破綻したエルピーダメモリは、米大手のマイクロン・テクノロジーに買収される。ルネサスエレクトロニクスも国内生産拠点の再編と早期退職優遇制度の実施を発表した。日の丸半導体メーカ2社に終わりが来た。記事『ルネサスも「日の丸」の失敗』で、失敗の責任は経営陣にあることをすでに指摘した。
忘れてはならないのは、日の丸半導体の再興を期待して、2000年代に、政府研究費が投入され続けたことだ。「MIRAI」という国策プロジェクトには465億円が投入された。そのほかにも数多くのプロジェクトがあった。武田計測先端知財団の調査報告によると、半導体関係に投じられた国費は、「ASET」に863億円、「ASPLA」に315億円、「EUVA」に125億円、「つくば半導体コンソーシアム」に40億円、「DIIN」に37億円、「HALCA」に17億円で、MIRAIと合計すると1862億円に達する。国策研究費は無駄になった。
MIRAIについて、資金元であるNEDOで2011年に事後評価分科会が開催された。費用対効果の議論も行われたが、NEDOは「どう投資を回収するか……実際に動くのは、やはり企業でございまして、企業がどういう判断で、その成果をどのように使っていくか、あるいは捨てていくのか、そのあたりが企業自身の判断であるので……我々が言うことで企業がよくなるかどうかというのは、それは分かりません」としか答えていない。一方、委託先の社長は「利益としていくら回収できたかを計算すると、投資した450億円なんてものではなく、利益のほうがはるかに大きい」と発言した。分科会は、日本の半導体産業における技術のプレゼンスを上げる制度設計とリーダーの実行力が今日の成果をもたらしたとの総括で終了している。
事後評価は甘すぎだ。研究開発はすべてが成功するわけではなく、失敗もあって当然である。しかし、失敗した場合にはその原因を教訓として残しておかないと、同じ失敗を繰り返す。
雑誌『日経ものづくり』の2012年5月号に、読者対象のアンケートの結果が掲載されている。「製造業は国にもっと関与してもらった方がよい」と59%が回答し、この回答者のうち58%が「大規模国家プロジェクトの推進」を期待しているそうだ。このような声は危険だ。半導体国策プロジェクトをもう一度総括しない限り、失敗は目に見えている。
山田肇 -東洋大学経済学部-