ルネサスエレクトロニクスが危機にあるようだ。5月22日には数百億円の増資と6千人規模の人員削減が各紙に報道された。続いて、台湾大手とマイコン事業で業務提携するとの報道が出た。
日立製作所と三菱電機の事業を統合して2003年に誕生し、2010年にはNECエレクトロニクスが合流した。半導体産業を復活させるための企業だから、発足当時から、重複する生産ラインの削減やそれに伴う人員整理といったリストラが最大の経営課題だった。
しかしリストラは一向に進まなかった。有価証券報告書を遡って調べたが、連結ベースで、2007年3月期の従業員数は23982名で、2010年には22071名。NECエレクトロニクス合流後の2011年には46630名に増加し、2012年度第3四半期末は44014名。2011年5月19日付の日本経済新聞電子版によれば、従業員一人あたり売上高は2441万円とインテル(4280万円)の6割程度。2012年3月期の売上高は8831億円だから、数値は2006万円とさらに悪化した。
ルネサスは前身各社の生産体制への大胆な切り込みを控えてきた。労使協調も維持し、2011年6月29日付日刊工業新聞によると、青梅市の組立工場を閉鎖した際にも「従業員約300人は原則雇用」された。
「日の丸半導体」のエルピーダメモリとルネサスは共に失敗した。錯綜する各社の合意を取り付け、会社を設立した時点で、経営陣が立ち止まってしまうのは「日の丸」の魔力だ。「やっと団結できた」イコール「これで勝てる」と勘違いしてしまうのだ。「日本」を強調する誤りにまた実例ができた。
山田肇 -東洋大学経済学部-