激に散発的に上がることになれば、低所得者や中小零細企業は耐えることができません。

■エネルギー問題

橋下市長は、以前から脱原発依存ということを謳っているが『船中(維新)八策』入るのか入らないのかわからない。現在、発表があった中には見当たらないようです。

これについては、どうなるのか本当に心配しています。脱原発依存というのは間違いでしょう。

日本は31年ぶりに貿易赤字になりましたが、原発を止めたために3兆円もの燃料費が必要になったことも大きな原因の一つです。去年はまだ原発がいくつか動いていたが、全部止まれば4兆円ほど必要との試算があり、おそらく正しいでしょう。

毎年4兆円という資金が出ていくというのはどういうことか、新大阪と関空をつなぐリニアが毎年4本、東海道リニア新幹線が2~3年分で作ることができる金額です。不況の中、震災で傷ついた日本にそんな大金を垂れ流す体力は残ってない。

原発を止めるということは、資源国を豊かにし、日本の国力を削ぐだけの効果しかない。命は金では買えないけれど、金で助かる命はたくさんある。仮に10年40兆円あれば、どれだけの命が救えるか考えてみたらどうか。

関電はじめ、電力会社の隠蔽体質に不信感を持っているというのは分かります。しかし、そうしなければ「原発を運営出来なかった」という事情によるものです。総括原価方式ですから、別に原発でなくても良かった電力会社が「私腹を肥やすため」だけにそういう行動をとったのか?

その手法を批判されることの多い橋下市長が、なぜ分からないのかと思うのですが、「日本のためになる」という信念がなければ、厳しい批判をされてできるものではないし、やる必要もない。事実、電力会社が原発を運営してきたお陰で、年間4兆円という資金が海外に出ていくのを防いでいたのです。

「電力会社の体質を改善する」というのと、「原発を止める」というのは、全く違う次元で議論されるべきで、原発を止めるべきではありません。

■教育・公務員制度改革

身分ではなく、職業にするべきということに全面的に賛成です。

IT系ベンチャー企業を営むものとしても、日本の将来の競争力を高めるためにも、是非、教育のIT化について力を入れて欲しいが、現状では、教師がIT化について行けてない。

まずは、教師に向けたIT教育を行うべきで、そのための提案を維新の会の市議会議員に行いました。是非、ご検討いただきたい。

■全体として

現在発表された『船中(維新)八策』は、橋下市長がよく使う手法で、非常に高い要求を出して現実的な落としどころ探るというものではないでしょうか。

所謂インテリ層や既成政党が嫌がることを多く盛り込んでいる。それについて批判的な意見が多いが、これは小泉元首相が使った手法と同じです。嫌がれば嫌がるほど、批判すればするほど、支持率は既存勢力から維新の会に遷ることになり、結果的に妥協点は高いところになる筈です。

認知されやすさを狙ったであろう『船中(維新)八策』という名称や、手法はあくまで囮で、既存勢力が囮に目を取られ妥協点を考えることなく「とにかく反対」を繰り返せば国民市民からそっぽを向かれることになる。エネルギー問題以外はほぼ賛成なので私にとってはそれは良いことなのすが、既存勢力が下手くそな戦術で向かっていくために、エネルギー問題も通ってしまうのではないかと心配しています。

反原発は事故による一時のヒステリーで、それが長期の政策になったら本当に危険だと私は考えています。

■サイトを更新して!

大阪維新の会は公式Webサイトを持っているにもかかわらず、そこでは『船中(維新)八策』は読めない。これでは、報道されているニュアンスが正しいのか、正しくないのか確認のしようがない。

今、報道されているのは正式リリースではないと言いたいのかもしれませんが、公式ページで『船中(維新)八策』がどう変化し発展していったのか確認できるようにしていただきたい。IT系の人材が足りてないなら手伝いますよ。

株式会社ジーワンシステム
代表取締役 生島 勘富
(Twitter @kantomi