池田氏が、私の師匠であるAndrei Shleiferの本を解説してくれているので、日本にいる数少ない彼の弟子として(世界にはあふれるほどいるのだが)、少し解説を加えたい。
彼は、コーポレートガバナンスの議論の流れを大きく変え、それを企業にとどまらず、他の組織、社会、国家にも広げた。同時に、行動ファイナンスの第一人者としても有名で、古くはSummersとの共著から、現在の若手(と言ってもAndrei自身、私と6つしか変わらないが)との論文まで、常に最先端を走っている。
1999年にはノーベル賞の前哨戦と言われるJohn Bates Clark Medalを受賞した。これは40歳以下の米国人の経済学者に送られるもので、2年に1人であることから、ノーベル賞よりも難しいと言われ(ノーベル賞は毎年である上に複数人受賞が多い)、過去の受賞者の多くがその後ノーベル賞を取っていることから、ここを取ればほぼ確実という人もいる。
この賞を受賞した記念論文を2001年に、当時MITにいたOlivier Blanchardが書いている。当時、私は、この論文も良いが、肝心なキーワードが抜けていると思った。
それは、人間、である。
Shleiferの最大の貢献は、ガバナンスにせよ、行動ファイナンスにせよ、経済学の中から戦後失われてしまった人間を再度呼び戻したことだ。
彼の議論のポイントはすべて人間に集約されている。
この続きはまた改めて。