ミクシィの身売り? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

日本時間火曜日の朝はミクシィの身売りの噂話で盛り上がるのでしょうか。私も本日日本時間の午前5時33分に日経ビジネス電子版のすっぱ抜きを受信しました。

ご存じない方のために一応、記事をさらっとおさらいすると、ミクシィの笠原健治社長が自身が保有する55%の同社株式の売却を検討し、水面下でその打診を行っているというもの。具体的にグリーやDeNAの名前が挙げられています。ミクシィは以前にもヤフーとの資本提携を画策したほか、金融筋にも売却打診を最近行っていたとしています。


ミクシィの業績不振ははっきりしている上に、日本でも急速に利用者を伸ばしているフェイスブックに太刀打ちできないだろうと言われています。ミクシィとしてはミクシィゲームを導入したりしているもののその減速傾向には歯止めがかけられない状況です。

2012年3月末で登録ユーザーは2711万人ですが、月一度以上ログインするユーザーとなると1512万人まで減少します。ユーザーだけみれば2009年9月末が1792万人でしたから2年半で約1000万人増やしたことになりますが、この間にいわゆるSNSブームが押し寄せていますのでむしろ、そのブームにうまく乗り切れず、収益に還元できなかった上に他のSNSサービスに顧客が流れたことが業績上の大きな敗因と考えられます。

また、これはフェイスブックもそうなのですが、収益がスマホで上がりにくくなっているにも関わらず、スマホによる利用者が急増していることで収益構造が利用者行動と一致していないことにも問題があるようです。ちなみに3月のスマホからのアクセスは27億ビューで全体の13%ですが今後、急増するものと思われます。

ミクシィがサービスを開始したのが2004年と古く、当初はフェイスブックなど日本ではほとんど知られてませんでした。SNSといえばミクシィでしたからミクシィでSNSの関係を構築している人は多いのだろうと思います。よって、登録ユーザーは多いものの時間の経過と共にフェイスブックなどに二つ目以降のアカウントを設定したり、SNSブームからの落ちこぼれが出て、結果としてビジネスに繋がらない非アクティブな登録者が全体の45%近く存在するということなのでしょうか。

最近ではフェイスブックの急速な日本での普及によりミクシィとフェイスブックの二つのアカウントを所有する人も増え、そうなれば力のあるほうにアクセスするようになるのは当然であり、対策を講じない限りミクシィがより厳しい状況になるのは目に見えています。フェイスブックの日本での登録者は1500万人以上、アクティブ層が3月中旬で1000万人以上とされているので今日では既にフェイスブックはミクシィに肉薄している可能性があります。

笠原社長がもしも報道どおり身売りを考えているとしたら一つにはミクシィだけではこの状況を打破できないと諦めたこと、もう一つは笠原社長の持つ株式の価値がまだそれなりの評価があるうちに手を売っておくという打算的な発想は大いにあると思います。

現状、日経ビジネスのすっぱ抜きに対して会社側は否定をしておりますが、火のないところに煙はたちませんから私はこの記事にはそれなりの信憑性はあったかと思います。但しすっぱ抜かれたことでやりにくくなったことは事実であり、プランが立ち消えにならないとも限りませんが。

また、フェイスブックのIPOが今週金曜日に見込まれており、今後、SNSのデータをベースにしたビジネスが更に水平展開されるのではないでしょうか? とすれば、今だ2700万人の登録ユーザーを持つミクシィならではのビジネス再構築に魅力を感じる企業もあると思います。

身売りの噂がウソか本当かはまだ闇の中ですが、SNSのような新しいビジネスもいよいよ戦国時代を迎えたのかと思うとビジネスのターンアラウンドの早さに何事も日々、気を抜かず最善の努力を尽くすものだけが勝ち残れる時代だというのをつくづく感じます。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。