ギリシャと日本に残された4つの選択

山口 巌

毎日新聞が伝える所では、<ギリシャ>再選挙が確定…連立協議、決裂との事である。ギリシャに取って、この肝心な時に統治の不在、政治の液状化を実感させる記事である。

ギリシャの連立政権協議は15日、パプリアス大統領が、官僚や有識者ら政治家以外の実務者による内閣樹立の提案について、5政党の党首を集めて協力を要請したが、話し合いは決裂し、6月10日か17日に再選挙を行うことが確定した。世論調査では、再選挙でも財政緊縮策の反対勢力が優勢とみられている。再選挙後の組閣も難航する可能性があるほか、緊縮策反対の政権ができれば、欧州連合(EU)との再交渉などを巡ってさらに混乱は続く見通しだ。

問題はギリシャ状況が重篤化すると、同様の問題を抱えるポルトガル、アイルランドに飛び火し、火が大きく成れば更に、スペイン、イタリアに火が燃え広がり、やがて欧州が「焼野原」になってしまう事である。

昨日のアゴラ記事、我々は世界同時不況の入り口に立っているのか?はその辺りを説明した積りである。

フィナンシャル・タイムズの今デフォルトするか後でするか、それが問題だ、ギリシャに残された4つの選択肢に依ると文字通り、ギリシャには4つの選択肢が残されているとのご高説である。

先ず第一は、ドイツが求める「緊縮財政」を継続するやり方。

私は、4月のアゴラ記事、日本の債務問題は個人の「肥満問題」にそっくり!で、国家の債務問題を個人の肥満問題に例えた経緯があるが、差し詰めギリシャの場合は体重200KGの肥満者が60KG迄減量する様な過酷なものと推測する。

これは、フィナンシャル・タイムズも指摘しているが決して上手く行かないであろう。理屈で言えば、先ず疲弊し、衰弱死に至る訳だが、ギリシャ国民がそこまで我慢するとは考え難く、暴動とか、過激政党が政権を握るとか、何れにしても好ましい結果からは程遠い推測となる。

二番目は、先ずプライマリーバランスを達成し、「緊縮財政」を破棄するやり方。100KG迄は頑張って減量するけれど、そこまで行けば量は減らすものの3食きちんと食べ、毎日5時間のウオーキングを1時間に減らすと言うもの。

三番目は、下記の通り。

第3の選択肢は、SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首が示した道筋だ。同氏は、ギリシャが即刻、今のプログラムを撤回し、一部の改革を覆し、残っている対外債務についてデフォルトの可能性を検討することを望んでいる。そうしてもユーロ圏からの離脱にはつながらないとツィプラス氏は主張する。EUは、はったりをかけているだけだと同氏は言う。

食事制限もウオーキングも、こりごりで、もうやらない。しかしながら、医者は決して見捨てないだろうという甘い考え。

最後は、お決まりの「卓袱台返し」。要は、ユーロに三行半を突き付け離脱すると言うもの。

フィナンシャル・タイムズは二番目の選択肢を推奨している。確かに、先ず100KG迄減量して生命の危険を軽減し、その上で、今後どうするのが良いか、落ち着いて考えるのは現実的な対応かも知れない。

さて、日本である。

みんなの党代表、渡辺喜美氏のブロゴス記事、もう、ウンザリだ!が、同様4つの可能性を指摘していて笑える。

第一に、増税あり・解散なし、のケース。野田総理は喜び、谷垣総裁は終了!自民党の派閥領袖クラスや谷垣総裁を取り替えたい人達も、喜ぶ。第二のケース。増税あり・解散あり。谷垣総裁が喜び、野田総理は終了!民主党は激減するだろう。この場合、話し合い談合解散になるので、総選挙後の大連立もあり得る。増税翼賛体制が確立すると言ってよい。第三に、増税なし・解散なしのケース。一番喜ぶのは、小沢一郎氏。野田・谷垣両氏とも終了!9月の代表選・総裁選でそれぞれクビがすげ替えられるだろう。一方、小沢氏は復活、代表選ではダミーを立てて、傀儡政権作りに入る。第四に、増税なし・解散あり、のケース。一番喜ぶのは、国民!総選挙では、増税勢力に鉄槌が下されるだろう。野田・谷垣両氏とも終了。総選挙の結果次第で、政界ビッグバンが起こる可能性が高まる。

実際問題として、消費税増税は待ったなしで選択肢としては1か2以外有り得ない。尤も、野田総理も谷垣総裁も嫌だと言うのが、国民の圧倒的多数である気がするが。

仮に、余り考えたくない話であるが、3とか4が選択される様であると、今後、「日本のギリシャ化」と言う言葉が極めて重い意味を持つ事になる。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役