朝日新聞が伝える所では、日本政策投資銀行と大手商社双日が、中小企業のアジア進出を支援することで提携したとの事である。
日本政策投資銀行(政投銀)と大手商社の双日は、中小企業のアジア進出を支援することで提携した。インドネシアやベトナムなどで工業団地を営む双日の情報を、政投銀が地方銀行を通じて中小企業に提供する。進出企業には手続き面や資金面でも支援する。
私は今回の日本政策投資銀行の決定は、二つの点で大変良い物であると考えている。
先ず第一は、このままでは野垂れ死にが確実な、日本の製造業に生き残りの可能性を提供する可能性が高い事である。
そもそも、現政府は日本の製造業を余りに虐め過ぎている。
「円高」。「高い法人税」。この二つで企業は既に充分大変な訳である。
しかしながら、これに加えて菅前首相に依る恣意的な浜岡原発の停止に端を発した「電力不足」。しかも電力料金の値上げがこれから予定されている。
「高額な人件費」。政府はせめて「解雇規制」を撤廃、緩和するなどして企業を救済すべきなのであるが、全くそういう動きは見えない。現政府は、どうも労働市場の流動化の必要性が皆目理解出来ていない様である。
他にもあるが、これだけでこの記事が終わってしまうのでこの辺にする。
今一つは、三日前のアゴラ記事にも書いたが、日本が今世紀も成長を続ける為には、中国や中国に雁行する新興産業国の成長エネルギーを取り込まねばならない。
具体的には、プラザ合意以降の円高対応で確立した「サプライチェーン」を、この地域に集中的に深化、拡大する事だと思う。
製造業が海外移転を考える時のネックは、移転先の物件情報(工業団地)であったり、工場を操業する上での重要事項、過去の失敗例、労務問題を中核に過去の判例といった、必要情報を如何に確保するかと言う事であったり、移転に必要な資金をどうやって、低利で長期に調達するかと言う事であると理解している。
日本政策投資銀行はどうもこの二つを提供してくれそうではないか?
本当に時宜を得た対応と思う。
私が商社でベトナム市場の開拓を担当していた、今から20年前は、工場建設ともなれば、土地の確保に始まり、電気、ガス、水道の手続きとかが個別に必要で、膨大な許認可手続きが必要であったと記憶している。
個人に置き換えれば、土地を購入し、家を建て、電気、ガス、水道の手続きを自力で行う様な大変な話であった。
その後、「工業団地」が随分と整備され、まるで賃貸マンションに引っ越す様に簡単になったと聞いた記憶がある。
近い将来には、家具、電気製品や調理道具が備え付のウイークリーマンションの如き利便性の高い、「工業団地」も出現するのではないだろうか?
そういう事であれば、正に、「案ずるより産むが安し」で日本政策投資銀行の今回の支援策を活用して、先ずは小規模にでも進出し理解を深める事から始めてはどうだろうか?
最後に、この流れが、国内の雇用問題や若者の就職、転職に大きな影響を与える事は確実である。
ネットに於いては、相も変わらず、「大企業」vs「中小企業」、「組織に所属」vs「ノマド」と言った、謂わば手垢の付いた議論が盛んであるが、ポイントを大きく外している。
今後は、さっさと海外に出て、工場の新設、操業に係る業務管理を、実際に現場で体験するか否かが、「キャリアパス」として重要になって来る。
東京本社で中高年の加齢臭に耐え、顔色を読むスキルを身に付けたとしても何の役にも立たないと言う事である。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役