今さら「日本は世界の部品供給基地」とは古すぎないかと、日経産業新聞を批判する記事を書いたことがある。最近の報道によると、新iPad向け液晶の供給ができない状況にシャープは陥っているそうだ。LSIメモリ(DRAM)製造のエルピーダメモリは2月27日に会社更生法の適用を申請している。部品供給基地の座は揺らいでいる。
薄型テレビ市場でも日本企業の後退は明らかだ。NPD DisplaySearchが発表した世界市場動向では、2011年に一番手のSamsungが売上高ベースで年率18%成長したのに対して、三番手ソニーはマイナス34%、四番手パナソニックはマイナス19%、五番手シャープはマイナス30%で、特にソニーとシャープは痛めつけられている。DRAMと同様に、液晶ディスプレイでも最大手だけが量産効果を享受する状況になりつつある。コモディティ化した市場では日本企業は生き残れない。
より付加価値が高い、サービス志向の製品を市場に投入しなければならない。Apple TVは将来の方向を示唆しているが、まだまだ完全ではない。その穴を突く戦略を立てるのが経営陣の役割だ。
シャープは電子書籍端末ガラパゴスでも失敗している。その失敗が示唆するのは「デバイスはコンテンツを囲い込めない」ということ。強力なApp Storeに対してAndroid Marketが健闘しているのも同じ理由だ。Apple TVよりもデバイスとコンテンツの関係をオープン化した製品を、世界中の企業と連携して投入すれば、勝機が開けるかもしれない。全く違う路線も考えられる。国境を越えてコンテンツを閲覧できるといっても言語が障壁だから、自動翻訳エンジンを装備したネットTVを売り出せば消費者は喜ぶだろう。
僕はシャープの株を少し持っている。一年間で半値にまで下落したが、その間に売り損ねてしまった(苦笑)。新経営陣が新しい方向を打ち出すことを心から願っている。
山田肇 -東洋大学経済学部-