政府は、6973の電子行政手続きのうち、実績が少ない約半数を廃止するそうだ。数週間前には『「7月を目途に政府CIOを設置」、古川大臣が明言』との記事があった。
政府CIOの設置と役に立たない電子手続きの廃止は、共に正しいアクションであり歓迎だ。僕は2010年に雑誌「科学技術動向」で電子政府の在り方について提言したことがあるが、その方向にやっと動き出した。
廃止する電子手続きは利用率の低さで選ばれたようだが、この際、なぜ低かったのか検証して欲しい。利用率の低さにはいろいろな可能性がある。セキュリティ手順が複雑・面倒で使えなかったのかもしれない。リスクとのバランスでセキュリティの保証レベルを決めるべき、とのガイドラインが2010年に発行されているが、守られていたのか。それともリスクに比較して過剰なセキュリティ対策が取られていたのだろうか。
手続きの順序などが利用者の常識に反して使えなかったのかもしれないが、ユーザビリティガイドラインに沿って企画・開発・運用されていただろうか。紙を使っての業務を単に電子化しただけだったのか、業務改革が伴っていたかも検証すべきだ。業務の内容と流れや組織構造などを分析し、最適化するBPR(Business Process Re-engineering)が伴わなければ、電子化は成功しないからだ。
せっかく約半数を廃止するという大胆な決定を下すのであれば、過去の失敗から教訓を得る努力が求められる。それこそが、「世界から二周遅れ」とも揶揄されるわが国の電子行政を前に進める道である。
山田肇 -東洋大学経済学部-