変わる兆しに期待したい日本の労働意識 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

日経新聞のトップに「就活に薄日、内定率上昇、中小志望増える」とあります。大学4年生の6月末時点での来年春の就職内定が専門業者の発表によると50~60%の水準となり、学生の就職にはやや嬉しい状況になっているようです。その理由の一つがミスマッチからの改善ということのようです。

新聞の解説には学生の現実主義ということが書かれていますが、私は根底に大企業至上主義が変わってきているのではないかという気がします。


いわゆるゆとり教育世代の結果として自分の生き方をきちんと見出すチャンスが昔の偏差値時代よりも多くなり、自分の将来像をよりはっきりした形で実現させるには中小企業のほうがその専門性からしても自分の姿を想像しやすいのではないかと思います。

私もカナダで日本からの留学生や若い社会人の方たちと接することがありますが、自分の専門性を磨き、その道で生きていくというコースを考えている方が多いのに時としてびっくりすることがあります。我々偏差値世代の場合、大手企業に入り、30歳ぐらいまでさまざまな部署を歩き、そのあと人事部が後押しする専門的分野を中心に進むという「歯車の中の出世」が主流だったと思います。

しかしながら、最近の若い方は自分のピクチャーをしっかり持っている人も増えてきたような気がします。「私は○○をしたい」という明白な目標を持った人に出会うことも増えてきました。

これは日本の社会の変革の兆しであると見てもよいと思います。

名刺という企業の看板を常に背負う人生から自分のスキルをベースに社会に溶け込む流れは欧米のそれにより近いものになるということです。それはとりもなおさず、転職率の増加にも繋がるはずであと10年もすれば「転職を一度もしていない人」が珍しがられることになってもおかしくありません。

私はそれはむしろ良いことだと思っています。いわゆる「会社人間」は日本の高度成長を支えてきたと思いますが、それに伴うさまざまな犠牲、例えば家族や自分の趣味、人生観、時間など失ったものも多かったはずです。スキルベースの社会になれば仕事とプライベートのバランス感覚が進み、社会がもっと丸くなると思います。

学生さんの就職先が中小企業まで広がりを見せ、ミスマッチの解消が進むということは世の中に広がりが出来ることであり、日本全体のクオリティ上昇に繋がります。

今回のデータはまだ、6月時点でのプリマチュアな数字ですが、今後を期待してみたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。