朝日新聞が学割キャンペーンを行っていると聞いて驚いた。ひとり住まいの学生は月2500円で朝日新聞を購読できるという。新聞は再販制度の対象で、その上「特定の不公正な取引方法」(特殊指定)があるので、値引き販売はできないと思っていたからだ。
特殊指定は差別定価や定価割引などを禁止する。日本新聞協会によれば「流通システムを守り、維持するために定められたもの」であり、その廃止には「経営体力の劣る新聞販売店は撤退を強いられ、全国に張り巡らされた戸別配達網は崩壊へ向かう」懸念があるという。
記事をいろいろ探したところ、2010年9月1日の『文化通信』に「(学割は)公正取引委員会からは、新聞業の特殊指定告示にある「正当かつ合理的な理由」が認められるとの見解を得た(ので実施する)」と書かれていた。朝日新聞がなぜ見解を求めたのか、僕には理解できない。公取委は再販制度を廃止したいと望んでいるから、問い合わせれば、肯定する見解が出るに決まっている。定価割引の実績は再販制度を見直す機会に証拠として利用できるからだ。
会長が渡邉恒雄氏だったころ、日本新聞協会は「公取委がいわゆる規制緩和策の対象にしたこと自体が間違っていた」「新聞のもつ文化的、公共的使命を一層追求するとともに、再販制度と読者の利益を結びつけながら、高度な戸別配達の実現と流通の正常化に努めていきたい」という談話を発表した。これに対して朝日新聞は、現在の会長会社であるにもかかわらず、定価割引に乗り出したわけだ。
朝日新聞の経営は苦しく、新聞離れに少しでも歯止めをかけるために学割を打ち出したと解釈できる。いっそのこと、新聞市場にも自由競争を導入しようとキャンペーンを始め、読売と真っ向対立したらよいだろう。僕も集金員に「学生だけ割引するとは不平等」と言って、及ばずながらお手伝いします。皆さんも協力してください。
これがきっかけで、世界にもまれな再販制度が廃止されるように期待したい。
山田肇 -東洋大学経済学部-