シャープが電子機器の受託製造世界最大手の台湾・鴻海精密工業と資本業務提携する事を発表した。それを受けて、東京株式市場ではシャープの株価はストップ高買い気配を続けている。
シャープ <6753> が買い人気化し、ストップ高買い気配。27日にEMS(電子機器の受託生産サービス)で世界最大手の台湾の鴻海精密工業と資本・業務提携すると発表し、好感された。 5月から2013年3月までに実施する第三者割当増資を鴻海グループが引き受ける。鴻海グループは約10%の株式を取得し、筆頭株主になる。シャープの堺工場にも約46%を出資して、同工場の生産量の約半数を引き受ける。シャープは1300億円を調達して財務基盤を強化する。
少なくとも市場は好感を持って今回の提携を受け止めたと思う。
無理もない、先月アゴラにシャープに観る一本足打法の終焉を投稿したが、2900億円という巨額赤字は経営の屋台骨を揺るがすには充分な数字である。出血多量に依るショック死を危惧し株価が下がり続けたのは当然である。
更には堺の最新工場の減価償却が終わっておらず、稼働率が5割を切っているとの事であるから来期は巨額の減損処理に迫られる事になる所であった。何としても止血をする必要があった訳である。
今回の業務提携により、喫緊課題の「止血」と「輸血」の両方が解決する事となる。
27日発表された合意条件によると、シャープは鴻海精密工業やフォクスコン・テクノロジーなど鴻海グループを割当先にした第三者割当増資を実施する。新株発行額は669億1000万円。また、鴻海グループは、660億円でシャープ堺工場の運営主体シャープディスプレイプロダクトのシャープ持ち分(92.96%)の半分を引き取る。
シャープは確かに急場を凌ぐ事には何とか成功しそうである。しかしながら、これは飽く迄「応急処置」に過ぎない。生き残りの為には根本的な体質改善が必要なのである。
過去20年間同社が求められたものは、高度な技術開発を基盤とする魅力ある商品の市場への投入。価格競争力のある生産体制の構築。世界で勝負出来るブランド力の構築。と言った所であったと推測する。
厳しく言ってしまえば、何れも中途半端な結果になったのではないだろうか?
しかしながら、今回鴻海精密工業が同社の筆頭株主になった事で、従来の様な停滞、足踏みは許されないと思う。「企業ドメイン」の絞り込みを厳しく命じられる筈である。
事実、鴻海精密工業、郭台銘董事長は早くも下記の如きメッセージを寄せている。
「日本は消費者向け電子機器メーカーの役割から脱却し、高度な技術開発と国際的なブランド力構築という新しい役割を引き受ける」。鴻海の郭台銘董事長がこの日の会見に合わせ、こんなビデオレターを寄せたように、日本メーカーにはテレビビジネスの一段の見直しが求められている。
シャープが今回の提携をきっかけに、時代に即した企業に再生出来るか否かが、今後、他の国内家電メーカー将来を占う試金石になる様な気がする。
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役