円高が再びジワリと進む中、大統領選挙を秋に控えるアメリカはドルを政策的にどうしたいのか、もう一度考えてみましょう。
共和党時代のアメリカは強いアメリカ、強いドルを打ち出していました。当時、強いドルで海外企業を買収する戦略に出て経済的にもアメリカ主導であることを印象付けました。専門家は当時、強い通貨が何故悪い、と主張しました。更に輸入物価を下げるという意味でもドル安は当時のアメリカにとって極めてパワフルであったと思います。
その輸入物価の中で最も比重が大きいのがエネルギー関連の輸入。石油はその際たるものであります。
しかしながら、2006年にピークを売った住宅市場、そして2008年の金融危機でそのシナリオは崩れ、オバマ大統領が就任した際にドル安政策を打ち出しました。それに呼応するようにFRBは金融緩和を推し進め、ドルのジャブジャブ状態を作り出しました。当然ながらドルの価値は希薄化するため、バイアスとしてはドル安に向かわざるを得ません。
一方、その頃話題になったのがドル基軸通貨の危機でありました。ユーロとのシーソーゲームをしている間に中国がロシアやブラジルなどと非ドル通貨圏構想、中東での非ドル決済構想などが浮かび、世銀総裁の通貨バスケットに金も、という意見に金が暴騰することもありました。
このような流れを踏まえたうえでアメリカはドルをどうしたいのだろうかと考えるといくつかのポイントが思いつきます。
ドル基軸は絶対的なもの
シェールガス革命による資源価格の下落と自給率の向上
アメリカ製造業の復活への挑戦
まず、世界的な対立構造からすれば中国とプーチンロシアとの距離感が出てくると思います。中国についてはできるなら一定のコントロール下に置きたいと考えています。ロシアは資源安で今、厳しい状態。また、中国も一時の勢いがありません。そのような状況においてドルはユーロとの基軸通貨戦争で今回相手を打ち負かせましたのでドル基軸の地位は再び高まったと思います。確かに対円では弱くなりましたが、円だけが他通貨に対して独歩高であり、日本はアメリカからすれば「支配下」と見られていますから気にならないのでしょう。
自国経済についてはM&Aなどを通じて地球儀ベースで支配権を広げた共和党時代の政策から国内経済建て直しという第二フェーズに入っており、先日のこのブログで書いたようにドル安で製造業がジワリと復活してきているのです。
更にシェールガス革命は天然ガスのみならず原油の自給可能性も高めるわけで今までのように輸入物価コントロールが第一義的ではならなくなります。つまり、ここでもドル安はサポートされるのです。
大統領選挙の結果次第ですが、仮にオバマ大統領が再選されることになれば個人的には弱いドル政策が継続される公算は大いにあると思います。よって、そのミラーの関係にある円はどうしても強くならざるを得ない可能性は否定できないかもしれません。
円が米ドルと力ずくで戦うのはその規模からしてほとんど不可能でありますから、ドルを介在させないなどの対策が重要になってくるのではないでしょうか?あるいは、円が何らかの形でジャブジャブ状態になれば別なのでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。