今年の就職戦線も相変わらず土砂降りの様である。何故そう思うかと言うと、この週末、土曜日と日曜日に就活生の親とランチをご一緒し、苦労話を聞いたからである。
極めて大雑把な印象で恐縮であるが、大手企業は採用に慎重。一方、中小企業は何処も業績が厳しく、結果、「即戦力」を求めるので一般の就活生では無理と言う所ではないか?
当然の事ながら、ランチの終わり頃には「どうやったら採用に漕ぎ着けられる?」と言う具体的な質問を受ける事になる。
先月のアゴラ記事、長男が中々内定を取れず、家の中が随分暗くなったと言う話を参照しながら、あれこれ説明するのだが、相手が求めているのは「就活必勝法」の如き判り易い回答であり、抽象論は余りお呼びで無い様である。雰囲気で判る。
それでは、そもそも求められる人材とは?一体如何なる大学生なのであろうか?
昨日、偶々目にした下記二件のネット記事が判り易く教えてくれているのではないだろうか?
先ず第一は、テント・登山・3時台起床…伊藤忠、新人にタフネス研修である。
5泊6日テントに寝泊まりして、3時台起床1,700メートルの山に登山。冗談ではないと思う方も多いのではないだろうか?
新入社員たちが研修に臨む春。伊藤忠商事は今年度から、「印象に残らない」座学をやめ、登山や野外で共同生活を送る「タフネス研修」に切り替えた。 行程は16日から5泊6日。約110人が福島県でテント生活をし、標高約1700メートルの山を登った。起床は朝3時台。班ごとにルートを決めたり、限られた食材で食事を作ったりするなど、「ゆとり」とも呼ばれた世代には厳しい内容だ。
しかしながら、以前のアゴラ記事、三菱商事とソニーの明暗を別けたもので説明した通り、総合商社の業績が絶好調なのは、業態を大きくへ変貌させる事に成功した結果である。
かつての三菱商事は、資源/非資源にかかわらず、仲介(貿易)事業者として、主として取引仲介と取引先への信用供与(商社金融)を中心とした事業で収益をあげており、投資はあくまで補完的、すなわち取引拡大の助けにするという位置づけでした。いわば、あまりリスクをとらないローリスク・ローリターン型ビジネスを行ってきた訳です。現在の三菱商事は付加価値の連鎖であるバリューチェーンを構築し、収益の最大化を目指しており、ローリスク・ローリターンの「仲介(貿易)事業者」から、リスクを管理しつつ、より高いリターンを目指す、いわば「総合事業会社」への変革を進めてきています。
入社数年後には投資先の事業会社に経営幹部として派遣可能な人材が求められているのである。実務能力は当然として、少々の苦難等物ともしないタフな人材が求めれれるという話には頷ける。
今一方は、東洋経済の躍進著しい新興チェーン「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」、井戸実社長へのインタビュー記事である。そして、特に注目するのは下記ポイントである。
今後、直営はどんどん減らしていく。それは、サラリーマン店長では、電気や空調のスイッチをまめに切って節約しようとはしないが、オーナー店長になって自分の収入に跳ね返ってくるとなると、途端にこまめなコスト削減をし始める。店長はみんな経営者にしたほうがコスト管理の面が徹底する。
もう1つは民主党が社会保険の適用枠を拡げようとしており、そうなれば小売りや外食産業はたまったものではない。その対象にならないように業務委託契約を推進する方針だ。――過去、ファミリーレストランなどでは、アルバイトを休ませて店長が代わりに入ることで、コストを圧縮する動きがあった。すかいらーくでは業務委託契約の店長が過労死した事件もあり、外食業界では労働管理を徹底してきた。そういった流れに逆行しないか。
倒れるのはそいつが悪いだけ。自己管理の問題だ。利益を出すにはそれしかない。僕の立場で言っていいかわからないが、そもそも労働基準法がおかしい。なぜ週40時間以上の労働が残業になるのか。そんな環境にあるのは公務員だけだ。労働関係の法規制は、いろんな働き方や仕事がある現在の状況に合ってない。
この話は実に判り易い。
「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」が社員に求めるのは、最近過労死事件を引き起こした居酒屋チェーンが求めるものが、カリスマ社長への全面的服従とすれば、全くの真逆で、「自立」と「自己責任」である。
その結果が、先ずは店長に昇格する事であり、次いで「経営者」になる事なのである。
今回紹介した二社は少し先を行っているのかも知れない。
しかしながら、日本企業が進むであろう潮流の先行指標と理解して問題はないと思う。
大学生や教育機関もこの潮流に対応すべきは当然であろう。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役