北村氏のアゴラ記事、問題多い「報道ステーション」― 古館さんは、そろそろお辞めになる時期では?を拝読。確かに問題の多い番組かも知れないが、果たして古館氏が辞任した位で問題が解決する様な単純な話なのだろうか?
そもそもこの番組を何度か観た経験では、「報道番組」と言うよりはニュースをネタにした「エンタメ番組」と言った印象が強かった。
事実、テレ朝の番組表を確認すると、月曜日から金曜日まで、テレビ局として稼ぎ所の、プライムタイム21:54 ~23:10 をしっかり帯で確保している。
番組開始前の「世界の街道をゆく 」や、番組後の「世界の車窓から」は番組表を見る限り「報道ステーション」に寄生する格好で編成されていると思われる。
冷静に考えれば、ニュース何てある時は一杯あるが、無い時は無い。それがニュースではないだろうか?
「報道」を全面に押し出せば必然的に、「公正」、「中立」、「深い洞察」といった所が肝になる。しかしながら、それではこの番組表では営業的に難しいのではと思うのである。
流石に「やらせ」とまでは言わないが、ニュース枯渇時期等はある程度の「脚色」がマネタイズの為には必要な気がする。
自社のキャスターから言論圧迫と言う報道機関の命を奪う様な批判を受けながら、テレ朝経営陣が沈黙を守る事から判断すると「報道ステーション」その物が「やらせ番組」である事を告白したような物です。
今一つの疑問は報道の質を上げるには手間、暇をかける必要があり、これは必然的に番組制作費の高騰をもたらす。現実問題として、誰がどの様にしてこのコストを負担するのであろうか?
兎に角、日本は芸能人やスポーツ選手のコメントをありがたがる風習を廃し、もっとレベルの高い情報と、例え異なる見解でも、参考になるコメントを聴ける報道番組を増やして欲しいものです。
質の高い報道番組は必要と思う。しかしながら、無料放送、詰まりは番組制作費を広告主に依存する仕組みでは限界があるのではないか?
同じ朝日新聞グループで、朝日新聞本体が永らく「朝日ニュースター」と言う硬派な情報番組を有料放送として継続して来た。しかしながら、この放送は今月末に消滅する。
CS放送の「朝日ニュースター」が2012年3月いっぱいでスタッフが全員退職し、事実上「消滅」する。 「記者クラブ問題」などメディアへの自己批判や、最近では積極的な「反原発」報道を繰り返すなど、「異色」の報道専門チャンネルとして熱心なファンを抱えている。テレビ朝日に事業を譲渡する形になるが、スタッフが全員退職することもあり、特色が薄れるのではないかと残念がる向きも出ている。
「消滅」の理由は極めて単純である。
高いレベルの「報道」を目指したが、低いレベルの「収入」しか得る事が出来ず、本体が不調な朝日新聞が、最早持ちこたえる事が出来なくなったのだと思う。
残念な事実であるが、これが「報道」に係る「放送」の実態だと思う。露骨に言ってしまえば、高いレベルの「報道」を求める人は多いが、その対価を支払う人数は極めて限定的である。
最後に私の結論を下記する。
先ず第一に、「報道ステーション」はニュースをネタにした「エンタメ番組」であり、余り細かな内容に目くじらを立てる必要はない。視聴が不快と言うのであれば見なければ良い。
第二は、そもそも民放は広告収益モデルである事から、必然的に「広告主」への配慮が必要である。具体的には、「視聴率」、「番組内容」への配慮と言う事になる。従って、質の高い「報道」には馴染みにくい。魚屋を訪問して、高品質な林檎を求める様なものである。
最後は、国民の共有財産である「電波帯域」を、ホワイトスペースも含め余り役に立ちそうにないテレビ局に、今の様に大量に割当てて良いのかと言う問題がある。勿論、テレビ局から電波帯域を取り上げ無線通信用の帯域とすべきと考えている。
これに就いては、アゴラでも多くの議論が行われた。しかしながら、総務省が総務省である限り、何も変わらないのであろう。
従って、この部分に就いては「統治機構」の変革が必要と思う。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役