大失業時代の到来を予測する

山口 巌

読売新聞の伝える所では、就活失敗し自殺する若者急増…4年で2・5倍にとの事である。


就職活動の失敗を苦に、自殺する若者が急増していると言うのである。

2007年から自殺原因を分析する警察庁によると、昨年は大学生など150人が就活の悩みで自殺しており、0年の2・5倍に増えた。警察庁は、06年の自殺対策基本法施行を受け、翌07年から自殺者の原因を遺書や生前のメモなどから詳しく分析。10~20歳代の自殺者で就活が原因と見なされたケースは、07年は60人だったが、08年には91人に急増。毎年、男性が8~9割を占め、昨年は、特に学生が52人と07年の3・2倍に増えた。背景には雇用情勢の悪化がある。厚生労働省によると、大学生の就職率は08年4月には96・9%。同9月のリーマンショックを経て、翌09年4月には95・7%へ低下。東日本大震災の影響を受けた昨年4月、過去最低の91・0%へ落ち込んだ。

本来であれば、希望に胸を膨らませ、社会に巣立って行くべき若者が就活の悩みから、自ら命を絶つと言うのは、暗く、痛まし過ぎる。

そして、問題は、実際に自殺に迄至った若者の数字は、悩める若者と言う氷山の一角に過ぎない事実である。

自殺実行の崖っぷちで何とか踏みとどまっている若者。時々ではあるが、死ねば就活の苦しみから救われると考える事のある若者。不採用の通知を受け、気を取り直して新たな採用試験に臨む為、自宅最寄りの私鉄ターミナル駅で電車待ちの際、「近づいてくる電車に飛び込めば楽になれるのにと」こんな考えが頭を過る若者。

アンケートを取ってみたら、野田政権が吹っ飛ぶ様な凄い数字が出る筈である。

若者には気の毒であるが、今の政治を見る限り、事態好転の可能性は皆無である。それどころか、更なる悪化は必至な状況である。

何と言っても電気料金の値上げが大きい。

毎日新聞の伝える所では、<東電>家庭向け10.28%、企業向けが4月に遡り16.39%値上げとの事である。そして、早晩、他電力会社も東電に追随し、値上げに踏み切る事は確実である。

政府は9日、東京電力と原子力損害賠償支援機構が4月に共同申請した東電の「総合特別事業計画」を認定する。東電は計画認定を経て、週内にも家庭向け電気料金の7月値上げを枝野幸男経済産業相に申請するが、焦点の値上げ幅は平均10.28%となった。

参入対象の見直し結果は、企業向け料金にも適用される。現状で平均16.7%の値上げ幅は4月以降にさかのぼって16.39%に圧縮される。既に支払った分との差額は、今後の電気料金から差し引くなどして精算する。

電力料金値上げの直撃を受ける国内製造業は、「廃業」若しくは「海外移転」を加速せざるを得ない状況である。

そもそも、停電や電力料金値上げが無くても、「高過ぎる人件費」、「高過ぎる法人税」、「高過ぎる円=円高」と言った三高に国内製造業は苦しめられて来た。これに加え、意味不明な行政の「規制」にも我慢して来た。過去の慣例から、年収に比べ遥かに働きの少ない中高年を抱え込んでいるのも事実であろう。

今回の電力料金値上げをきっかけに、生き残りの為、日本との決別を決断する企業が怒涛の勢いで増加する事になるであろう。これは、勿論雇用の減少を意味する。

非難されるべきは、民主党政権に於ける雇用対策の不在である。取分け、菅前首相に依る恣意的な浜岡原発停止は真逆の政策であった。

何度も参照して恐縮であるが、中部電力が浜岡原発の停止を決定した翌日、私はアゴラ記事、菅直人はテロリストか?で不都合な未来を予測した。大変残念な話であるが、悪夢が現実のものとなってしまった。

さて、これから生じるであろう現象を予測する。先ず、全国的に電気が足りなくなる。結果、製造業の稼働が縮小し企業業績は悪化する。人員整理が行われ失業問題が深刻化する筈である。政府税収は激減し財政は破綻する。真夏の酷暑の最中の停電でエアコンが使えず熱中症で亡くなる方も多数出るであろう。強調したいのは、今回の菅首相の私的な要請が国民の生活と製造業を破壊し結果、日本経済を死に至らしめ国の財政を破綻させると言う事実である。これは正にテロそのもではないか?

現在苦しんでいるのは、これから世の中に出て行こうと言う就活生等に比較的限定されていて、洪水で例えれば「床下浸水」の段階である。しかしながら、客観的状況から判断して、「床上浸水」は不可避である。

製造業の海外移転が加速すれば、企業が必要とする日本人従業員の数が激減するのは当然である。能力に劣る従業員。企業に左程貢献していない従業員。仕事の中身、量に比べ、年収が高過ぎる中高年。こういった人達が解雇の対象となるであろう事を予測するのに、左程、想像力が必要とは思えない。

仮に、40才前後で職を失えば、既に潰しが効く年齢でもなく、勤め先から役立たずとして解雇された転職活動に至る背景等も考慮され、職を得る事はほぼ不可能なのではないか?

昨年、菅前首相が浜岡原発を停止させた事に、拍手と喝采を送った国民も多かったと想像する。

そして、拍手と喝采を送った国民のみならず、これから全ての日本国民は、「副作用」としての大失業時代の到来を、好む好まざるとに拘わらず、受け入れざるを得なくなってしまったのである。

「失業保険」の原資等あっと言う間に枯渇するのではないか?

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役